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014

 そして、三城が陥落して三日後、待ちに待ったエランシア帝国軍の国境警備隊が進駐してきた。


 進駐軍を率いるのは、マリーダの義兄であるステファン・フォン・ベイルリアであった。


 ステファンは髪色と同じ狐色の耳と九つの尻尾を持つ九尾族で、糸目と広い額が特徴的でマリーダとは違い、頭が良さそうで社交的な顔立ちをしていた。

 

 神殿にあった書物で人相学も少しかじっているから、あながち大外れはないと思う。


「マリーダ、相変わらず可愛い顔をしているが、それにしても脳筋なお前の仕業ではないだろう。書状の字もやたらと綺麗だったしな。どこぞで知恵者でも拾ったか?」


 兵達に付き従われてやってきたステファンの視線が俺に降り注ぐ。


「義兄殿、こやつが妾の婿じゃ。アルベルトという。いい男であろう?」


「婿? まさかこやつがか? あれだけ結婚などせぬと言って、魔王陛下からの婚約者を半殺しにしたマリーダの婿だと。この若造が?」


「妾の婿で軍師だ。義兄殿にはやらんぞ」


「このひょろ臭い若い男が軍師だと? マリーダ、気は確かか?」


 ひょろくさいとは失敬な。まぁ、確かにマリーダよりも身体を鍛えてないが。


 って、そんなことは関係ない。


 俺は義兄となる親戚筋のステファンの視線に晒された。彼は細い糸目であるが、底知れぬ怖さを感じさせる視線をさせていた。


「確かに義兄殿が言うように少しだけひょろ臭いが、夜は凄いのじゃぞ。それにこたびの帰参の手土産を用意したのは、このアルベルトだ。解放した三城は魔王陛下の直轄領になることを大いに賛成しておるし、治安も安定しておる。義兄殿の進駐軍が悪させねば、直ぐにでも落ち着く地になるであろうぞ」


 マリーダが俺の働きを激賞する。


 その話を信じられない物を見たとでも言いたそうな顔でステファンが聞いていた。


「マリーダの婿殿は知恵者ようだ。作戦内容の概略を書いた書状を読んではいたが……。わしもそこまでは思い至らなかった。なるほど、それならばここまでの道中の領民たちの視線が納得いく。これは素晴らしき策だ。魔王陛下にはよく伝えておく。お主らは沙汰があるまでこの街で休まれよ」


 ステファンは街道の民衆の様子を見ただけで、俺の策の素晴らしさを見抜いたようだ。


 脳筋肉食系なマリーダとは違い、ステファンは機知に富み常識に囚われない発想を受け入れる度量もありそうだった。


 だが、仕えるとなると脳筋肉食系女子であるマリーダよりめんどくさそうだ。


 頭の良い奴は、使える奴を限界までこき使い、自分が楽しようとするのが常であるからだ。この世界に飛ぶ前には、散々そういった奴等にこき使われた記憶があるので、絶対にこの世界ではそいつらの下では働かないことに決めているのだ。


 その後、俺たちはステファンから接収した貴族の屋敷を与えられ、一部取り分けていた資産はそのまま褒賞として授けられ、数日後には国境三城の進呈を手土産にエランシア帝国への帰参の願いと、元の女男爵の爵位復帰及び領地の相続が認められた。

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