002
―数時間後―
神殿の一室にあるベッドの上で俺はマリーダと並んで寝ていた。
後に大公爵まで出世してエランシア帝国隆盛の立役者。歴史書には魔王四天王筆頭と称されることになる女将軍。
鮮血鬼ことマリーダ・フォン・エルウィンの情夫と俺はされてしまっていた。
なんでそうなったかだって? 壁ドンからの激しいマリーダからの求愛行動に俺が陥落したからだと思う。
一部、記憶が飛んでいるが、隣に居るマリーダの顔が艶々しているのを見ると、俺は結構頑張ったらしい。
「アルベルトは若い癖におなごの身体を熟知しておった。いやらしい奴じゃ」
隣に裸で横たわっていたマリーダからのやっかみに似た言葉が耳に届く。
そりゃあ、まぁ元の世界でそれなりに経験も知識もありましたからとはさすがに言わないでおくが。
それに、この世界に生まれ変わってからも、そっち方面の知識は収集していましたよ。神殿には子づくり相談に来る人もいるんで、そっち方面の知識も集積されている。
その知識を存分に発揮させてもらいましたとも。ただ、予想を上回るマリーダの体力にこっちが先に力尽きましたがね。
「知識を持つ者として当然のことでございます。ただ、私もまだ精進不足でした」
「アルベルト、気に入った。顔も好みで体の相性も抜群のようだ。我が情夫として妾を支えよ。さすれば、妾の身体は自由にしてよいぞ。どうじゃ、魅力的な提案であろう」
魅力的であり、魅惑的なご提案であった。
ただ、このまま何事もなければ順調に昇進して神官となり、大国の官僚になるセカンドライフを放りだして、傭兵団の女頭領の情夫になっていいのかと自問自答する。
将来に関わる重大な事案なんで審査に、審査を重ね――
「喜んで、マリーダ様のお役に立ってみせますとも!」
口の野郎が、意志を決定する前に裏切りやがった。
「アルベルトの決断。妾は嬉しく思うぞ。ならば、もうひと戦しようではないか」
情夫になることを了承したら、マリーダが俺の上に馬乗りになった。
そして、再び妖しい眼をして舌なめずりをすると、俺に襲い掛かってくる。
「マリーダ様!? またですか!? ちょ、まっ、あひぃいいいいいっ!」
こうして、俺は鮮血鬼マリーダ・フォン・エルウィンの情夫として生きる道を選ぶこととなった。