アバンタイトル
ーー はじめに世界は何もなかった ーー
世界は霧に覆われ
湿っても乾いてもいなかった
風も吹かず、熱さも冷たくもなく
宇宙さえ生まれていない虚空とも言える無の世界
そこで最初のものが生まれた。
ーー それが目を覚ますと霧は雲に変わった ーー
最初のものが目を覚ますと霧は晴れ、雲となった
また目覚めた時の光が光と影を生み出し、暑さと冷たさ、熱を齎した
自身の出した光と熱で自らの立つ灰色の地を溶かし、練り固め、最初の大地を生み出した。
最初のものは自らの存在を十二に割り各々に役割を与えた。
次に自らの血と肉を使い、役割を与えた存在を補佐するものを作った。
十二の存在は地上に意味を吹き込むこと、補佐するものはそれを管理することを命じた
最初のものはそれを見届けると星の玉座に留まり、命の模索に繰り出した。
ーー そして ーー
これはまだ文明の火が起こる直後、黎明の暁の何処か。
煌々と煌めく光の空間に、声が響く。
「貴方には、唯一神の座を降りていただく。抵抗はしないでもらおうか。」
ーーアマデウス、これはどういうことでしょうか。
「なに、簡単なことです。これからは人が世を統べる。ならば、原初の宇宙はもういらないのです。」
ジャラジャラと鎖が声を縛り上げていく。赤い、赤錆の鎖は巻きつくと声は形を取り始める。
う、と呻きながらさしたる抵抗はしない声の主は女性、すなわち女神であった。
同じように、12ある光の玉も赤錆の鎖により縛られていく。
ゴポゴポ………と鎖に縛られた女神は世界の底へ沈められた。二度と世に生まれることなく。
「安心為されよ、貴方の子供らは人の世により、悪の象徴として祭り上げられ、貴方は邪神として終生語られることでしょう。」
「貴方は死なない、滅びない。世界を創る力はあの夜に終わったのです。しかし、我らでは世界は作れない。貴方でなければなし得ない。ならば、存分に利用させてもらうまで」
「12の造神も世のどこかに悪魔神として封じさせてもらいます。人を生み出した私にとって邪魔ですから。ですが、この世に概念を植え付け、世を廻した我らが同胞。この世の楔となっていただく」
瞳が沈みゆく中で最後に見たのはせせら笑う光である。そして、自身の声を聞いてくれる御子達を最後まで案じていた。
「さようなら、最初の意思、最初の母体、リリスよ。」
どうか微睡の中で、泡沫の夢を。我らがそれを繋ぎ止める。
ーー子等よ、どうか……
ゴポポ…………
深遠なる底へ泡立てながら、彼女は沈んでいった。
世界のどこかで、人がその足で立ち上がる時、一つの神が、神に引導を渡したのだった。
女神は思う。人が世を統べるのは否定はしない。彼らは、自分の意思で、自分の足で立って歩ける。
けど、人の欠点も忘れてはいないだろうか。
私はーーここで、眠る。けれどもし、この世界を死に近づけるならば、道を間違えすぎたらならば。
生み出した我が子、概念たる造神よ。悪魔神の烙印を押されたものよ、人を律する存在を生み出しなさい。
それらを束ねる仔を我が最後の子にします。我が血を甘酒に、我が肉体をパンにしてただ唯一の魔の王を。
私はここで、深遠の底から見守りましょう。もう、母体はいらない、必要なき神格は世界の裏側で。
神の権威を表す三種の神器、【星の玉座】は彼の元へ。星を管理する【星海の王杖】は既にこの星界にはなく。
そして、何万年とすぎて。
私の手に一つの迷い込んだ魂。遥か遠い、まさしく生まれ変わる宇宙の星から遡った一つの強い魂。
いまや、世界は人は増えすぎて、私の子供達と眷属は死に絶える寸前、生態系は崩れかけている。創生を担ったものとして、我が独断であるがこの魂よ、どうか、世界を私が望んでいたあるべき姿に。
いいえ、いいえ。
もう、戦いは終わらせなければ。
架け橋となることを、希望の子として。
人だけではなく、自然と私たちの子と手を結べるようにお願いします。
始まりの女神は、一つの魂を生まれてくる肉体に埋め込み遠い遠い未来の世に送り出した。
自身に残された最後の権能、【深遠の粘土板】を埋め込んで。
ーープロローグ。
描き直しを投稿しました。なるべく早めに投下したい所存です。




