獣化ウイルス7話ー父親の行方ー
渚は父親の写真を一枚こっそりとリュックの中に入れて1日を過ごした。渚にとって、父親の白衣の姿は見たことがなかった。そして、渚は父親の白衣に乗っている企業ののようなロゴを調べ始めた。渚にとって、父親が自分に嘘をついてきていることにショックを受けたが、それなら、自分の父親は何をしているのかが気になり、ただひたすら探すことで、気づけば夕方になっていた。腹をすかし、部屋を出て良い匂いがするリビングに向かった。
リビングに行くと、祖母が魚料理をテーブルの上に並べていた。すると、
「降りてきたね。これから夜ご飯だから手ごろのお茶碗取ってご飯注ぎなさいよ」
と渚に言った。渚は父親の写真のことが気になり少し真顔で「うん」と答えて、茶碗を持って炊飯器の中のご飯を注いだ。注ぎ終わると祖父は椅子に座っていた。そして、渚と祖母が位置につき、
「いただきます」
の合図で夕食を食べた。
夕食を食べ終わる頃に、テレビでは
「北京発日本着飛行機で中国ウイルス発生」
というテロップと同時に成田空港が映し出されていた。渚はびっくりして急いで部屋へ戻り、スマホを手にして父親に電話した。耳にかざすスマホには通知オンが休む間も無くなり続き、そして、父親は電話に出なかった。渚は目から涙をこぼしながら、ベットにうつ伏せで倒れ、そのまま泣き崩れ、そのまま眠りに落ちた。
翌日の早朝、スマホをつけると父親から
「すまん、今回は行けそうにないや」
とスタンプと共にコンビニの渚が好きなシュークリームの券を乗せた。渚は新幹線のチケットと荷物を持ってリビングに行った。リビングでは、祖母が渚に2つのおにぎりを持たせ、渚は礼をすると祖母は手を振った。
駅に着くと、駅は誰もおらずひんやりとした風が渚の背中をおした。渚はスマホを見ると、チャットの通知が200以上あった。渚は焦ってチャットを見ると、スタンプなどの連打での通知とわかり、少し笑みを浮かべた。そして、東京へ向かう電車が到着し、電車に乗った。
電車に乗ると、誰もいなかった。渚は好きな席に座って窓の外を見ていると、隣県付近で何かを見た。それは、緑色の煙だった。緑の煙が民家を覆っていた。火事なのかと渚はスマホのズーム機能を使って覗くと、火事らしきものは見つからなかった。そのため、緑の煙の画像に収めてSNSに投稿した。投稿すると、すぐにいいねがつき、いいねしたユーザーを見ると、なんと外国人だった。そして、コメントには
「僕の田舎でもあったよ。緑の煙といっても、地域的にとても寒いからその時の目の錯覚と言われたけど、日本って冬なの?」
というコメントに渚は「夏だよ」と答え、スマホを閉じ、椅子に身を任せて目を閉じた。
数時間後、気づけば東京に着いていた。渚は急ぎながら荷物を持って電車を降り、自分が住んでいる区に向かうためにもう一つの電車に乗った。電車にはあまり人がいなかった。渚は一つの駅で着くため、吊り革を掴んでスマホを覗くと、スマホには海外の人たちが多くが渚が撮って投稿した「緑の煙」がすごい勢いで拡散されていた。
そして、渚が降りる駅についた。渚は電車を降りると、辺りは静寂だった。いつもならこの時間帯から部活に行くだろう学生や通勤している大人たちがいるはずが異様な静けさと共に、何か異様な感じを感じ取った。渚は先ほどまでの歩くスピードを落とし、ゆっくりと改札を出た。
改札を出てホールに出た瞬間、渚は手に持っていた荷物を床に落とした。そこには、口から泡を拭きながら痙攣をしている人たちがいたからだ。渚はびっくりして悲鳴を上げたが、すぐに我に帰ったのか、目の前にいる倒れている人のそばに行くと、驚く光景を見た。それは、半袖の人の腕が動物のような体毛に覆われ始めていたのだ。渚はびっくりし、腰を抜かした。そして、痙攣している人たちを見ていくと、ほぼ全員の体の一部に動物のような体毛が生え、渚は怖くなり、出入り口を目指して全力疾走で走った。
駅の外に出ると、駅の外でも痙攣している人や吐血して苦しんでいる人たちがいた。その中に、四人の影があった。渚は目を擦って凝視すると、四人の影が次第にわかるようになり、その四人は黒い特殊部隊のような衣装をして、何かを組み立ていた時だった。
「あそこに生き残りがいるぞ!」
と渚の方向に指差して腰にかけてある何かを渚に向けた。そして、
「ピュン」
と渚の耳を何かがかすった。渚は耳に手を当てて見てみると、赤い液体が手に付着していた。渚は急いで来た道を戻るとすると、後ろから追いかけてくる音が聞こえる。渚は体力が尽きるまで走っていると、突然横から大きな何かが飛んで来た。そして、渚を捕まえて勢いよくジャンプし、とても高い駅の上へ飛び、そして、助走をつけてまた更に高くジャンプした。渚は突然の出来事で驚き、少し上を見上げると、狼ような顔がそこにあった。渚は、
『多分、死ぬんだろうな』
と思いながら絶望していた。
どこかの大きめのアパートに着くと、その狼のような顔をしたナニカは渚を離した。すると、
「本田渚だな。君のお父さんに頼まれて来たんだ。君のお父さんは無事だよ」
と言った。渚は突然の連続で頭が混乱し、ましてや目の前には大きな人狼がいる。だが、父親が無事でいることに安堵した。すると、その人狼は、
「俺の名前は宮田マサル。人狼にしてるから化け物と思われるかもしれないけど、一応人間だ。君のお父さんと同じく研究員でもある」
と言いながら、徐々に人狼から人間へと姿を変えている。渚は驚きながらもマサルが握手を求めたため、それに応じた。
渚は腕時計の時刻を確認すると、朝9時だった。そして、今にも雨が降りそうな曇りが空を覆っていた。渚にとってはアパートの屋根に登るのは人生で二度目だった。一度目の出来事が渚にはトラウマになり、降りることができなかった。すると、
「俺は君のお父さんに頼まれてな、ずっと車の中で待っていたんだ。朝になって人通りができた頃に今の状況になったんだ」
と言いながら、腰にかけてある水筒の蓋を開けて水分を取り始めた。渚はマサルが水分補給しているのを見ながらスマホに目を移した。すると、2時間前に「緑の煙」という題名で、1人のクラスメートが動画を撮っていた。
「あれ、誰だろ。誰かが何かいじってる。は?ちょっと待って、あの緑の煙何?」
と混乱した動画をチャットに載せていた。それに注目し、渚もそれを見て状況を理解した。そして、その動画をカメラロールに入れた。
渚はマサルに例の動画を見せると、マサルはびっくりしていた。すると、マサルは自分の耳にかけているイヤホンのようなものに
「こちらβチーム。本部との連絡できれば帰還する」
と言って、突然と狼の姿に戻り、渚を抱えてアパートを飛び降りた。渚は突然のことでびっくりした。
しばらく渚はマサルに抱えられながら、顔を正面に向けた。向けた先には道路に人が倒れていたり、また痙攣していたり、家から出て来たばっかりで倒れた人たちやマサルを見て絶叫した人たちがいた。マサルは気に留めずひたすら走っていると、渚にとって見たことがある光景に戻った。その光景を見ていると、マサルがスピードを落とし、少しすると完全に止まった。渚はマサルから降りると、そこにあったのは渚の自宅だった。そして、渚は家の鍵をリュックから取り出し、家の鍵を開けて、マサルを連れて中に入った。
家の中に入ると、リビングのテーブルには大量の紙があった。渚は大量の神紙の中から一枚を取ってみてみると、「人間変異菌(オオカミ類)」と大きく書かれた書類だった。文を見ながら写真を見ると、男性の腕に注射器を挿した写真や注射器を挿してから数分後の写真、そして、男性の腕から動物の毛のようなものが生えて、最後にマサルのような姿の写真があった。渚は今まで父親が言っていた職業と父親の本当の職業があまりにも違いすぎて驚いた。
少し時間が経つ頃にはカーテンから見える風景は緑色になっていた。渚は戸惑いながらも外の空気が入らないように工夫しながら自室にマサルと一緒に入った。そして、父親に
「助けて」
とメールを打って送信し、マサルと2人で自分の部屋に篭った。外からは、
「早く逃げろ!」
と周囲に呼びかけている声が聞こえた。渚は出ようかと考えたがどちみちあの緑の煙を体で浴びることがわかるため、2階にある自分の部屋へマサルと一緒に避難した。
自分の部屋に入ると真っ先に医療用のマスクと防護メガネをかけてできるだけ感染対策をして学習椅子に座った。そして、マサルは両足と両手を獣の姿に変えて渚のベットに腰をかけた。マサルは
「お前は自分の父親のところへ行こうとは思わないのか」
と質問した。渚は「うん」と答え、防護メガネ越しに『早く会いたい』という感情が伝わった。
数時間後、辺りは静けさが漂っていた。ヘリの音が聞こえ救助されたと思いながら、渚は自分はこれからどようにしていこうかと考えていた。すると、突然何かを思ったのか、渚は学習机にあるりんごマークのパソコンを開きいて指紋認証でホームに行くと、チャットから大量に通知が来ていた。びっくりしながらチャットを開くと、クラスメートたちが騒然としていた。何人かは自衛隊のヘリで近くの安全な駐屯地に避難しているようだった。しかし、クラスメートの6割がオンラインの状態で先ほどからよくチャットしていたが突然チャットの送信が止まっていた。渚は今の状況を理解しながら、クラスメートたちのほとんどが助かっていなかったことでショックでパソコンを閉じた。そして、椅子から立ち上がってマサルに泣きついた。マサルは突然のことでびっくりしたが、尖った爪がある手で渚の頭を撫でた。
夕日になりかけている時、渚はすでに泣き止み、マスクと防護メガネを外した。そして、冷蔵庫を見に行くために自室のドアを開けた。
ー次話に続くー