第1-5 雨
その日の帰り、茂光さんを避けるようにして玄関から出ると、外は豪雨が降っていた。
今日は天気予報では晴れ時々曇りと言っていたのに……騙された……。
傘なんて持ってきていないし……どうしようか……。
「えっ、雨降ってる!?」
しかもよりによってここで茂光さんが現れるから最悪だ。
昼休みの時の寂しげな笑顔を思いだし、私は無言で目を逸らす。
「うわぁ……傘持って来てないよぉ……影山さんは持ってきた?」
まぁ、避けても結局声掛けられちゃうんだけど。
私が首を横に振って見せると、茂光さんは「だよねぇ……」と言って肩を落とす。
「影山さんの家ってここからどれくらいの場所にある?」
「えっと、歩いて、ニ十分くらい……」
「ふむ……私の家より遠いな……そうなると……」
顎に手を当てて考え込む茂光さんを軽く無視しつつ、私は降り注ぐ雨粒に目を向けた。
さて、どうしたものか……いや、ほとんど答えは出ているのだけれど。
ひとまずスマホで、姉さんに電話してみよう。まぁ、今の時間帯はバイトか大学に行っている確率は高いが。
無理ならこの雨の中を走って帰るしかないし、そもそもすでにそれしか選択肢は残されていない。
けど、体力が……。
なんてグダグダ考えていた時、バサッと布のようなものが頭の上から被せられる感触があった。
「ん……?」
触ってみるとそれは、私も着用しているブレザーの上着のようだった。
なんでこんなものが、と思っていた時、ブレザーを触っていた手とは逆の手を誰かに握られる感触があった。
「えっと……」
「影山さん、ちょっと走るよ!」
「え、ちょっ……」
困惑するのも束の間、腕を強引に引かれ、私は雨の中に飛び出した。
その瞬間、私に頭から被さっているブレザーに雨粒が当たる音がする。
顔を上げると、ブラウスになり、すでにほとんどずぶ濡れになった茂光さんが私の腕を引いて走っているのが見えた。
「茂光さっ……急に、何を……」
「私の家っ! 影山さんの家よりは近いからっ!」
「えっ!?」
驚く私に彼女は何も答えず、すぐに前を見て速度を上げた。




