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一騎当千の鬼人族とはいえ少数民族に過ぎない。領内の多数を占める人族が支配者一族に対し決起すれば、問題はややこしい方向へ動き出してしまうのだ。
どういうことかって? なに簡単なことさ。
当主や支配者一族の鬼人族むかつく、あいつらが困ることしたい、だがバレると軍隊が飛んでくる。そうだ、お近くの人族国家に助けを借りよう。アレクサ王国の支援を受けてレジスタンス活動だ。ヒャッハー!
というわけで、アレクサ王国を巻き込んだ泥沼の内戦という最悪のパターンに入ることも考えられるのだ。
なので、高まった領内の自治能力を組織化させず、エルウィン家の家臣団として取り込むのが必須事項となっている。
主に取り込んだ者たちは、内政団として俺の手足として扱き使う予定。お外の戦闘はマリーダとブレスト率いる鬼人族に任せる予定なので、領内巡視、徴税業務、事務作業、台帳管理、トラブル処理などを俺の内政団が請け負う形になるだろう。
人材が欲しい……。まともに内政やれる人が家臣団に一人もいないのはな……。
執務室で、エルウィン家の家臣団の惨状を確認した俺は乾いた笑いしかなかった。
エルウィン家が俸給を払っている家臣は二〇〇名ほどいる。だが、その全てが戦闘を生業とする戦闘職人とも言える鬼人族の戦士なのだ。
確かに一騎当千の戦士たちは強い。それは認める。だが、内政を扱う者を一人も雇わないとはどういうことだと声を大にしてエルウィン家の歴代当主たちに言いたかった。
領内の取れ高の確認や城の備蓄食料の数、領内の困りごとの状況等々、アシュレイ城の内情を正確に知る者が皆無の状況。
エルウィン家の歴代当主たちが先送りし続けた遺産に血涙を流しつつ、山積みの陳情書に目を通していく。
こ、これくらい。どうってことないんだからねっ!
俺一人しかいない執務室で、頬をしょっぱい水が頬を伝う。この辛さはマリーダとリシェールの身体に吐き出させてもらうことにしよう。
この後、執務室で山積みの陳情書や関連書類と日暮れまで格闘することとなった。
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