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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第二章 動乱の帝国 ベル・クラウディア
134/177

chapter 5-6

お待たせしました。今の所、週ごとに更新できてて良き……。



 エストレアは自身の感じた心配は的中した。ナッシュに先導され、辿り着いた先でそれはいた。


「ヌッハハハハハハハっっっ!!!ナッシュ、出迎えご苦労!そして久しいな、歓迎しようクローディン!!」


「む、見慣れない奴が何人かいるな。では名乗るのが筋であろう!!!妾こそ、ファンテリム帝国第6皇女、アンネリーベ・フォン・シュヴァルト・ド・ファンテミヌスであーる!」


 うるさい。鼓膜が敗れるんじゃないか、というくらいの大音量。


 流れるような銀髪に、うなじから覗く透き通るような白い肌。フリルをつけて改造したカーキ色の軍服を纏う少女が、城門の上に仁王立ち。


 その顔も幼さも相まってとても可愛らしい。……ガーゼの眼帯も痛々しさをを瞑れば、ファッションだと言えるだろう。自分はしたくはないが。


 おまけに自分でライスシャワー、もとい麦の種子を撒き散らし、口元に薔薇を咥えて、ジョジョ立ちみたいな決めポーズをする自称皇女。正直言って危ないのでやめてほしいと思った。


「こぉら!誰が自称だ!誰が!」


 自称皇女は、エストレアの心の声に対して、そう抗議しつつ、「とう!」といつ掛け声と共に飛び降りた。危ない!と思った時には彼女が首にかけている懐中時計が光を放つとふわり、と緩やかに着地を決めた。


(あれがこっちの帝国の魔道具か)


 エストレアは感心したように魔道具の力を見ていた。だが着地を含め、その仕草も一つ一つ大袈裟にやるものだから、エストレアはツッコミが追いつかない。いや、ツッコミが不在というべきか。


「ヌゥ……何故こんなにも反応がよろしくないのだ?」


 多分、呆気に取られているか、または脳が理解を拒んでいるだけだと思いたい。


 とはいえ、だ。彼女の痛々しいアクションは横に置いておいて。


「なんだか親近感が沸きますわね」


「ジェシカ、頼むから今は喋るな。……胃がもたん」


 ジェシカの暢気なコメントに、エストレアはこめかみを揉みながら答えた。


「む、そこの者!妙に既視感があると思えば、シェートリンドのエストレア嬢ではないか!ドレスを着ていないから一瞬誰かかわからなかったぞ!」


 不意にアンネリーベがこちらに視線を寄越してそう言った。だが、かつて養父と共にこの国に来た時、会ったことがないため、自分と彼女とでは面識は無かったはず。


 その考えを読み取ったのか、アンネリーベは答える。


「何、妾はまだ幼かった故な。面識が思い出せぬのは仕方あるまいて」


「だがな、何があったかは分からぬが。真の貴人というものは見るだけで分かるもの。如何に身分を落とそうと、落ちぶれようともその気質は決して色褪せることはない」


「して、ナッシュよ。妾を案内せよ!こちら側に赴任したはいいが、手荷物やら何やら一切持たずに言われるままきたのでな!」


「何やってんだぁあぁ、あんたはぁぁぁぁ!!!???」


 ナッシュは絶叫した。こちら側に皇女が赴任してきたという事は今回の戦争と無関係……ではないかもしれないが。


 この街を任されていた前任の者が戦争と聞き、一切合切を持ち出したためにほとんど残っていない。そこに彼女がやって来たわけだが……、彼女があの性格ならば、体のいい厄介払いをされた可能性が高い。


「おまけに自分の荷物もいつのまにか無くなっておってな、何分無一文である!」


「本当に何してんの、アンタはッッッ!?!?」


「ヌハハッ!!そう褒めるでない!!」


 褒めてねぇよ!?と、ナッシュはツッコミをいれる。彼自慢の毒舌が出ず、ツッコミ担当に回っている。


「まあよい。では、妾はここで失礼する!ではまた会おうぞ!ナッシュよ、妾の部屋へ行くぞ!」


「ちょ、待てっ、引っ張るな……おわああああー!??」


 アンネリーベはナッシュの首元を引きずって城へ颯爽と去っていった。それに引きづられながら助けを求められたが、エストレアは無視した。お腹いっぱいである。きゅっぷい。


「何だったんですの……あれ」


「まあ、なんだ。あれがアンネリーベっていう皇女だ。……悪い奴ではない、宮殿では相当のじゃじゃ馬かつ破天荒娘だと言われるがな」


 クローディンがそう答えた。


「ついでに言えば、あいつは戦争反対派だ。んで、あの忙しない性格だからな。戦争ということで、元老院からこれ幸いと厄介払いされたってのが、俺の予想だ」


「まあ、私たちがどうこうできるものではないがな」


「「「はぁ……」」」


 イルナとイザルナを除く3人は揃ってため息をついた。


 だが、5人がこうして一箇所に留まっていると人目を集めてしまう。それにここはニカーイアの領主の家の前なため、先程のナッシュとクローディンがメンチを斬り合っていた時以上に人が集まってきている。


 本来なら衛兵とかがいるのだが、この街の兵士たちはやる気がない。昼間から酒を飲んでいる連中だ、配置させたとしても窃盗とか働きかねないのが目に見えている。


「とりあえず、中に入るぞ。ここで立ち往生していても、仕方ない」


 エストレアの一言に全員が頷き、城内へと入っていった。




◆◇◆◇



「さて、と」


5人が城の中に入り、応接間に通された。そして各々が席に着いたところで、既に待機していたアンナリーベとナッシュは話を始めた。


「では、早速ではあるが本題に入ろう」


 アンナリーベがそう言うと、ナッシュは黒塗りのお盆に載せられた羊皮紙の書類を取り出しテーブルの上に置いた。


「こいつは?」


「無論、外交官として来国したクローディン、お主宛に送られた元老院からの書簡である」


 妾は中を見ておらぬからな、と付け加えた。


「なんでだよ……。普通こういうのは元老の1人寄越せよな……。まぁ、いいか。読むか」


 クローディンは書類を手に取った。彼は読み進めていくうちに、眉間に皺が寄っていく。本来、政治家というものは表情を出さないのが普通だが、それが得意そうなクローディンがこのような顔をするのは余程のことなのだろう。


「……はぁーーーー(クソデカ溜息)。話にならん。マジで話にならん。なに、舐めてんの?この国。反政府勢力を出したうちに帝国固有地である穀倉地帯の管理は任せられないから即刻返還しろ?なんなら皇太公自ら自刃して何十年間国を割った責任取れ?色々言いたいが、おいどういうことだコラ?」


 クローディンはドスの効いた声でアンナリーベに問いかけた。アンナリーベは額から冷や汗をかきながら、目を逸らしている。青ざめているところを見ると、怖いというべきか。


「まあ、百歩譲ってその責任についてはいいとするよ?俺が言いたいのはだな……、」


 一拍おいて、ハッキリと言い放つ。


「なんで戦争に至ったのか、訳を聞かせろよ!名分があっての戦争だろ!?書いてあるの、ほぼ終戦後の要望じゃねえか!?」


 そう叫ぶや否やクローディンは天井に向かって苛立ちを吐き出すように叫ぶ。


「し、仕方なかろ?妾はここに赴任しろと言われた序でにこれを渡せとしか言われておらんのじゃ。というより、その文面と顔では碌なことしか書いてなかったか」


「マジかよ、姫さん厄介払いかよ!あぁ、そうだよクソッタレ!これじゃ外交もクソもねぇ!門前払いもいいところだ!この国のトップは頭腐ってんのか!?」


「腐ってますよ?なんなら腐り具合なら貴方たちの方がまだマシレベルですよ」 


 ナッシュがそう漏らした。その一言に全員が呆気にとられる中、ナッシュは続けて語る。


「二つの国の経済状況が破局を迎えつつあるのはご存知の通り。なので、お互い他国から借金しているわけですが……うちの国は何処から借金していて、何を持って返済していると思います?」


 嫌な予感がする。それも特大の地雷の気配。


「ニース派じゃねえのか?あそこは商人の集まりだろ?経済という意味じゃ一番……」


 エストレアも考える。今回の戦争の大元の原因はニース派だと思っているからだ。


 だが、実際は違う。そんな気が今更ながら感じてきている。


「半分は正解ですよ。ですけど、その資金の出所をご存知でない?」


「……まさか、ペルア共和国か?お前らの国はあの国と貿易してたよな?」


「えぇ、貿易してますよ。『労働力』と引き換えに食料を中心に。……おわかりですか?」


「おい、ちょっとまて。ということはあれか?まさかだと思うが、『国民の人権』を担保に、借金をしてんのかよ!?」


クローディンの一言に、エストレアたちは絶句した。




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