第1-1 出会い
透明人間。
それが、影で付けられた、私、影山 泪のあだ名だった。
元々人付き合いは苦手で、特に、女子高生という生物とは、あまり関わり合いにはなりたくない。
姉に相談したところ、「友達なんて無理して作るものでもないでしょう」と言われ、その助言に従った結果見事に孤立した。
「ねぇねぇ、今日転校生来るらしいよ~」
そんな高校二年生になったばかりの朝、教室に入ると、そんな会話が聴こえてきた。
私は足を止め、その会話に聞き入る。
「え、それマジ?」
「マジマジ。ホラ、席が一個増えてるでしょ?」
「あ、ホントだ。どんな子かなぁ」
転校生……ねぇ。
まぁ、私には関係ないけど。どうせ、透明人間ですし。
捻くれながらも生徒達を躱し、どうにか自分の席に辿り着き、私は着席する。
それからしばらく一人で読書をしていると、担任の女教師が教室に入ってきた。
「はい、それじゃあ全員着席~」
その言葉に、生徒達は着席し始める。
全員が着席したのを見て先生はうんうんと頷き、口を開く。
「早速ですが、今日は転校生を紹介します。入って来て」
彼女の言葉が終わるのと同時に、ガラッと扉が開く。
入って来たのは、女子生徒だった。
髪は短くて、ボーイッシュな感じ。顔立ちもどこか中性的というか……って、なんで私は観察しているんだろう……。
そう思いつつ前に立った転校生の顔を見た時だった。彼女と目が合ったのは。
「へ……?」
つい、声が漏れる。
かなり小さな声だったので、他の誰かに聞かれることはなかったと思う。
しかし、私の反応を見た瞬間、彼女の目は微かに細くなり、ほんの僅かに口元に笑みを浮かべた。
やがて、スッとその視線はそらされた。
「……?」
「それでは紹介します。今日から皆さんと一緒にこのクラスで勉強する、茂光 優さんです」
「茂光 優です。今日からよろしくお願いします」
そう言って彼女はお辞儀をして、顔を上げる。
……あれ、また、目が合った……?
不思議に思っていると、教室に拍手が巻き起こる。
釣られるように拍手をしていると、やがてそれは止み、先生によって茂光さんは席を案内される。
彼女が座る席はなんと、私の隣だった。
茂光さんは着席すると、私の方を見てニコッと笑みを浮かべた。
「私、茂光 優」
「あっ……影山 泪……です」
どうにか声を振り絞って私が答えると、茂光さんはさらに嬉しそうな笑顔を浮かべた。
面倒だなぁ、と思うのと同時に、少しだけ胸が熱くなるのを感じた。
「よろしくねっ」
「あ……うん……よろしく」
私がどうにか答えると、彼女は眩しいくらい明るい笑顔を浮かべた。
影で暮らす透明人間の私に、貴方が初めて、光を向けてくれた気がしたんです。




