006
―数日後―
俺たちはアレクサ王国軍の追手を撒くためアジトとしている街で逗留を続けていた。
隣では、ベッドでニコニコ顔のマリーダ。この数日は帰参への下準備をしつつ、夜のお相手もしていたので、マリーダの肌艶がテカテカしている。
ちょっと頑張り過ぎて腰をやらかしかねる事態もあったが、転生して一五年目の若い身体はまだまだ頑張れそうである。
この数日で俺の傭兵団での身分は、頭領付き情夫兼参謀という珍妙な役柄を割り振られているが、名が体を表しているため抗弁できずにいた。
そして、反対側には俺より少し年上のくらいの黒髪ショートなナイスバディなお姉さんが佇んでいる。彼女の名はリシェール。アレクサ王国の民であったが、マリーダの傭兵団がこの地をアジトにした時に街への乱暴狼藉を回避するため奴隷として差し出された女の子だ。
両親は他界。親類縁者もないリシェールを生贄にして、マリーダたちの毒牙から街を守ろうとしたことに対して、異世界事情を知っている今となってはなんら痛痒を感じずにいる。
俺がセカンドライフを生きている世界は、現代日本とは違い、力こそが全てを決する世界で、国家による統治も決めたルールも法律も、皆にそれを守らせるには力が必要な世界なのだ。
力があれば何でもできる世界。財力、権力、軍事力、ありとあらゆる力を持つ者が全てのルールを決める世界。それがこのワースルーン大陸の不文律なのである。
そんな世界で力を持たなかったリシェールが奴隷として差し出されることは致し方ないことであった。
とはいえ、リシェールはマリーダにかなり気に入られており、身辺を世話する女官として常に傍に近侍している女性であった。
そう、常にマリーダに近侍しているのである。重要なので二回言った。
「マリーダ様、アルベルト様、ご起床のお時間かと思われます」
「リシェール。妾はアルベルトともうひと戦したいのじゃ。負けっぱなしは嫌じゃ。妾はアルベルトに勝ちたい」
「お言葉ですが、今のマリーダ様とあたしではアルベルト様に勝てる気がしませぬが……」
「二人とも頑張り過ぎだから……。このくらいにしておきましょう。リシェール、マリーダ様。もう起きますよ」
シーツを剥ぎ取られた美女二人はもうひと戦を諦めたようで、二人で一緒に俺の身支度を始めていた。
「アルベルトはえっちい男なのじゃ。リシェールまでコマして、妾にも身支度までさせるとはな。妾がここまでするのはアルベルトだけじゃぞ」
このアジトの街に着て以来、マリーダが何かと俺の身の回りの世話をしたいと申し出ていた。
普通だと情夫の俺がマリーダの身の回りの世話をするべきところだが、本人がどうしてもやりたいというのでリシェールとともにお世話してもらっている。
「あたしはマリーダ様の意を汲んでアルベルト様の身支度を先に済ませた方が良いと思った次第ですよ。それにコマされてとは……。あたしはマリーダ様一途です」
「そうかのー。アルベルトに相当啼かされておった気がするがのー」
「それを言うならばマリーダ様こそ、アルベルト様に挑んでは完膚なきまでに叩きのめされていたようですが。あたしの記憶違いでしたでしょうか?」
「あ、あれはアルベルトが!」
二人が昨夜からの夜のお話をしてニコニコしているが、日がすでに真ん中近くまで上がっている時刻にしゃべる話題ではないので、咳払いをすることにした。
「ゲフン、ゲフン。あー、そういった話は夜にまたしましょう。今は身支度を整えて、朝食を取らないと」
「ふむ、アルベルトがそういうのであれば、仕方あるまい。リシェール、最速で身支度を整えるのじゃ」
「はい。準備は終えております」
俺の咳ばらいを聞いたリシェールはすでに準備を終え動き始めていた。