015
これで、めでたし、めでたしで済めば、俺はこのままマリーダの婿として子作りしながら、幸せに生活することができたはず。セカンドライフは綺麗な嫁と子に囲まれて余生を過ごしたチャンチャンで終る予定だった。
だが、人生は俺にそんな夢も見させてくれなかった。
現在、エルウィン家はマリーダの叔父であるブレスト・フォン・エルウィンが代理で家督を継いでいるのだ。
マリーダが魔王陛下から仲介された婚約者を半殺しにしたことで、相手の貴族家に詫びを入れる形で当主であったマリーダを放逐して、叔父であるブレストが領地を引き継いでいた。
問題は今回マリーダが手柄を立てて帰参を許されたことで、このブレストの地位が宙に浮くことになったのだ。
しかも、このブレスト。怖いものなしのマリーダが一族で唯一頭が上がらない人物。
更にはマリーダと同じ超絶脳筋戦士であり、領地経営? そんなことよりいくさ場へ行くぞ! って思考の持ち主。
そりゃそうだ。鬼人族はエルウィン傭兵団を見ていれば分かるが戦うことを至上した体育会系オンリーな一族。そんな彼らに書類仕事のある領地運営能力を求める事がおかしいのだ。
で、地位が宙に浮いてしまった叔父のブレストの説得を誰がするかと、平民の俺が帝都城下の商店街で買い物している間に、彼女と魔王陛下とステファンたちが押し付けあったらしい。
後で聞いた話だが、『込み入った難しい話は頭のいいアルベルトが好きそうな仕事じゃな。叔父上と揉めると面倒だし。あいつに間に入ってもらうか』と、野生児の直勘とも言うべき無責任さで、俺のことを思い出し、ステファンがマリーダの意見に賛同して魔王陛下が決定したと聞かされている。
リシェールとの買い物を終えて、準備に勤しんでいた俺のもとに、宮殿から滞留先に帰ってきたマリーダがニコニコとした顔で現れていた。
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