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 使者が持ち帰った書状の内容に目を通していく。本来は頭領であるマリーダが読むべき書状だが、開封せずに俺に渡されたため、一番最初に読んでいるのだ。


『オッケー、お前らの言いたいことは理解した。魔王様には義妹マリーダが、詫び状の代わりにちぃと国境領主三人くらいシメてくるわって言ってるから、手伝っていいよね? って聞いたら、オッケー出たぜ』


 義兄殿からの書状を要約したら、こんな内容だろう。

 

 字は転生してから孤児院や神殿で必死に勉強して読めるし、書けるようになっている。


 これでもセカンドライフを快適に暮らそうと努力していたんだぜ。


 でもまぁ、勉強頑張ったら肉食系のおっぱいお姉さんに誘拐されて、いつの間にか軍師の真似事をする羽目になっていたがな。


 これはこれで悪くないセカンドライフだと思える。


 帝国軍と渡りをつけることに成功したから、国境領主を討伐することにした。

 

 書状を読み終えると、昨夜の酒宴で酔い潰れていた傭兵団の兵たちの整列が終わっている。


 酒を浴びるように飲んでいたが、いざ戦闘準備とマリーダが号令をかけると、ものの数分で衣服を整えて整列を終えていた。


「帝国軍との交渉は成功しました。これより、エレンシアとアレクサの国境地帯にあるズラ、サイザン、べニアの三領主を討ち取り、その首と領地を持ってマリーダ様のエレンシア帝国への帰参を達成することにします」


 整列した傭兵団の男たちはすでに戦闘モードに入っており、いくさになると言っても声一つ上がらず、顔色を変える者もいなかった。


「ズラ、ザイザン、べニアの領主は国境の領主であることをいいことに、戦争のどさくさに紛れ、周辺から略奪したり、人狩りを行ってそうじゃな。もちろん、領内も重税を科すというおまけ付きの悪徳領主と聞いておる。それに両国の軍が近づくとすぐに降伏して旗幟を変える輩じゃからな」


 マリーダも傭兵団の頭領として国境領主たちに雇われていることもあり、その辺の事情にはある程度の知見を持ち合わせていた。


「そうです。だから魔王陛下は帝国軍を率いてこれらの領主を討つことはできない。なぜなら、討てば国境領主たちが雪崩を打って敵側に回るからです。ですが、マリーダ様は在野の傭兵団の首領にすぎません。野盗といっても過言ではない傭兵団に襲われ領主軍が壊滅すれば、空白城を魔王軍が接収しても誰も文句は言わないはずです。領主の首三つと城三つを手土産なら魔王陛下も他の貴族を納得させられるでしょう」


「うむ、あの程度の領主なら我が傭兵団の敵ではないな。その程度で妾の帰参が許されるなら、早速取りかかろうぞ」


「素晴らしい策戦だ。さすが、アルベルト殿だ。野郎ども姫様がエランシア帝国に帰参の目処が立ったそうだ。とっとと、そのクズ領主を潰すぞ」


「「「「おうぅ!!!」」」」


 それまで黙って俺の話を神妙な顔で聞いていた家臣たちであったが、マリーダが国境領主壊滅作戦を開始することを伝えると一気に熱気を帯びた鬨の声を上げていた。


 絶対に戦えるのが嬉しいだけだろ。お前ら……。これだから、脳筋は……。


 マリーダの下知が下ると、家臣たちはアジトの街を引き払う準備をすぐに始め、一路国境地帯の目的の領地へ向けて行軍を始めていた。

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