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4.奨学金の拡充は悪い話ではないのだが……

 奨学金制度が拡充され、近く給付型奨学金も拡充される方向に進んでいます。経済的事情で高等教育を受けられない人が減ることは悪いことではありませんから、本来なら喜ぶべきことなのでしょうけれど、実際には問題含みとなっています。


 そもそも、給付型奨学金の拡充の原動力となったのが、経済的事情で高等教育を受けられない人を救済するということではなく、貸与型奨学金を返済不能になる人や、そのために自己破産に至る人が増えているということだというのは感心しません。元々、病気や失業で一時的に返済困難になった場合は、最大10年間の返済猶予が受けられますので、ここで言う返済不能は突発的事態によって返済できなくなったケースではないということです。言ってしまえば最初から返済の事を深く考えずに、借り過ぎてしまったケースが少なくないということです。これを国費で救済するというのはどう考えても正当性が認められません。そもそも借りた資金は、大学に行くことを我慢して、高卒で就職して働いている人が納めた税金も資金源の一部になっているわけですから、そういう方々は、奨学金の資金を出して、無償化の資金を出してと二重に負担した上に、当人自身には何の恩恵もないのですから、ずいぶん失礼な話です。


 日本学生支援機構は大学別の延滞率を公表していますが、延滞率の高い大学を見て驚くのは、そのほとんどが私立の大学だということです。奨学金を利用しなければならない経済状態なら、少しでも学費の安い学校を選ぶのが普通で、そもそもそういう人が比較的安い学費で学べるように、国公立の大学が設置されているわけです。国公立の学費もずいぶん値上がりして、昔ほどの私立との差はなくなりましたが、それでもまだまだ多くの私立の学校より国公立の学校の方が安い学費で済むようになっています。また、国公立の大学なら、大抵は学費の減免の制度があって、制度適用の基準は基本的に所得が少ないことですから、経済的に厳しい場合は減免を受けられるようになっています。また、学生寮のある大学では、入寮基準も所得が少ないことになっている場合が多いので、学校が遠くて通うのが困難な場合も、比較的少ない生活費で学生生活を送れるようになっています。だから、元々経済的に厳しい場合はそういった制度を利用して、多額の奨学金を借りなくても済むようにすれば良いはずです。それなのに高額の費用を要する私立の学校を選んで、多額の奨学金を借りて、それで返済できなくなるというのは基本的に考え方が間違っているのではないでしょうか。中には他のどこでも行っていないような独自の専門教育を行っていて、どうしてもその学校でなければならないというケースもあるでしょうけれど。


 他に、夜学という手もありますね。昔から、経済的に進学が厳しい人は、昼間は仕事をして、夜間に学校に通うという方法を取ってきています。昔に比べると夜学は少なくなりましたが、別になくなったわけではないので、必要なら積極的に利用すれば良いわけです。夜学に通うのが難しければ、通信制という手もあります。まあ、通信制の場合スクーリングが必要なので、仕事と折り合いがつくかという問題はありますけれど。


 先行して行われた高校無償化からして問題が大きかったと思います。元々公立高校には経済的に厳しい場合には授業料を減免する制度がありましたし、高校にも働きながら学べる夜間高校がありました。でもそれ以上に問題だと思ったのは、通える距離に高校がないため、仕方なく進学をあきらめて就職した人が働いて得た収入から収めた税金が、近隣に高校があって通える恵まれた人への補助に充てられるという不公平があることです。だから高校無償化を実施しようとするのならば、その前に進学を希望する全ての生徒が進学できるように、全国に高校を新設してから実施しなければいけなかったと思います。


 そのような不公平な制度に予算を投入するよりは、小中学校の無償化の方が先ではないでしょうか。もちろん小中学校には授業料は必要ありませんし、教科書も無償です。でも、実際にはその他の費用がいろいろかかります。収入の少ない家庭には、就学援助制度があって広範に補助金が出ますから、一応は困らないようにはなっていますが、手続きが煩雑だったり、一旦自費で購入して領収書と引き換えに補助を受ける制度になっていたり、対象に該当していてもそれに気付かないなどで申請しないと受けられなかったりと、使いにくい面もあります。また、学校側の事務負担も結構あって、教員が行いますからその分肝腎の教育が手薄になったりします。また、前年度の所得が基準になるために、自宅を売却して新しい家を購入した場合に、売却損が出て合計所得が減ると補助が受けられるという、周囲からすると納得がいかないケースがあったりもします。これを全額無償化してしまえば、煩雑な手続きは不要になり、抜け漏れが出ることもなく、変な不公平感を生むこともなく、学校の事務負担も軽減されて良いことづくめです。何より小中学校なら全員がもれなく対象になりますから、変な不公平が生じる気遣いはありません。教育の無償化をするのなら、まずこれではないでしょうか。


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