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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
序章
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Chapter0-2ーchapter end


赤い空を上空に、しなびれた大地にそびえ立つ白亜の城が瞬時に瓦礫と化した。


そして、同時に飛び出す二つの影は激突するたび、乾いた音を立てて互いに火花を散らしてぶつかり合う。


「はあああァァァァーーーーーーーーー!!!」

「おおおおおおおおーーーーー!!!」


一方はロングソード、一方は双剣。


ロングソードを持つ人物は金麦を思わせる髪を持ち、十字に太陽と二本の剣を交差させる紋章をつけた白いマントが特徴だ。鎧も青みのある白で、装飾として金色のラインがある。そして、齢19にして剣聖の称号を持つ。


名は、アーサー・ディアス・カリブルヌス。


双剣を持つ男は褐色の肌に真紅の双眸を持ち、赤みのある茶髪とよく蓄えられた顎髭、黒い外套と肩当てと脚絆を身につけている。


古い時代より、人の世を律するため原初が生み出した人の大敵。

自ら魔なる王を名乗り、今の世に現れた。


人から、同胞より、魔王アレクサンドル・ラティス・アルシャイン。


民族問題、宗教、権力、資源、戦争となる火種はこの両者が関わるものすべて持っていた。


「アぁーーサァァァァァァァーーーー!!!」

聖浄篝火グロウ・ファイア!!」


黒い疾風になって双剣を振るう。それに距離を取りながら、神より与えられた加護の属性である聖属性魔法で弾幕を広げる。


手数で勝る双剣で懐に潜り込まれると厄介であると理解しているアーサーは魔法で弾幕を張ることで目くらましにし一太刀入れる、ヒットアンドアウェイを繰り返す。


「その程度か!!剣聖!!!余とて魔法が出来ぬということはない!!」

「そういうわけにはいかないなっ!!せいやっ!!」


交差すると同時に互いに魔法をぶつけ合う。


聖光天戟ホーリースプライトッッッッ!」


ゲイル闇黒震天衝インパクトッッッ!」


光と闇の奔流は互いに相殺し二人を吹き飛ばしてしまう。そして二人は互いを見据える。


そして、間髪入れずに剣と剣を交差させ、ある時は蹴り飛ばし、投げ返した。


「頑丈だな、魔王。それとも、人に近しい魔物だから、かな?」

「何が言いたい、言いたいことがあるならばいうが良かろう?」


「いやいや、ただの賞賛だよ。でもそろそろ決着をつける頃合いだと思わないかい?君の肩鎧ひび割れているよ?」


そっと、肩鎧に手を当てると金属特有の光沢と手触りにひび割れたような感触が。


「…………っ!なるほどな、余は決着をつけねばいずれ倒れる、と。」



"おもしろい、その挑発乗った"!!そういった顔をする。


剣から黒い魔力が放出され夜空の黒を思わせるエネルギーと化す。そしてそのまま突進。

それは漆黒の翼。魔力はアレクサンドルの全身を包み周囲の空間を捻じ曲げながらアーサーへ接近する。


「死ね、アーサー!!死歌黒翼ディバイドクラス・12連!!!」


12に渡る連撃の嵐にアーサーはニヤリと笑う。

手に持つ聖剣が唸りを上げる。

この自分が天より与えられし剣に負けはない、そう言い聞かし、そうであり続けた。


「天聖剣ヴァーレーハよ、雷光の光を!!」

極光が放たれる。しかしーー


「カアアアーー!!!」


漆黒の翼となった魔王アレクサンドルが斬り払い続け無理やり突破する!!


「取った!!」


確信した、しかしここまで接近されているのにその余裕はなんだ?その笑みの意味は?


「いいや、とった、のはこちらでね。」


なにを、と言う前に背中と踵に鈍い痛みが。横目で見れば鏃が刺さっている。だが、たかだか弓矢の鏃ごときでこのアレクサンドルを討ち取れるはずないと思っていたのだが………


「ガッ!?これは、毒、か?だが、余は吸血鬼だぞ、毒なぞ効くはずがない……!」

「天より賜れし神の毒だ。そしてーー!!」


動きが鈍ったところへ天聖剣の切っ先がアレクサンドルの胴を貫いた。


「この毒はな、魔力の暴走を引き起こすのさ!!」


剣を引き抜き間合いから離れる。すると、魔王の身体中からおびただしい血が吹き出して、大きく吐血し倒れる。


「やはりあんたは化け物だよ、流石は吸血鬼ヴァンパイアだ。普通ならもう死んでるんだがな、魔王というだけある。」

「余を、このアレクサンドルを舐めるなよ、例え肉体が死すとも魂は消えぬわッ!」


血が流れ出ているというのに無理やり立ち上がろうとし、叫ぶ魔王。しかし何処吹く風のように耳に入らない。

アーサーは剣を上段に構えて魔王アレクサンドルを見下ろす。

「だから、これで終わりにしてやる。」



「く、無念。ナーシャよ、どうか逃げてくれ…………」


それが、魔王アレクサンドルの覚えていることの最後だった。



●●●



「奥様、急いでください!!」

「ヴァーン、忙してはダメよ、お体に障るわ。」


激戦となる戦場とは別で、海岸へ向かう一行がいた。ひとりの女性に対して、使用人だろうか、いや従者を引き連れてまるで逃げるように移動していた。


「この先を越えればひとまず大丈夫です。急ぎましょう。」


「ええ、わかっています。でもすこしきついわ。ペースを落としましょう。」


エルフやオーガなどの従者達を引き連れた女性。銀色の髪をストレートにした美女で頭にティアラをつけている。

名をナターシャ・アルベインといい親しい者にはナーシャと呼ばれている。アレクサンドルの妻でもある。剣聖アーサー襲撃の三日前に夫から避難するよう指示され今にいたる。


「でも無事に出られたとしてもどこに向かうかが問題ですね。」


ナターシャは考えを走らせる。


「そうですね、身重の身ですし・・とりあえずは・・・!?敵襲、追っ手です!」


突如として無数の矢が雨あられと降り注いでくる。


「バカな、もう追ってきただとッ!早すぎるッ!」


「あれは……!大魔法使いズオー!!私たちが足止めしますッ!アステル、奥様をッ」


「(もう追ってきたということは、アレクは・・・・)」


魔王アレクサンドルがどうなったのかがわかってしまう。

しかし悲観することは今この場において許されない。

アステルと呼ばれた従者に促され彼女と従者アステルはこの地”パンドラ”を後にした。


この魔族と定義された者たちと神聖国との戦いはパンドラ戦役と呼ばれ魔王の敗北とともに戦いはひとまず終わりを告げた。


そしてーー、15年の月日が流れる。


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