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 ワリハラの族長に出した説得期限が来る前に、再度集落訪れていた。


 予定より早い段階で説得工作が終わったらしい。


 まぁ、俺も加わっていたから、かなり順調に推移していたのは知っている。


 内部抗争を見せられた穏健派が雪崩を打って、離脱派に鞍替えしたことも影響していた。


「これは、アルベルト様。ようこそ、お越しくださいました」


 すでにワリドとともに、俺に対し個人的臣従を申し出ているワリハラ族長は、以前会った時と違い、礼儀を正して挨拶をしていた。


「うむ。吉報と聞いて飛んできたぞ」


 『勇者の剣』で見せた謀略の件で山の民の間には、アルベルト・フォン・エルウィンには逆らうなと知れ渡ったらしい。


 主にワリドとワリハラ族長が俺のことを吹聴して回った結果だが、おかげで本日の吉報を得た気もする。


 吉報が何かって? 山の民の新体制が各族長から支持されたことだよ。

 

 新体制とはワリドとワリハラ族長の二人を筆頭族長として、新たに集団合議制の族長会議を制定し、山の民の運営を担っていくことになったのだ。


 それも今までの緩い結束の族長会議ではなく、二人の筆頭族長にかなりの部分の権限が与えられた体制への移行であった。


 この二人が筆頭族長になることを承認されたってことは、今後、山の民はある程度自由に俺が使えるということだ。


 と言っても家臣ではないので、無茶なことを頼みまくれば、離反を招くかもしれん。


 ゆくゆくは俺とリュミナスの子に筆頭族長として就任してもらい、エルウィン家の力となってもらうつもりではいる。


「私とワリドが筆頭族長となるのを皆が承認しました。ですので、『勇者の剣』の件は我らの知らぬところで起きたことにして頂きたい」


「オッケー、オッケー。魔王陛下には、まだ報告上げる前だったからよかったね。とりあえず、アレクサ王国での居場所を無くして、山中に本拠を移した『勇者の剣』討伐に兵を都合してくれれば、陛下の覚えもめでたいと思うよ。ああ、そんな大軍はいらないからね。君らも他国への面子ってのがあるだろうし、先導役数名でいいよ」


「心得ました。数名ならば我が部族からも出します」


「助かるよ。うちも血の気が余ってるやつが多くてね。ひと暴れさせないと城内が血まみれになるんだわ」


 俺の冗談にワリハラの族長が苦笑する。


 いや、冗談でもないんだがな。


 うちの脳筋一族が暇を持て余して暴れ回ると城内が血で染まる。


 主に喧嘩だが。


 なんで、もはや敗勢必至の『勇者の剣』討伐に戦闘職人たちを動員することに決めた。


「敵は『勇者の剣』の武装兵一〇〇名。集落を追われた強硬派の部族二〇〇名の総数三〇〇名程度と目算されております。敵は山中の砦を占拠してそこを拠点に起死回生をはかっておるようですな」


 隣に一緒にいたワリドが、『勇者の剣』の根城の様子を伝えてくれた。


 すでに逃げ場のない死を決した兵たちであると思われ、悪戯に攻めれば大きな損害を受ける可能性もあり、満を持して狂犬戦闘職人である脳筋一族を投入することで損害を少なくトドメを刺すことにしていた。


 これで勝てば、しばらくはアレクサ王国も大人しくなるだろうし、周辺領主も変な奴の扇動でカチコミをかけてくることもなくなるだろう。


「後はエルウィン家の強さを見せる興行みたいなもんだ。立て籠もっている奴らには悪いが、うちの狂犬どもは戦闘になると俺でも止めれないからな。事前に降伏したい者は砦から逃げよと書いた矢文をドンドン打ち込んでやれ」


「承知」


 ワリドに最後まで抵抗に意志を示している者たちへの最終通告を任せる。


 本当にあの脳筋どもを解き放ったら、相手の喉首を食い破るまで指示を聞かない恐れもある。


 それくらい凶悪な一族なのだ。


 逃げる時間は与えてやっている。それが、俺から贈れる最後の恩情であった。


 

 その足でアシュレイ城に戻ると、戦への欲求をケモ耳フレンズで発散していた脳筋女将軍と、戦馬鹿の戦闘狂と、その息子が出陣の準備を終えた一族の戦士たちを引き連れ、中庭で整列して待ち受けていた。


「やっと戻ったか? 戦だろ? 戦? リュミナスとマリーダから聞いた。ちゃんと、リゼにもアシュレイ城の留守居役を頼んである。『勇者の剣』って武装組織をぶっ潰していいんだよな? なぁ、なぁ、いいんだよな?」


「わしはラトールには残れとちゃんと申し付けてからな。こやつが勝手に兵を集めたのだ。まぁ、リゼに留守居役を頼んだのはわしじゃがな。それよりも、いくさだろ、いくさ。最近、開墾と堤防工事ばかりで飽きてきておったところだ。暴れさせてくれるよな?」


 この鬼人族の戦馬鹿親子は戦の時だけ準備は迅速に済ませやがる。内政に関しては指一本動かそうともしない癖に……。


 もう、この戦馬鹿の脳筋一族ヤダ。


「アルベルト! 妾もこのいくさには参加するのじゃ! 最近、人を斬ってないから、腕がなまっておる。相手は山の民の残党らしいが、妾の血の滾りを鎮めてくれるやつらかのぅ?」


 もう一人の脳筋女将軍も発言が危ない。


 現代であれば、直ぐにポリスメンに職質されて、連れて行かれる類の人だ。


 山の民の集落から駆け通しでアシュレイ城に帰ってみれば、やる気満々の戦闘種族たちが、出陣を今か今かと待ち構えている。


 ちょっとは、愛人の膝枕でキャッキャウフフって感じの休憩が欲しいわけさ。


「ちょっと待たれよ。今からそんなに騒いでどうしますか! 敵は山中の砦という要害に立て籠もっております。今回ばかりはうちも損害を覚悟せねばなりませぬ。戦と聞いて浮つくのはおやめください!」


「山の民のオンボロ砦など、妾が門ごとぶっ壊してやるから安心するのじゃ! では、出陣だぁ!! いくぞ! 皆の者、手柄をあげろ!! ひゃっはぁー! いくさだぁー!!!」


「あ、こら! マリーダ! ずるいぞ! 皆の者、後れを取るな! いざ出陣じゃ! いくぞ! おらぁああああ!」


「あっ!! 親父抜け駆けはズルいぞ! ラトール隊、遅れるなっ!!」


「「「うぉおおおおお!!!」」」


 先年のいくさからほとんどの期間を鍛錬という名の開墾と堤防作りに従事してきた鬼人族の鬱積した思いが爆発したかのように脳筋一族たちが、いくさと聞いてアシュレイ城を飛び出していった。


 しかも、留守居役は保護しているとはいえ、ついこないだまで敵だった客将リゼにお任せしてだ。


 恐るべき戦闘脳というか、何も考えてないだろう?


 戦に勝って帰ってきたら、本拠が無くなっていたとか考えないのだろうか。


 確かにリゼは俺がメロメロにしているから、裏切る可能性がないが、かといって一族男全員引き連れて戦に行くか?


 もう、どうすれば脊髄反射の戦闘種族たちを抑えられるか教えて欲しいものだ。


「ふぅ……行ってしまったな。マリーダはお仕置き決定。ブレスト殿とラトールには帰還したら、反省するまで開墾と堤防作りの日々を過ごしてもらおう」


「アルベルト様、帰還後のマリーダ様のお仕置きをお任せください。それよりもあたしたちも行かないと。お疲れだと思って、馬車を用意しといた。リュミナスとフリンがお世話してくれるから、ゆっくりしておいて」


 マリーダたちの出陣を見送った俺の前に、リシェールが馬車を横付けした。


 騎馬に乗って駆け通しで帰ってきた俺の腰の負担を考えて、馬車を用意してくれるメイド長の心遣いに涙が漏れる。


 しかもケモ耳フレンズのお世話係付きという癒し効果が完璧な対応である。


 愛人の鑑ともいえるリシェールの対応で、飛び出していった狂犬どもによって萎れかけたやる気が再び漲ってきた。


 この後始末さえ終わらせておけば、自由時間が増えるから愛人孝行を絶対にしてやる。


 待っていろ。俺のエロエロ生活。おっと、違う愛人孝行生活だ。


「すまんな。助かる。マリーダ様を追ってくれ」


 愛人のリシェールが準備してくれた馬車に飛び乗ると、先行したマリーダたちを追いかけて、来た道を戻ることになった。


 その道中、車内でリュミナスとフリンの二人とイチャイチャタイムを堪能し、俺のやる気はかなり上昇傾向にむかっていた。

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