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041

 エルウィン家の軍勢二〇〇名と輜重隊として五〇名の人夫を引き連れ、アシュレイ城から南下したアレクサ王国との国境である川が見下ろせる場所に陣取っていた。


 眼下の河原ではマリーダが首を飛ばした国境領主三名の領地に進駐軍として入っていたステファンの軍勢が侵攻してきたアレクサ王国軍と戦闘している。 


「死にさらせやぁああああああっ! ごらぁあああっ! なにうちのシマ荒らしてくれてんだぁああっ!! 」


「うっさいんじゃっ! ぼけぇええ! お前らがぼんやりしてっから、うちのもんになったんじゃい! さっさと首を置いていきやがれぇええっ!」


 ヤダ。なにこれ怖い。


 とりあえず、眼下のステファン軍とアレクサ王国軍の戦闘の様子に実況付けてみました。


 バイオレンスな時代とはいえ、怖い、怖い。


 侵攻してきたアレクサ王国軍は、国境警備の任を帯びたステファン進駐軍とエランシア帝国領主軍を合わせた四〇〇〇で、アレクサ王国軍本隊三〇〇〇を引き寄せていた。


 そんな中、総勢二〇〇名のエルウィン家の軍勢は、無視されるように戦場の小高い丘で放置されているのだ。


 たかが二〇〇名程度と見られたのか敵将は俺たちの戦闘力を過少評価しているみたいだ。


 というか、ステファンの軍に引っ張られたアレクサ王国軍と、やる気の薄いアレクサ王国軍に動員された領主たちとの間に間隙が発生しているのが見えた。


「アレクサ王国軍本隊と領主軍の間がかなり開きましたな。時は今です。マリーダ様、やる気のない奴らを戦場から叩き出しましょう」


「ふむ、ようやくお預けを解いてもらえるようじゃな。えっちいアルベルトはいくさもいやらしい手を使いおるのぅ」


 隣に座るマリーダが大剣を手に立ち上がる。


 眼下の河原でアレクサ王国軍本隊から距離が離れつつある領主たちの寄せ集め軍二〇〇〇に狙いをつけた。


 戦意、装備、練度ともに弱卒であるそれら二〇〇〇をエルウィン家の一騎当千の脳筋戦士団で追い散らせば、地の利を得ているエランシア帝国軍の勝利はほぼ確定である。


 逆に河によって逃げ道を塞がれる格好となるアレクサ王国軍は大敗のフラグが建つことになるはずだ。


「うぉおおおお!! ついにかっ! ついに戦ができるのかっ!」


 家老のブレストが雄たけびをあげ、得物の大戦斧を担ぐ。


 脳筋戦士団の本領発揮の時間だ。


 いや、脳筋一族のショータイムの時間だった。


 戦場に着いてから、三分ごとに出陣の催促をされ、焦らしに焦らした結果、歴戦の騎士たちですら漲る彼らの戦意で小便をもらしそうになるほどであった。

 

「妾の率いる一番隊は左翼。ブレスト叔父上の二番隊は右翼から攻めるぞっ!! 初陣のラトールはアルベルトの護衛をせい。失敗したらその首はないと思え」


「マリーダ姉さん。それはないだろう! オレだって戦えるさ」


 初陣を迎えたラトールが自分も戦いたいと、マリーダに申し出ている。


 その様子を見た父親のブレストが槍の柄で息子を小突き倒した。


「馬鹿者っ!!! いくさ場で当主に口答えするではないっ!! ここは子供の遊び場ではないのだぞっ! 力を認めて欲しくば、当主より与えられた任務をきちんとこなしてから申せっ!」


「親父っ! オレも鬼人族の男だ。戦いに関しては後れをとることはないっ! 頼むから――」


「ならぬ。アルベルトを護衛せよっ! それが当主がお前に割り振った任務である。わがままを申すなら戦陣の習いとしてお前の首を刎ねねばならぬ」


 父親であるブレストが、眼にも止まらぬ速さで、ラトールの首元に槍の刃先を押し当てていた。


「ラトール殿、私の護衛をしてもらえば、美味しいところを食わせてあげますから」


 険悪になりかけた空気を察し、ラトールを控えさせる餌を撒いてみた。


 どうせ、マリーダとブレストが崩した敵兵をアレクサ王国本隊へ誘導する猟犬役をやってもらうつもりであった。


「ほ、本当か。アルベルト。オレのために」


 ラトールが半泣きで俺の手を握っていた。初陣とはいえ、マリーダ、ブレストに次ぐ武芸の持ち主であるラトールは将として育てるつもりなので、脳筋一族の教えに染まる前に教育を始める気でいる。


「ラトール。大人しく、アルベルトのいいつけを守っておけ」


 ブレストはラトールの首筋に押し当てた槍先を外すと、マリーダに向かい膝を突き頭を垂れた。


「我が息子が失礼をしました。息子の非礼はこのいくさ場で返しますゆえ、平にご容赦を」


「よい、妾も初陣の時はブレスト叔父上に迷惑をかけたのでな。おあいこということじゃ。さぁ、皆の者、戦場で首を狩ってこようぞ!! 皆の行くぞ!!」


「マリーダ隊に続き、ブレスト隊も進め!!」


「「「おおぉ!!」」」


 放たれた脳筋戦士たちは、腹に響く地鳴りのような鬨の声を上げて、敵に向かって丘を下り殴り込んでいった。


 戦闘部隊の本領発揮である。


「さて、ラトール。しばらくは観戦になるけど、すぐに出られる準備はしておいてくれよ」


 俺の率いる輜重隊を護衛するためにラトールの率いる二五名が残っていた。


「ああ、任せてくれ。アルベルトの指示に従う」


 ラトールは真剣な表情で出撃していったマリーダとブレストを見送っていた。

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