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トウアの未来について考えよう

 こんにちは、トウアです。


 上級学園に通い始めて一年経ち、学生生活も最後の年となりました。あと数ヶ月もしないうちに今後の進路を決めなければなりません。


 恥ずかしながら、まだ決めかねております。


 教師か文官か。

 勉強は好きなので、出来るだけ資格を取り、どちらも目指せる状況ではあります。

 ただ、今年は専門的に学ばなくてはならないため早く決めなくてはなりません。

 教育実習で学園に行くか、文官見習いとして王宮に行くか。


 迷っています。相談にのっていただけますか?



 〓 〓 〓 〓 〓


 そんな手紙をゴウ先生に出した数日後、お家にお邪魔していた。奥さんがお茶を出してくれる。


「すみません、ありがとうございます」

「いいのよ。ごめんなさいね、まだ戻っていなくて」

「お忙しいのに私が押しかけたんですから、気にしないでください。こうして奥さんとお話しできるのもうれしいですし」

「あら、かわいいこと言うのね。なーに? 好きな子と進展でもした?」

「んー、そちらはもう吹っ切れつつある感じですかねぇ。卒業してから会える機会がないんですよ」


 トウアは貴族学園に通っていた頃、フリッツという好きな人がいた。しかし、上級学園に進学したのはトウアだけであったし、彼は貴族なのでそもそも生活区域が違うのだ。


 奥さんが「ちょっと待ってね」と席を外すと、お盆におかわり用のお茶と追加のお菓子をのせて戻ってきた。


「おまたせ! さ、これでゆっくり話を聞けるわよ」


 奥さんは恋話が大好きだ。トウアの話もなんだかんだ聞き出されてしまっていた。

 お子さんももう4歳になり、今はお昼寝中。これは逃げられそうもない。


「卒業してからの仕事の話でしょ? 迷っているなら環境で決めればいいのよ! どっちがいい男がいるかってね!」

「なんですか、その決め方は」


 くすくす笑ってしまう。そんな考え方はしたことがなかった。


「だって、仕事の内容ではもう考えたのでしょう? だったら別の角度から考えるのも手でしょ」

「……まぁ、たしかに」


 だからといって、基準が男性なのもどうかと思うが、妙な説得力をもっていた。


「じゃあ、まずは学校の先生になった場合ね。どっちの学校に行く予定なの?」

「そうですね、貴族学園は平民だと不利かもしれないです。通っていたので出来ればそちらがいいですけどね。実習はエドワード先生を頼ろうと思いますが」

「いいじゃない! エドワードくん! ちょっと年上だけどいい男だわ」


 エドワード先生〜、こんなこと言われてますよ〜。


 十歳年上だけれど、確かに『いい男』ではありますよね。なんて、私が言える立場ではないですよ!

 ニコニコした顔は崩さずに心の中でツッコミを入れる。


「じゃ、文官だったら知り合いいるの?」

「知り合いというのもおこがましいですが、先日王太子様にお会いしまして、見習いに来るなら文官様を紹介していただけると……」

「はぁ? 王太子様!?」

「は、はい。生徒会を一緒にやっていましたので覚えていていただいていたというか」


 ロベルト王子は卒業後、立太子され王太子様になられた。

 先日、登用試験などを確認に王宮に出向いた際、たまたまお会いしたのだ。王太子様があんな場所にいらっしゃるとは思わなかったので驚いた。


 さすがに、告白されたことがあるなんて奥さんには話していない。


「王太子様はちょっと現実味がなさすぎるわね。物語ならありそうだけど。他には?」

「そうですね、王太子様の側近をされてるサミュエル様も生徒会でご一緒してました。でもその方はお相手がいらっしゃいますよ?」

「なーんだー」


 ざんねーん、とクッキーを口に入れながら呟いている。全然残念そうな顔をしていない。


 なんとなくカイルを思い出す。あの二人は仲良くやっているだろうか。きっとサミュエルが離しはしないだろうけれど。時々射るような視線で見られていたことを思い出す。あれは怖かった。

 入学したての頃のアイリーン様なんてかわいいものでした。


 カイルなら相談できるかもしれない。手紙を書いてみようかな。

 つらつらと考え込んでいると奥さんからあきれたような声がかかる。


「ちょっとトウアちゃん! 戻ってきて」

「あ、ごめんなさい。何でした?」

「いいや、どちらにしても平民差別がありそうな職場だろうな、てね」

「そうですね。でも、そこはあまり考えないようにしようかな、て。やりたいようにやってみますよ!」


 ニッと強気に笑ってみせると、安心したように奥さんも笑ってくれた。


 それから、平民学園にいる将来有望そうな独身教師の紹介などされていたら、ゴウ先生が帰ってきた。



「ただいま! トウア、遅くなって悪かったな」

「いいえ、奥さんとのお話が楽しかったから大丈夫ですよ」

「そりゃよかった。たまには話しに来てくれよ。色々たまってるみたいだからなー」

「あんたがあんまり話を聞いてくれないからね」

「女の話にはついていけないんだよ」


 なんて、やりとりしながら机の上が入れ替わって、新しいお茶がトウアとゴウの前に置かれている。


 改めて今後のことについて相談する。


「俺としては、やっぱり教師になってほしいけどな。仲間が増えるし。でもそれは俺の勝手な希望だから、トウアが気にすることはないよ。ただ、そうだな、エドワードのオススメポイントは話しておこうか。なぁ?」

「そうそう、さっきもエドワードくんはどうだ、て話してたのよ〜」

「あいつは性格もいいし、今のところ女の影はなさそうだし、仕事に対して真面目だしな。伯爵家の坊っちゃんといっても三男だから後継でもないし、それから……」


「はは、ははは……」


 なんかもう乾いた笑いしか出てこない。

 エドワード先生をきっと心配しているんだろうな。

 でも話の通りエドワード先生はとっても素敵だから、きっと大丈夫だろう。生徒にも人気の先生だったし。


 ゴウ先生の話が学生時代に入っているのを微かに聞きながら、相談に来たことを少し後悔しはじめるのだった。



 もうなんとか計画を立てて、両方経験してみるしかないかもしれないな! よし、それぞれの時期を確認して申し込みを……


 ある意味、トウアに方向性を決めさせた夫婦だった。




何にも解決しておりません。


読んでいただきありがとうございました。

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