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 帝国歴二六〇年 紅水晶月(一〇月)。


 刈り入れを終えた各村の小麦や食料が、租税としてアシュレイ城の倉庫に収められていく。


 すでにミレビスが租税基礎台帳に基づいた収入予測を立てていたため、余剰となる食糧は事前にイレーナが酒保商人たちに放出品として高い時期に売り飛ばせていた。


 そんなことよりも、もっと重大事が発生していたのだ。


 重大事って何かって? うちの当主が『女男爵』から『女子爵』に陞爵(しょうしゃく)したんですよ。陞爵(しょうしゃく)


 え? 陞爵(しょうしゃく)って何って?


 陞爵(しょうしゃく)は功績によって爵位が上がることですよ。


 中世ファンタジー世界の出世ロードのアレです。アレ。出世の必須アイテムである爵位。


 エランシア帝国も爵位制を持つ封建国家なんで、爵位はあるんですよ。


 皇家、大公、公爵、皇爵、侯爵、辺境伯、伯爵、宮中伯、子爵、男爵、騎士爵の十一種類が制定されている。


 それぞれの爵位と領地は、皇帝が認める認可状を受けて認められるのだ。


 なお皇帝が代替わりしたりすると、忠誠を誓い直して領地と爵位を認めてもらうため、認可状を受けねばならない。


 うちの当主みたいに不行跡で、当主の座を追われた者は普通に返り咲くことは、ほぼ不可能だが、魔王陛下との個人的繋がりで首の皮一枚繋がった。


 ちなみに封建国家は、皇帝が『この俺様が貴様ら貴族の領土を悪いやつから守ってやっから、軍事費の負担か軍事力提供してくれや。そして、俺を親分って呼べ』って感じな要求してて、貴族は『うちの領地認めて、悪い奴らから保護してくれるなら上納金とか軍役をしたる。それに親分って呼んでもいい。けど、あんまり無茶いったら許さへんで』って感じにお仕えしてる人が多数なわけ。


 そのため魔王陛下も直轄領を持つ大領主の一人であり、貴族たちの忠誠を受けて、魔王陛下の地位に就任している。


 なので、あまり無茶が過ぎると、貴族たちが反発して、首を他の血縁者にすげ替えられる危険性もあるのだ。


 皇帝になのに力弱すぎだろって? まぁ、そんな弱いわけじゃないけど、封建国家の辛いところかな。


 簡単にお役目説明していくと、魔王陛下の苦境を理解してもらえる。



 ・皇帝:帝国で一番トップ。多民族を軍事力で支配した君主。皇帝に求められるのは強大な軍事力である。


  エランシア帝国は多民族・多宗教を抱え込みながら広大な領土を持つ国で、多くの人種や文化をキッチリとまとめ上げるには軍事力が必要なのだ。


  なので、皇帝に求められるのは圧倒的な力である。


  皇帝になれるのは、初代皇帝が大領主として四人の息子を任じた、皇家の当主しか就任できないと決められている。


  現皇帝クライスト・フォン・シュゲモリーは、初代皇帝の血筋ではあるが、クライスト自身はシュゲモリー家の傍系であり、血統的にはもっと近い者もいた。

  ちなみにシュゲモリー家は、皇家として帝国南部に広大な領地と軍事力を持った家であった。その軍事力を背景に、今までに何人もエランシア帝国皇帝を出している名家である。



 ・皇家:初代皇帝の息子四人のみが任じられた爵位。


  広大な領地を与えられ、血縁者によって襲爵(しゅうしゃく)されている。皇帝を出せるのは、シュゲモリー家、ヒックス家、ワレスバーン家、ノット家の『四皇家』のみである。


  大きな領地を背景にした軍事力で影響力も高く、また多くの陪臣領主を従えている。独立した統治権を皇帝より認められており、半独立国であるため自由に叙任もできる。



 ・大公:通常の公爵より上の爵位。建国の際に大きな領地を領有することを許された異種族の四家を指し示す爵位。


  リアット家、ファルブラヴ家、ルーセット家、アマラ家の四家は『四大公』と呼ばれている。


  皇帝になるためには、『四大公』家の承認が必要であり、エランシア帝国内での影響力はかなりのものを持っている。


  『四皇四大公』制による皇位継承選挙がエランシア帝国の皇位継承の仕方であり、クライストの皇位継承選挙もひと悶着あって、あんまり無茶が出来ないのである。



 ・公爵:爵位の一番上の人、皇帝が軍の最高司令官だとすれば、軍団長といったくらいの役職。


  エランシア帝国では皇家に匹敵する貴族の最高位。併合した他国の王を封じるための爵位。


  皇帝としても皇家に準ずる領地と兵力を持つため、蔑ろにできないし油断もできない大貴族。


  現在、エランシア帝国には建国の際に併合され、任ぜられた一〇の公爵家があり、それぞれの公爵家が四皇家のどれかを推戴しているのだ。


  当主は皇位継承選挙にて次代皇帝を選ぶ選挙権を持っている。



 ・皇爵:爵位の二番目の人、血統的に現皇帝の直系子孫に与えられる爵位である。皇位継承はなく、成人後は皇家を継ぐか、臣籍降下して新たに爵位を得ることになるまでの仮の爵位。


  領地等はなく、未成人の皇帝一族への名誉称号的な爵位と位置付けられている。



 ・侯爵:他国からの侵略に備えるため、軍事指揮官の権限を有しており、軍司令官くらいの権限を持った役職。当然、大きな領地と軍事力を有した大貴族。


  国境などの重要な地域を任せられた軍事力を持つ爵位と言える。


  エランシア帝国は四方を他国と境を接しており、各方面に数名の侯爵が任命されている。


  敵国侵攻時には、周辺の貴族達に対する軍事的指揮権を有している。


  エランシア帝国では、軍事的意味合いから、寄親・寄子制が取られおり、各侯爵の下に寄子となる伯爵や子爵などが配され、軍事的指揮権を確立している。



 ・辺境伯:侯爵と同じように軍事的指揮権を持った軍司令官の役職。新たに得た領土などの政情不安定な地に配された者に与えられる爵位。


  侯爵同様に周辺貴族に軍事指揮権の優位性を与えらえており、寄子・寄親制で軍事的指揮権を確立している。



 ・伯爵:寄り親である侯爵の指揮の下、部隊を率いる部将として自分の兵を率い戦闘に参加する。


  自身も子爵や男爵といった貴族を寄子として抱え、軍事的集団を形成している。



 ・宮中伯:領地を持つ伯爵と違い、領地を持たず、エランシア帝国によって行政官として採用された者が叙任される爵位。


  封地はなく、俸給でのみで雇われる、サラリーマン貴族である。


  領地を持てなかった貴族子弟が採用されることも多く、有能さを示せば、領地付きの伯爵に格上げされることもある。



 ・子爵:伯爵の補佐役である。仕事としては、小都市や城の管理を任される。城主というべき役職。


  伯爵や侯爵が多くの領地を持つ大貴族なら、子爵は中小貴族といったところ。

 

  大貴族の子弟が爵位を継ぐまで名乗る爵位でもある。



 ・男爵:領地を持つが伯爵に列せられない小貴族達の爵位。村や町を治めるその他大勢の貴族だ。


  個人的主従関係を結んだ寄親である伯爵や侯爵に従い軍を率いる。小隊長みたいな役目。


  エランシア帝国で一番多く任じられている爵位。


  ちなみに叙任者が誰かで、宮中における席次が変わる。


  うちの鮮血鬼は魔王陛下直々の叙任なんで、直臣扱い。なので、同じ爵位なら最上席貴族として扱われる。



 ・騎士爵:給料を貰う、職業軍人に与える爵位。雇い主は、皇帝から男爵まで様々。皇帝から叙勲されれば直臣扱いで、上手くすれば、男爵など襲爵できる爵位を得られる可能性もある。


  戦闘技能に優れ、自らの軍馬や装備を整えられるサラリー戦士である。



 ってな感じの爵位があって、うちの当主が乳兄妹の魔王陛下気に入られてて、香油を献呈したら、爵位が上がったわけさ。


 新しい爵位は『エルウィン子爵』だ。


 んでもって、陞爵(しょうしゃく)のついでに新たに領地が与えられた。


 『アルカナ領』だ。この報告を受けて俺も『ヒャッハー、領地が増えて収入も人も増えるぜ!』って、めっちゃ喜んだ。ああ、とても喜んださ。


 だって、領地が増えればエルウィン家が繁栄して、うちの嫁や愛人たちにもいい服とか宝石とか買ってあげれるし、子供もいっぱい作れるじゃん。


 新しい領地が貰えるってマリーダから聞いた夜は、それこそ、マリーダたちと頑張っちゃったわけよ。


 そりゃあもう、くんずほぐれず、せっせと励んださ。


 でもさ、翌日新たな領地が気になって、ゴシュート族の作ってくれた周辺地図で領地の場所を調べた。


 やられた。やられましたよ。あのシスコン激甘なはずの魔王陛下に見事に一杯喰わされて、うちの鮮血鬼は帰ってきましたよ。


 魔王陛下が下賜してくれた『アルカナ領』はエランシア帝国の領地……じゃなかった。


 シット!! くそう! あのシスコン激甘皇帝、領地の空証文を渡しやがった!


 魔王陛下から下賜された領地は『アレクサ王国』所属の領主が治める地だ。


 東隣りのステファン領と、うちとの間に楔のように打ち込まれた領地。


 よくよく調べると『元エランシア帝国領、現アレクサ王国領』の領地である。つまり、『エランシア帝国から裏切った貴族が治める地を分捕ってこれば、お前にやる』って証文を貰ったのを、うちの脳筋当主が『領地貰った』と要約し、俺がぬか喜びしちゃったわけ。


 いや、普通さ。『領地貰った』って聞いたら、皇帝直轄領からかと思うじゃん。直臣だし。乳兄妹でマリーダに甘々だし。それが敵の領地って酷くない?


 もらった領地が敵方だと知り、そっと枕を濡らしつつも、俺は貰ったからには絶対に奪取するため策を練ることにした。


 あと、きっちりとマリーダには、『報・連・相』をキッチリするように、一日かけてしっかりと講義しておいた。

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