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№15 ツンデレ女剣士を危険なミッションに引きずり込んでしまった!

高校二年の歴オタ主人公・田島錠は幕末にタイムスリップし、「未来から派遣されたターミネーターによる歴史改変の阻止」という途方もない任務を背負わされてしまう。

どんな素人でも剣の達人になれるオートマチック・オペレーション・ソードを手に、新撰組の剣客・沖田総司から気に入られて何かと手助けを受けるようになった錠は、仲間になったツンデレの女剣士・那奈、爆乳の岡っ引き・お涼、クールな密偵・マキと力を合わせ、幕末の京都に潜む凶悪な敵を探し出し、地球を救わなければならない!

「あ・ん・さ・つ!!!???」


 いなり寿司を頬張ったまま、目をむいた那奈は甲高い声を立てた。


「シッ!あんまり大きな声出さないで」

「ウ、ウグッ……し、失礼いたしました。私としたことが」


 口の中の物を飲み込んだ那奈は、周囲の客を見回して誰も気に留めていないのを確認してから、再び俺に向き直った。


 俺と那奈は、四条通り沿いの小さな一膳飯屋にいる。

 昨晩、エマとの打ち合わせを終え、俺は熟睡したままの那奈を宿までおぶって帰るハメになった。彼女はわずかのアルコールでも酔う体質らしく、翌日は二日酔いで朝飯も喉を通らず、頭が痛いと昼過ぎまで横になっていたほどだ。


 頭痛が治まり、食欲も少しは湧いてきたようだから昼飯に誘って出かけたんだけど、那奈は「いなりずし」の看板を目にするなり精気を取り戻した。

 幕末に江戸で発祥し、関東で大流行しているいなり寿司は那奈の大好物で、関西ではまだ品書きに出している店がほとんどない。「懐かしい!」と興味を示した那奈は強引に俺を店の中へ引っ張っていき、それまでの体調不良がウソみたいな食欲ぶりを見せている。


 そんな彼女に、俺は話をちょこっとだけ盛って、秘密の一部を明かした。


 棟田万太郎は、朝廷関係者から極秘裏に依頼を受け、帝の誘拐と、禁裏を守る諸藩兵の中で最有力な薩摩藩要人の殺害を企てている正体不明の組織を内偵し、彼らが外国から購入した最新式の秘密兵器を奪って暗殺計画を挫くため京に入った。

 組織の親玉は狐面の侍で、居所は不明。仲介役を大石清之進という浪人が務め、東山の四条から五条辺りの廃寺をねぐらにしているらしい……。そんな説明を、那奈は全く疑いもせず鵜呑みにしている。


「やはり!私の睨んだとおり、先生は智勇に長けた者でなくては務まらぬ左様な大任を仰せつかっておられたのですね。真実を打ち明けていただき、嬉しゅうございます!」

「危険な任務なのに、すごく言いにくいんだけど……俺に協力してくれないかな?実を言うと、都の地理は不案内だし、一緒に行動してくれる仲間もいない。この広い街の中で、君だけが頼りなんだ」


 これは本心だ。俺の言葉に、那奈は一切躊躇せずうなずいた。


「否やがありましょうか!私は先生の弟子なんですよ。かくなる上はこの三好那奈、身を賭して先生をお助けするばかり。差し当たって、私は何をすれば良いのでしょう?」

「俺たちの味方が得た情報の全ては、君も昨日会った芸妓のお珠さんを通じてもたらされる。彼女は仲間なんだ。その情報によると……」

「先生に色目を使っていたあの芸者が、お味方ですって?」


 那奈は、あからさまに嫌な顔をして話の腰を折る。


「あれは、沖田さんが見てる中で、俺と接触するため仕方なしに……そんなことより、町奉行や新撰組も大石の探索に動いている。役人よりも先にそいつを見つけ、組織の隠れ家をあぶり出したいんだ」


 俺の言い訳にあまり納得できていない様子の那奈だったが、気持ちを切り替え「されど……」と疑問を口にした。


「町奉行に加えて、都の警備で実績のある新撰組がすでに動いているのであれば、彼らに任せるのが最善策ではないのですか?もしくは彼らと手を組んで探索を進めればよいのでは?何故、両者を出し抜かねばならぬのです?」


 うん、俺の場当たり的説明だけ聞いてれば、彼女がそう言うのも当然なんだけど、そこはうまく納得させなくちゃいけない。


 現時点の都の治安維持は、すごく複雑になってる。

 過激な尊王攘夷派志士による天誅事件が横行して治安が極端に悪化すると、新たに設けられた京都守護職が、都の行政を担当する京都所司代、町政や市中警備を行う京都町奉行、幕臣で組織した京都見廻組、主に浪士で構成した新撰組を傘下に置き、それぞれに担当地域を割り振って警察活動をやらせてる。

 祇園町周辺や東山を担当してるのは新撰組だ。


「そこは……大人の事情と言うか。今の日本の政治は、朝廷から厚い信任を受けた禁裏御守衛総督の一橋慶喜、京都守護職の松平容保、京都所司代の松平定敬の幕府側三者によって運営されてる。でも朝廷の中は、長州藩に与した有力な公家七人が追放された後も、長州びいきで急進的な尊王攘夷派の公家が中・下級の廷臣も含めてまだたくさんいるし、主導権を取り返そうと躍起になってる。俺の依頼者はどちらかというと中立的な立場にいて、幕府側にも、長州側にも頼らず、朝廷の独力で事件を未然に防ぎ、帝の発言力と統率力を強めたいと考えてるんだ」

「なるほど、そういうことでしたか!帝を中心に公儀が一つになる政の姿は、私の願いでもあります。私たちの活躍次第で、帝のお立場をさらに確固たるものにできるのですね!」


 頭をフル回転させて絞り出した理屈づけなんだけど、那奈はすっかり得心して、俺の話に乗ってくれた。

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