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宝花の軌跡 〜目指せ、最強スローライフ〜  作者: 逢坂ひより
病に倒れて異世界転生!?
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第1話 終わりは始まり


趣味でゆっくりと書き始めた小説を、少しずつ投稿していこうと思います。初心者なので、温かい目で見守ってください。


戦闘系の描写が苦手なので、少ないです。

アクティブな物語にはならないと思うので

休憩程度にお楽しみください


 



 小さな機械音が、一定のリズムを刻んでいる。

 カチ、カチ。秒針が揺れ動く度に、聞き慣れた心臓の音がどこからとも無く聞こえてくる。




 ──これは、誰のものなのか?



 考えなくても、その答えは明白だった。



 無機質な部屋の一角に飾られた、ガーベラの花。その花は、暖かな日差しを浴びて静かに佇んでいる。まるで私に訪れる最期を、静かに待っているかの様に。



 ぼんやりと薄れていく意識の中、お母さんが顔を歪めて何かを叫んでいる気がした。



 ──泣かないで、お母さん。



 重く冷え切った唇が、小さく空気を吸った。



 私は病気だった。数百万人に1人の確率で発症する、不治の病。進行すれば歩くことも、1人で動くことも出来なくなる病気。



 その病気のせいで私は、楽しかった学校生活や力を入れていた部活動。その全てから、突然引き離されてしまうことになる。



 自分の運命を、呪わなかった事はない。どうして私なんだろう。何百回もその疑問を神様にぶつけて見たけれど、返事をくれる人なんてどこにもいなかった。



 ──時折お見舞いに来てくれた、同級生。



 誰もが口を揃えて〝絶対に治るよ〟なんて、馬鹿げた事を言う。みんなが帰った後、私は悔しくて何度も泣いていた。



 私には手の届かない、みんなの当たり前の日常が羨ましくて仕方がなかった。



 不治の病と呼ばれるこの病気。



 今の医学では進行を遅らせることは出来ても、完治することは無い。



 3月13日。白い壁に掛けられたシンプルなカレンダーには、赤いマーカーペンで印がつけられている。2日後に控えたその誕生日の印をぼんやりと眺めながら、昔のことを思い出す。



 お母さんは昔からお菓子づくりが得意で、私が元気な時は毎年誕生日ケーキを焼いてくれていた。その可愛らしいデザインのケーキを見て私は喜んで、将来はパティシエになる!!と言ってお母さんを驚かせたこともあったなぁ。



 ……今となっては、遠い昔の夢物語。




 ごめんね、お母さん。今年は誕生日、お母さんと一緒に過ごせそうにないね。




 ゆっくりと、それでいて着実に、意識をどこか違うところへ持っていかれそうになる。



 頬に僅かに伝わる温もり。これはきっと、お母さんの手なんだろう。きっと、最後に受け取る、母親の愛。



 ……死に怯えて泣いた日々も、心を抉られた悲しみも、今となっては意味を成さない。



 視界が、意識が、暗闇に飲まれていく。見えなくなった母の姿を求めても、もう何もかもが遅かった。



 ──お母さん、ごめんね。親不孝者の私を、どうか許して。





 いつになく、体が重たい。


 全てが落ちていくのに、息が軽くなる。


 

 壊れた時計の針が落ちて、綺麗な音色を奏でるんだ。


 死とは、何て冷たい物なんだろう。








 ──必死に留めてきた意識が、突如ふわり。と抱き上げられた様な感覚に陥る。



  驚いて身体を起こす動作をしようとしても、いつになく身体が軽くて上手く動かせなかった。



 気がつけば1人の男性が私を見つめ、微笑んでいる。



 綺麗なツヤのある黒髪は床につく程長く、白く美しい衣装がその黒髪を余計に引き立たせていた。



 だめだ。

 思考がまだぼんやりとしていて、何が起こったのか全くわからない。



 辺りをいくら見渡したって、真っ白な部屋が続いているだけ。全てを知っているであろうこの男性は、いつまでも微笑みを浮かべていた。




「はじめまして。気分はどうだい?」



 凛とした優しい声が、無機質な部屋に広がっていく。その声は紛れも無くこの男性が発した声で、その声音には何とも言い難い安心感がある。



『どうって言われても……何が起きたのか、さっぱり分からなくて』



 ……どうして?



 いつも通りに喋った〝つもり〟だったそれは、空気を震わせることなく終わってしまった。



 目の前に居た彼は、何故だかとても悲しそうな表情を浮かべる。



「突然、驚かせてしまってすまない。君を此処へ呼んだのはこの僕だ。自分の身に、何が起きたのか覚えているかい?」



 彼のその言葉を切っ掛けに、先ほどの情景が脳裏を掠める。



 ……そうか。私、死んだのか。



 苦しみに耐え抜いた病室に似ている様で、似ていない白い部屋。


 勿論泣き崩れていた母親の温もりも、横たわっていたはずの自分の姿さえも、もう遠い物となってしまったのだろう。



『死んだ後にも、世界は続いているんですね』



 世界は続いている。

 残された母親のいる世界も止まる事はなく


 それでいて、死んだはずの私の世界もこうして今、続いている。


 不思議な感覚だった。



「……肉体の終わりが、魂の終わりでは無いからね。肉体が終わりを迎えると、魂は新しい輪廻(りんね)の輪へと還っていく」



輪廻(りんね)……ですか』



 難しい話は、苦手だ。



 でも。今も尚、病気に苦しむ人に教えてあげたい。よくわかんないけど。死は終わりじゃ無いらしいよって。





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