№17 頼りになるキュートな仲間が加わってしまった!
高校二年の歴オタ主人公・田島錠は幕末にタイムスリップし、「未来から派遣されたターミネーターによる歴史改変の阻止」という途方もない任務を背負わされてしまう。
どんな素人でも剣の達人になれるオートマチック・オペレーション・ソードを手に、新撰組の剣客・沖田総司から気に入られて何かと手助けを受けるようになった錠は、仲間になったツンデレの女剣士・那奈、爆乳の岡っ引き・お涼、クールな密偵・マキと力を合わせ、幕末の京都に潜む凶悪な敵を探し出し、地球を救わなければならない!
ゴォ〜〜〜〜〜〜〜ン、ゴォ〜〜〜〜ン…………。
都のほぼ中心部にあり、住人から「ろっかくさん」の愛称で呼ばれる六角堂の時の鐘が遠く響く。もう日暮れだ。
俺と那奈は、祇園社から坂道を上がり、戦国時代末期に豊臣秀吉の正室・ねねが秀吉の菩提を弔うために建立した高台寺の南側の山道を奥に進む。
昨晩二人で話し合った結果、大石のねぐらを訪ねるのは那奈一人と決めた。
俺は鴨川で狐火に顔を見られてるから、奴と出くわすのはまずい。危険ではあるけれど、志士を装って那奈に潜入してもらい、狐火のアジトを探り出す。
そこに、分子破壊砲も保管されているだろう。
俺は近くに潜み、もし不測の事態が起こった場合、すぐ中に乗り込む。
斜めから差し込んで来る西日が、徐々に弱まっていく。もうすぐにも辺りは真っ暗になるだろう。
高台寺を過ぎ、あと百メートルも進めば、行流寺という名の小さな寺がぽつんとあったはず。
雑木林の間から寺の築地塀が見え隠れするようになった時、那奈が手を前に出して俺の動きを止めた。
「どうしたの?」
「塀の手前の茂みに、何者かが潜んで寺の方を見ております」
「えっ、どんな奴が?」
「しかとはわかりませぬ。回り込んで確かめてみましょう」
俺たちは道を外れ、足音をさせないよう正体のわからない人物の背後へゆっくり近付いた。
茂みに隠れてしゃがんでいるのは、二人。どちらも町人風だ。
門前の監視に神経を集中させていて後ろには気が回らないようで、周囲が暗くなってきたお陰もあり、相手の会話がどうにか聞こえるくらいの距離まで接近できた。
木の陰に身を隠す俺と那奈は、何やら言い争っている二人の横顔を見て息を呑む。
口問いのお涼と、子分の亀吉!
「お嬢さん、あきまへんて。ここは新撰組に一報を入れとかな、勝手な詮索したいうて、また副長の土方はんにどえろう雷落とされまっせ」
「あほ、元々市中の取り締まりは、京都町奉行の役目やろ。あいつらは街のこともよう知らん新参者やないか!」
「そやかて、祇園町周辺の取り締まり権限はもうすっかり新撰組に移ってしもてますやん。うちらの御役所は、新撰組の下っ端扱いや」
「お前は悔しないのか?新撰組が入ってきて以来、祇園町に潜伏してた不逞浪士の大方はあいつらに殺されるか、捕まってしもた。ここで新撰組に知らせたりしたら、あたしらはまたつまはじきにされて、手柄を全部持って行かれてしまうわ」
「そら、お嬢さんの気持ちはわかりまっせ。御役所の与力や同心ですら一目置いてた口問いの親父さんを不逞浪士に殺され、その仇を討ちたいていう……」
「そんな安っぽい理由やない。どこからとものう集まってきたよそ者の食い詰め浪人が、攘夷を名目に町衆から軍資金を強要する御用盗や、天誅の名を借りた人殺しを繰り返し、長い間ずっと平穏やったこの都をぐちゃぐちゃにしてしもた。そんな連中を、あたしは許せへんだけや。そないに嫌やったら、お前は一人で帰ってもかまへんのやで」
「何を言わはるんですか。親父さんの代から子分として仕えてきたこの亀吉、お嬢さんだけを置いて帰れる訳あらしまへんやろ」
「そやったら、黙って見張っとき!大石ていう奴は、今まで洛中で暴れてきた尊王攘夷の浪士とは、どうも毛色が違う。それに、大石の背後には狐の面を被った謎の侍がいるて、西村様が言うてたやろ。たちの悪い浪人を大勢集めて、とんでもない企みをしてるような気がしてならへん。踏み込むんなら、あいつのねぐらに人が集まってきてる今日が一番や」
お涼たちは、大石と狐火についての情報をある程度つかみ、その行動をかなり詳しく調べているらしい。
パキッ。
話の中身をもう少しはっきり聞こうと、わずかに身を乗り出した俺は足元にあった木の枝を踏ん付けてしまった。
「誰や!」
すかさず十手を抜いたお涼が振り返り、一メートルも離れていない俺たちと顔を突き合わせて固まる。
「あ、あ、あんたらは……」
「シッ!」
那奈がすかさず口に指を当てる。
「俺たちも、大石の悪だくみを阻止するためにここへ来たんだ!」
「えっ?!」
俺の言葉にお涼も、亀吉も、目を丸くしている。




