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№36 とうとう禁門の変が勃発してしまった!

高校二年の歴オタ主人公・田島錠は幕末にタイムスリップし、「未来から派遣されたターミネーターによる歴史改変の阻止」という途方もない任務を背負わされてしまう。

どんな素人でも剣の達人になれるオートマチック・オペレーション・ソードを手に、新撰組の剣客・沖田総司から気に入られて何かと手助けを受けるようになった錠は、仲間になったツンデレの女剣士・那奈、爆乳の岡っ引き・お涼、クールな密偵・マキと力を合わせ、幕末の京都に潜む凶悪な敵を探し出し、地球を救わなければならない!

 禁裏の周りを囲むように貴族たちの屋敷がびっしりと建ち並ぶ公家町の外郭には、出入りのために九つの門が設けられている。


 現代の京都御苑は、子どもでも乗り越えられる高さの石垣土塁で囲まれているけれど、それらが整備されたのは明治以降。

 それまでは、軒を連ねる公家屋敷の塀が公家町の外郭ラインを形成していた。


 石薬師御門があるのは東側の北寄りだ。

 ちなみに、約四百メートル離れた反対側、これから禁門の変の本格的な戦闘が起こる蛤御門は公家町西側のほぼ真ん中、薩摩藩兵が守る乾御門は西側の北寄りに建っている。


 夷川邸での顛末を駆けながらお涼とマキに話すうち、石薬師御門はすぐ真ん前に見えてきた。姫路城や名古屋城の一部でも採用された高麗門という構造で、太い柱に細長い鉄板が縦に打ち付けられているのがわかる。


 普段の日中は開門されているはずなのに、長州勢がいよいよ攻め上ってくるという緊急事態に対処するためか、門は閉ざされている。


 この門前に、数百人ほどの兵士が屯集し、土のうを積み上げ、材木で柵を築いていた。

 風に翻る陣旗は、白地に黒の卍。阿波・蜂須賀はちすか家の旗印だ。


 外様大名ではあるけれど、当時の藩主・蜂須賀斉裕は徳川将軍家からの養嗣子で、尊王攘夷というよりは幕藩体制を再編強化する公武合体の支持者だった。

 でも重臣の中には熱烈な尊王攘夷派もいて藩論を統一できず、禁門の変当時の戦意もあまり高くない。

 ただ、斉裕は開明的な君主だったらしく、藩の軍制はすでにイギリス式へと切り替えられている。兵士は全て銃を持ち、動きやすい筒袖にスボンを着用していた。


 陣羽織を着用する指揮官らしき侍にお涼が近付き、一文字鍔の十手を見せて頭を下げた。


「阿波藩の指図役様とお見受けして、お尋ねさせておくれやす。あたしは京都町奉行から十手を預かっている口問いのお涼。つい今しがた、白の筒袖で鉄砲を担いだ五十人くらいの一団が通りかかりませんでしたやろか?」


 指揮官は珍しい女の口問いをうさん臭そうに見下ろしつつも、町奉行の配下であることに一定の気配りを見せた。


「おお、それならば幕府陸軍の面々じゃろう。江戸から汽船で大坂まで渡り、今し方都へ着いたばかりとのことだったが。禁裏をお守りするため、今後は一橋公の指揮下に入るとのことで、日の丸の隊旗を先頭に、この門から入って行かれたぞ」


 瑞雲たちの武装集団に間違いない。

 うなずく俺と那奈を見て、お涼がさらに言い募る。


「その一団には不審な点があり、至急御用改めせなあきまへん。どうかこの門をお通しください!」

「不審とは、如何なることじゃ?怪しき者共を禁裏に近付けたとあっては一大事。直ぐさま追っ手を出さねばならぬ。あやつらは幕府陸軍ではないのか?」


 阿波藩が追っ手の兵なんかを動かして分子破壊砲の存在を知りでもしたら、事態はますますややこしくなりかねない。


「いえ、決してそういう訳では……確かめたいことがいくつかあるだけで。ですから、まずは我々が事の真偽を見極めるため、直接事情を聴き取りたいのです.。それに、公家町の中は皆さんの警備管轄外。無闇に兵を入れれば、禁裏を警備する他の諸藩方といざこざを起こしかねませんよ」


 横から口を出した俺を、指揮官は怪訝そうに見た。


「何だ、お主は?」

「この方は、あたしらの協力者ですのん。新撰組・一番組長の沖田総司様ともえろう近しいお侍さんですのえ」


 新撰組と聞いた途端、指揮官の顔色が変わった。厄介な連中には関わりたくないという気持ちがありありとわかる。

 それに、公家町九門警備担当諸藩が受け持つのは門の外側。内側は、禁裏の六門を警備する藩の担当だ。


 ちなみにこの当時の六門警備は、禁裏の西側にあって、公家が出入りする宜秋門を含む最重要な三つの門を会津藩と桑名藩、南側の建礼院門を水戸藩と紀伊藩と伊予松山藩、東側の建春門を尾張藩と郡山藩、北側の朔平門を宇和島藩と膳所藩が受け持ち、幕府徳川家と密接な繋がりを持つ親藩や譜代大名でほとんど占められている。


 外様の阿波藩としては、この点も二の足を踏むところだ。

 結局、指揮官は追っ手のことなどもう口にせず、「異変があればすぐ伝えに来るよう」とすんなり俺たちを門脇の通用口から通してくれた。


 門を潜った俺たちは公家町内部の大路を西へと駆け、何軒もの屋敷を通り過ぎて、道が屈曲している禁裏の北東角に至った。


 当時の禁裏は上から見て縦長の長方形ではなく、北東角だけが大きく窪んだ形になっている。ここは通称・猿ヶ辻。鬼門にあたる築地塀の角に、魔除けのために日吉大社の召使いである猿の木像が掲げられている。前年にはこの場所で、尊王攘夷派の公家・姉小路公知あねがこうじきんともが暗殺された。いわゆる「朔平門外の変」だ。


 視界が開けた西の端には、乾御門が小さく見える。そこに人影はない。薩摩藩兵は、阿波藩のように門の外で警備しているんだろう。


 俺たちが立っている場所のすぐそば、禁裏北側に唯一設けられている朔平門の前には仮番所が建てられ、二百人くらいの兵士が屯している。

 旗指物に描かれている竹に雀紋から推測すると、戦国時代の名将・伊達政宗を藩祖とする東北・仙台藩の分家、四国の宇和島藩だ。

 阿波藩同様外様大名ではあるけれど、藩の実権を握り続けている前藩主・伊達宗城は大身の旗本・山口家から養子に入り、開明的な公武合体派の名君として幕府にも一目置かれ、今年の四月から禁裏警備を命じられている。


 兵士たちに表立った動きはなく、陣営は遠く砲声を聞いて緊張をしていたものの、まだ落ち着いていた。


 同じく朔平門警備を任され、京で大火が発生した際の消火担当でもあった膳所藩の方は、俺の記憶だと、この時兵を洛西の太秦、妙心寺方面へ警戒のために出していたはずだから、ここにはいない。


「あたし、あそこのお侍に聞いてくるわ」


 お涼は朔平門へと走り、番所の前で数人の兵士と何やら会話を交わした後、すぐこちらに戻ってきた。


「幕府陸軍の格好をした集団なんて、見かけてないし、この門の前も通ってへんて」

「とすると、瑞雲たちはどこへ行ったのでしょう」

「薩摩兵の大半は門の外にいる。長州兵が会津兵の守る蛤御門を突破して公家町の中で乱戦になった後、薩摩兵が門内に入ったところを狙ってるんだろう。それまではどこかに潜んで待機してるに違いない」

「ちょっと待って、棟田はん。長州が蛤御門を破るやなんて、何でそないなことがわかるの?」


 お涼の当然な疑問に、俺は一瞬言葉が詰まる。全ての真相を知る那奈に対するのと同じように、また喋ってしまってた!……ホントに気をつけなきゃ。


「いや、それは、狐火たちが蔵の中で口を滑らせたんだよ。あいつらと繋がってる長州の周到な禁裏攻撃計画を。都の西、嵯峨天龍寺に駐屯してる長州の部隊は、真っ直ぐ東へ進めば、当然公家町の西側にぶつかる。公家町外郭に設けられた九門のうち、蛤御門は長州の仇敵・会津が守ってるから、目標になるのはこの門なんだ。でも、門がいくら厳重に警備されてたって、公家町の外郭は土塁や石垣で守られてる訳じゃなく、普通の塀だから、そこを飛び越えていけば、蛤御門の左右を突破できる……って、長州の連中はそう考えてるんだよ。ねえ、那奈さん」

「え、ええ、そう……それで、公家町の中で激戦になると予想されるのです。そうなった場合、戦いの帰趨を握るのは、幕府軍の中で最強と目される薩摩。狐火や瑞雲は、その薩摩藩兵を襲い、指揮官の西郷隆盛という方を殺して形勢を長州有利にしようと」

「ふう〜〜〜〜ん」


 長州が、加賀、鳥取、岡山の三藩と示し合わせて進めようとしているクーデター計画については、夷川邸から石薬師御門に至るまでの間に、かいつまんでお涼とマキには話している。

 那奈がうまく口裏を合わせてくれたから、お涼も何となく納得したようだ。


「そやったら、瑞雲や狐火はどこへ消えてしもたんや……なぁ、マキはん?」


 お涼につられて俺や那奈も、そこにいるはずの後ろを向いた……が、いない。


「あれ、あのこどこ行ったん?」


 すると、俺たちが来た方向から、マキが急ぎ足で追いついてきた。


「やつらは石薬師御門から伸びたこん道よりも南側、禁裏の東に密集した公家の屋敷割におるはずばい。入り組んだ路地の中で、身ば潜めとるに違いなか」


 そう言って、俺たちの立つ場所から南東に軒を連ねる公家屋敷を指差す。


「何でそないなことがわかるん?」

「ハヤタが声で教えてくれたけん」


 マキが首の前で結んで背負う風呂敷包みの中から、ハヤタが小さな顔を出してその方向をじっとにらんでいる。


「キキキキキ!」

「さあ、もたもたしとらんで、行くばい!」


 マキに誘われ、半信半疑ながらも俺たちは石薬師御門の側まで一旦駆け戻った。

 この辺りの公家屋敷はどれも比較的小さくて、幅四メートルほどの小路が不規則に伸び、交差している。石薬師御門に最も近く、屋敷割を真っ直ぐ南に走る小路へ入る。

 突き当たりには、退位した天皇の居所となる仙洞御所が見えるものの、人は見えない。


 しばらく進んで丁字路に差しかかろうとした時、ハヤタが小さく「キィ!」とうなった。

 先頭を行くマキが手を上げて、急ぎ足の俺たちを止める。


 丁字路は、西に向かって枝分かれしている。

 俺たちは足を忍ばせて丁字路の角に体を寄せた。

 串団子みたいに四人が縦に顔を並べ、そっと覗き込む。


 いた!


 三十メートルほど先に、大きな日の丸の隊旗が風に翻り、白の筒袖に黒ズボンの四十人ほどが銃剣を取り付けたゲベール銃の銃床を地面について待機整列し、こっちに背中を向けている。


 その先頭に、身長より少し長い短槍を立てる瑞雲の姿がちらりと見えた。

 隊列の横には、長梯子が何本か横に置かれている。

 これから薩摩藩兵を襲撃というのに、何に使うんだろう……。


「蛤御門で戦闘が始まる前に、奴らを一掃しなくちゃ」


 俺たちは、丁字路の角で車座になった。


「先生、時がないのであれば、すぐに斬り込みましょう」

「そやけど、相手はあたしらの十倍やで。しかも鉄砲まで持っとる。まともに出ていったら蜂の巣にされてまうわ」

「やったら、これば使おう」


 風呂敷包みを下ろし、マキが中から取り出して手のひらに乗せたのは、和紙でできた鶏の卵みたいな白い物体三個。それぞれの端から短い紐が一本ちょろんと出ている。


「何やこれ?」


 一個の紐を触ろうとしたお涼から、マキは「いかん!」と手のひらを遠ざける。


「そりゃあ導火線。汗のついた手で触ったら、火が付かんごとなる」

「「「導火線!?」」」

「こりゃあ〝鳥の子〟言うて、導火線に火ば付けて投げれば、爆発して煙がもうもうと立ち込むる代物ばい」

「忍者が攪乱用に煙幕を張る武器だよね。本で読んだことがある」


 俺の指摘に、マキがうなずく。密偵なら、忍び道具くらい持っててもおかしくはない。


「うちがこれば投げて、あいつらの周りば煙で包む。そこへ突っ込む」


 俺と那奈とお涼は、コクリと同意する。

 那奈は刀の柄に手を掛け、お涼は腰に差した一文字鍔の十手をひらりと抜く。

 俺は丸腰だから手には棒切れ一つ持っていない。とにかくみんなと一緒に突撃して、瑞雲が腰に差している自動操作刀を奪い返さなければ。

 そんな思いを察したのか、那奈が俺に顔を向けた。


「先生は、私のすぐ後ろをついてきてください。一気に瑞雲の元まで駆け入ります」

「うん」


 下手をすればここで命を落とすのかもしれない。でも不安や恐れはもう一欠片だってなかった。だって、俺にはこんなに心強い仲間がいてくれるんだから。


 マキは風呂敷を手早く四つに裂き、それを俺たちに一つずつ渡した。マスクのように口と鼻の周りを覆って後ろで縛り、煙を吸い込まないようにするためだ。


 俺たちが用意を調えたのを確認すると、マキは短い竹筒の中に入れている火種で、三個の導火線に手早く点火した。


 シューーーーー!


 音を立てて火花が走る。

 マキは角からひょいと飛び出し、まるで野球のピッチャーみたいなフォームで鳥の子を立て続けに投げた。


 大きな放物線を描いた三個の鳥の子は、整列する部隊の中へ正確に落ち、次々と爆発した。


「何じゃ、これは!!!」

「ゴホッ、ゴホッ……どうした!何が起こった!!!」


 もうもうと立ち込める煙に歩兵たちは驚き、咳き込みながら大騒ぎする。

 この時点で、先頭を切って駆け出した那奈が一団に突っ込み、歩兵の手や足を狙って斬り付けていた。

 那奈にやや遅れて飛び込んだお涼も、舞うような十手さばきで相手の胸を突き、肩を砕いて倒していく。


 敵は全員が刀ではなく小銃を手にしているため、接近戦ではまともに戦えない。それでも、気を取り直した数人が、煙の外に出て銃を構える。


 ダーーーン!ダーーーーン!ダーーーーーン!!ダーーーーーーーン!


 彼らの狙撃よりも早く、俺たちの後方で援護にあたるマキの六連発拳銃が火を噴いた。


 目の前の敵を蹴散らしながら突進する那奈。

 そのすぐ後ろを付いていく俺の背後から、小銃の先端に銃槍を取り付けた歩兵が襲いかかる。それをお涼が鍔で受け止めたかと思うと、内懐に入り込んで顔面を強打。息つく暇もなく横撃してくる新手の敵を、同じようにして迎え撃つ。


 刀で道を切り開く那奈の足が止まった。

 眼前に、槍を構えて待ち受ける瑞雲が霞んで見える。わずかな猶予も与えず、その槍が凄まじい勢いで那奈の顔面、腕、胸を突いてきた。

 那奈は顔や体をわずかに傾けて避け、あるいは剣で受け止め防戦一方になった。


 煙幕で視界があまり効かないせいもあり、瑞雲の集中力は那奈だけに向けられている。

 足を狙った突きを、那奈がぴょんと左に跳んで避けた。

 彼女の真後ろにいた俺の前面に、瑞雲の全身がさらされる。

 さらなる突きを繰り出すために、槍の穂先が退くのを見て取った俺は、迷わず一直線に進んだ。ラグビー選手がタックルするみたいに、瑞雲の体に肩から思い切りぶつかる。


「うわっ!」


 那奈の後ろから急に現れた俺に不意をつかれ、バランスを崩した瑞雲は両手に槍を握ったままバンザイの格好でのけ反った。

 腰回りはノーガードだ。

 俺はこの機を逃さず、瑞雲に組み付くようにして腰から自動操作刀を鞘ごと抜き取った。


「あっ、こいつ!」


 振り上げている槍の穂先がこちらに向けられる。ためらうことなく、俺は刀の鞘尻で瑞雲の胸をガツンと突く。


「グゲッ……」


 瑞雲はよろめきながら後退った。

 俺は鞘を腰に差し、と同時に刀を抜く。瑞雲に向けられた刀身が、青白く発光する。


 たじろいだ瑞雲に対し、大きく踏み込んだ那奈が白刃を振り下ろした。

 しかし瑞雲は瞬時に立ち直って刀を穂先で受け止め、クルリと回転させた石突き(刃と逆の先端)で那奈の頭部を狙う。


 それを防ぐため、すくい上げるように舞った俺の刀は、那奈に殺到する槍の柄を真っ二つに断ち切る……と見る間に、反転した刃が瑞雲の右肩をえぐった。


「ぐあっ!」


 この一撃はさすがにこたえたらしく、瑞雲は分断された槍を俺たちに向けて投げつけるなり、背を向けた。全ての禍根を断つためには、奴を逃がすわけにいかない。


 俺の刀が瑞雲の背中を狙って振り上がる。

 そこに、「やあーーーーーっ!」と甲高い気合いが右の耳に突き刺さった。

 白煙の中からわき出たような格好で、銃剣を向ける歩兵の一人が横から割って入ってきたんだ。


 俺の刀はこの攻撃に直ぐさま反応し、胸を狙ってきた銃剣を弾く。

 勢い余って俺を横切った相手の右肩に、那奈が一刀を浴びせた。

 隊士は「うっ」と呻いて小銃を落とし、その場につんのめる。


 俺が視線を前に戻した時には、もう瑞雲の姿はない。


 煙幕の外に出て追おうとしたところへ、十数人の宇和島藩兵が駆け付けてきた。


「これは何事か!」


 兵士を率いる指揮官が、ぼう然と立ちすくむ。

 折からの強い風が薄れつつあった白煙を吹き流すと、そこには三十人以上の男たちが倒れ、斬られたり撃たれたりした苦痛で身をよじらせていた。残りの連中は逃げ散ったらしい。


「こやつらは、幕府の歩兵隊を装って公家町に侵入した長州派の賊でございます!今すぐ取り押さえてくださいませ!」


 那奈の説明を聞いた指揮官は、「まことか!?」と慌てて配下に捕縛を命じる。


「こいつらの親玉は黒の陣笠に背裂羽織の大柄な男なんですが、途中行き会いませんでしたか?」


 俺の問い掛けに、指揮官は「左様な出で立ちの者は見ておらぬ」とかぶりを振った。


「瑞雲はどこへ行ったんだ……」

「朔平門の方へ向かっていないのであれば、禁裏の南側へ回ったということではありませぬか?」

「じゃあ、狐火は?歩兵隊の中にあいつの姿が見えなかったのがどうにも気になる」

「分子破壊砲とやらも、瑞雲の部隊は持っておらぬようですし……ならば狐火が?」


 顔を突き合わせる俺と那奈の隣に、お涼とマキも集まってきた。


「これからどないしますの?」

「瑞雲を追いかけんでいいんか?」

「狐火と分子破壊砲の所在がわからないまま、闇雲に瑞雲を追うのは得策じゃないよ。ここは薩摩藩兵が陣取ってる乾御門に向かおう。西郷隆盛に直接会って、危険を伝えるんだ」


 俺たちは幕府歩兵隊モドキの後始末を宇和島藩兵に任せ、乾御門へと駆け出した。

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