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6.婚姻可能年齢の引き上げについて

 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正が先日成立しました。これと同時に、女性の婚姻可能年齢を16歳から18歳に引き上げる改正も行われることになりました。男女で2歳の差があったものを揃えるという考え方は合理的ですが、それならなぜ男性の婚姻可能年齢を引き下げて16歳に揃えるということにしなかったのでしょうか。確かに18歳未満で婚姻する人の数は少なく、2016年には1181人だったとのことです。また、大まかな傾向としては年々減少していて、1984年に4000人を少し超えていた頃から4分の1近くまで減ってきています。もっとも、1996年から2001年にかけて、3000人弱から4000人弱まで急激に増加していたりしますから、今後も直線的に減り続けて行くと考えるのは早計でしょう。また、近年の減少の背景には人口減少があって、人口当たりでみるとそこまで急速に減ってはいないのではないかとも考えられます。厚生労働省では少子化に与える影響は小さいとしているようですが、国の将来に大きく影響することに対して、ちょっと軽く考えすぎではないでしょうか。小さいというのなら、減少分に相当する増加策を今すぐ出して見せて欲しいものです。


 婚姻件数は1000件余りですが、同じ2018年に16歳と17歳の母親から生まれた子は2007人だと言います。婚姻件数に比べて多過ぎるようですが、嫡出子は785人ということで、これなら概ね婚姻件数に見合っています。そして、この年齢では結婚できなくなると、この子たちが非嫡出子になってしまうことが問題として指摘されています。あるいは、中絶が増えるのではないかとか、捨てられる子が増えるのではないかとの懸念も指摘されています。現在なら普通に両親の嫡出子として届け出られたものが、非嫡出子として届け出ておいて、あらかじめ父親が認知しておいて母親が18歳になるのを待って婚姻して準正するか、母親が18歳になるのを待って婚姻と認知をして準正しなければならなくなったりもします。父親があらかじめ認知の手続きを取ってくれれば良いのですが、婚姻の手続きの時に一緒にやれば良いと考えた場合、法律上は父子関係が存在しないことになり、子にとって不安定な状態となりますが、婚姻可能年齢が引き上げられると、この不安定な状態に置かれる子が増えて、子にとって不利益になります。2018年には15歳以下の母親から生まれた子が189人いますが、この子たちは不安定な期間がより長くなることになるわけです。それから、認知すれば法律上の父子関係は成立しますが、やはり両親の婚姻関係が存在しない状態では子にとって不安定な状態であることに変わりはありませんから、子の福祉の観点から、婚姻年齢の引き上げにはデメリットしかありません。

 また、16歳と17歳の母親から生まれた第2子、第3子が合せて90人いて、そのうち嫡出子は55人います。少ないといえば少ないですが、家族のありようはそれぞれで、このような子たちに婚姻した両親がいるというある意味普通の状態を、法律で禁止するというのはいかがなものでしょうか。

 ちなみに、資料によれば15歳の母親から生まれた嫡出子が2人いることになっています。これはどういうことなのでしょうか。生まれた時に母親は15歳だったけれど、2016年中に16歳になって婚姻して嫡出子に変わったということでしょうか。もちろんこの子たちも、あと2年間非嫡出子として放置されることになります。


 現行では、未成年の場合婚姻には父母の同意が必要となっています。まだ社会的知識に乏しかったり、生活能力が必ずしも十分でなかったりする未成年の場合に、父母の同意が必要というのは、その後の健全な生活を営む上で妥当性があると思います。一方、今回の改正で成人年齢が引き下げられた上で婚姻年齢が引き上げられるため、父母の同意が必要なケースがなくなります。本当にそれでいいんでしょうか。軽率な婚姻で破綻するケースが増えたりしないでしょうか。16、17歳の婚姻を禁止するメリットと、18、19歳の婚姻に父母の同意が必要なくなるデメリットを比べると、デメリットの方が大きそうだと思うのは私だけではないはずです。


 そもそも、人数の多少とか、少子化とかには関係なく、義務教育が終われば後は進学するも就職するも個人の自由なわけですから、就職して社会人になった人に対して婚姻を禁止するのはいかがなものでしょうか。若くして社会に出た人には、人並みに家庭を持つことは法律で禁止しなければならない程許されないことなのでしょうか。例えば、義務教育が終わったら家業を継ぐというような場合では、可能ならむしろ早めに家庭を持った方が生活が安定するのではないでしょうか。社会は個人の自由を尊重する方向に発展して来ているのに、数が少ないというだけで殊更に自由を禁圧するという行為は、反社会的との誹りを免れられないのではないでしょうか。


 もう改正が成立してしまいましたから今からどうにかすることはできないかもしれません。ただ検討過程の報告書を見ると、検討の過程で高校生の意見を聞いているようですが、それはおかしいでしょう。むしろ成人年齢引き下げについては18、19歳の社会に出ている人たち、婚姻年齢引き上げについては16、17歳の婚姻している人たちや社会に出ている人たちの意見を聞くべきでしょう。そうでないと当事者性が薄く、現実的な問題が浮き彫りにならないのではないでしょうか。何だか議論の過程も含めて、色々おかしいように思います。


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