表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

5.国会議員定数の不均衡

 1票の重さという言われ方をすることも多くありますが、国会議員定数一人あたりの有権者数に選挙区によって大きな格差があることは久しく問題視されていて、違憲判決も繰り返し出されています。しかし、違憲判決が繰り返されていることからもわかる通り、抜本的な改善はなされないままです。制度の違いから参議院で格差が大きくなっていて、2016年の参議院議員選挙では、二つの県を一つの選挙区に併合するという画期的な制度変更があったにもかかわらず、なお3.08倍の格差がありました。議員一人当たりの有権者数が一番少なかったのは福井県選挙区で、329,667人、逆に多かったのは埼玉県選挙区で、1,015,591人でした。これだけの格差があっても、抜本的な改善をしようという動きは見られません。


 ではここで逆に考えて、およそ3倍の格差までは制度上許容されるとして見ましょう。すると、現在最多の埼玉県選挙区の、さらに3倍までは許容されると考えることができます。上に書いた通り、埼玉県選挙区の議員一人当たりの有権者数は1,015,591人ですから、この3倍の3,046,773人までは許容範囲となります。

 では、この基準を適用したらどうなるでしょう。選挙区当たりの最低の定数は参議院の場合2人ですから、有権者数6,093,547人に2人の定数を割り振れば良いことになります。一番少ない福井県選挙区の有権者数は、この数字には遠く及びませんので、周辺の選挙区を合区してみます。すると、福井、石川、富山、新潟、長野を合計して、有権者数が6,270,832人になります。ちょっと基準をオーバーしていますが、格差は3.09倍ですからまあ許容範囲でしょう。つまり、この5県を併合して一つの選挙区として、定数2を割り振ることにしても構わないということです。現在この5選挙区の合計定数は10ですから、定数を8削減することになります。

 他の選挙区ではどうでしょう。有権者数が少なくて合区されることになった、鳥取、島根について見てみましょう。鳥取・島根選挙区の有権者数は565,893人ですから、周辺の選挙区を合区します。すると、鳥取、島根、岡山、広島、山口を合計すると、有権者数が6,241,907人になります。これで格差は3.07倍です。現在の合計定数は10ですから、こちらも定数8減です。


 埼玉県選挙区の定数は6ですが、上記の定数配分、5県合わせて定数2としても数字上は許容範囲内ということになります。でも、上記のような定数変更を提案した場合、現状同じ格差を容認しているにもかかわらず、賛成する人は誰もいないのではないでしょうか。つまりは、それ程現在の状況は異常だということです。誰も許容できないほど異常な状態を放置しているということです。違憲判決が出るわけですね。次あたり選挙無効の判決が出てもおかしくありません。もし選挙無効になったら、その議員が関わって成立した全ての法律や予算が無効になるかもしれませんから、その影響は計り知れません。



 ただ、国会議員を有権者数ないしは人口に比例して決めなければならないという法律はありませし、国際的に見れば有権者数比例ではない制度を取っている国は少なくありません。それに、国家は国民と国土によって形成されていますから、国土の事を無視して良いのかという考えもあります。そもそも、衆議院と参議院がほとんど同じ選挙制度で議員を選出していたら、二院制を取っている意味合いが曖昧になります。そこでここはひとつ、衆議院は人口比例、参議院は国土面積比例で選出するというのはどうでしょう。

 2012年とちょっと古いデータですが、参議院の選挙区の合計定数が146で、議員一人当たりの面積は2,554平方キロメートルになるということです。そうすると、およそ5,000平方キロメートルごとに定数2を割り振ることになります。

 一番狭い香川県の面積は1,876平方キロメートルですから、合区しないといけませんね。5,000平方キロメートル未満の県は19都府県あります。格差2倍までは許容するとして、2,500平方キロメートルあれば定数2を割り振るとしても、佐賀、神奈川、沖縄、東京、大阪、香川は面積が足りません。10,000平方キロメートルを超えて、定数4以上を割り振れるのは北海道、岩手、福島、長野、新潟、秋田、岐阜の7道県に過ぎません。岩手県は15,000平方キロメートルを超えて定数6、北海道は78,420平方キロメートルありますから、定数30になります。

 ただ、考慮するのは土地の面積だけでいいでしょうか。領海も国土の重要な一部です。むしろ、広い領海を擁する離島は面積が狭い割に課題が多く、排他的経済水域の起点にもなりますから経済的価値もあって、重視すべきかもしれません。まあ、土地と同じ扱いにすると領海のウェイトが大きくなり過ぎますから、領海面積の1/10を土地の面積と合算するとかでもいいかもしれません。そうすると、離島の多い長崎、鹿児島、沖縄、東京などは定数が跳ね上がるかもしれませんね。一方、内陸県は不利になりますね。もっとも内陸県は、海岸線の管理も、離島や領海、排他的経済水域の管理もないので圧倒的に課題が少なく、多くの議員は必要ないとも言えるかもしれません。


 単純に国土と領海の面積を合算して面積比で割り振るのではなく、定数を半分に分けて、国土比例分と領海比例分に分けて割り振るという手も考えられますね。この場合内陸県の領海比例分の定数は0でいいでしょう。面積格差が大き過ぎて調整が難しければ、県単位ではなく地方単位で選挙区を構成するという方法も考えられます。まあ、これらはあくまで一例ですが、人口比だけにとらわれないで、色々な方法を考えてみることも必要ではないでしょうか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ