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紅の姫は紅煌たる覇道を血で染める  作者: ネコ中佐
第1章 目覚めの王国
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Chapter1-2




「楽しんでますか、戦乙女殿?ああ、臣下の礼はしないでください。今は1人の祝誕される人間ですから。」


「楽しんではいます。でも、戦乙女と呼ばないで普通に家名か名で呼んでくださいませんか?殿下。」

「失礼、でも会えて良かった。今日はこれで飲みませんか?帝国から手に入れた一品物のワインですよ。」



同じ歳の子息たちと談笑していたエストレアは不意に声をかけられて振り向くと国王陛下に比べれば豪華絢爛ではないが整えられた衣装を着た御仁が1人。


子息たちはすぐさま臣下の礼を取り、エストレアも倣う、が彼が待ったをかけたのでそのままだった。

この方こそシェートリンド王国王太子こと“ジェラルド・アウラ・バン・シェートリンド”。


「お姉様、では私達はここで失礼致しますわ。」

「ああ。」


エストレアを慕う貴族の令嬢は空気を読んでそそくさと離れる。カーテシーして礼をするあたり教養が届いている、ということだろうか。


「仲がいいんですね。羨ましい。」

「殿下には心を許せる方はおられないのですか?」


「う、それを言われると……。皆、讃えるばかりで何も実にならないのですよ。神輿にされるとまた、面倒臭いですし。」


グサっと刺さるエストレアの言葉に苦笑し、それに……と付け加える。


「昔の私がやらかしたことを思い出せば心を許せる御仁が少ないのです。貴方とか………。」

「なるほど、昔、といっても5、6年前の話ですね。王族の傘を着て好き勝手ヤンチャしていた頃の殿下でしょう?」


「あはは、今はかなり丸くなりまして……。王太子として覚えることがいっぱいですよ。」


そう、あれは私が名誉称号である『戦乙女』を授与される前宮殿、クワイエット家を震撼する出来事をやらかした。


何をしたかというとーー


『ジェラルド殿下?こちらを向いてください。』


私は王族であることをいいことに権力を振りかざして子爵らの子息を取り巻きにして王都の民草を困らせ宮殿でも手を焼いていた幼い殿下を呼び止めた。


その時、殿下は男爵家の女の子からブローチを取ろうとしていて思わず、声をかけざるを得なかった。

無論、公爵家だからとりあえずは話を聞いてやろうな感じだったのだろう。なんの警戒もなく振り向いた殿下に対してーー


『あ?クワイエット家のーーブェウァば!?』

その顔に右ストレートを叩き込んだのだ。殴られた殿下はかなり吹き飛び、大きくバウンドして4、5メートルで止まった。


何が起きたのか、一瞬だけ静まり返り、そして悲鳴があがる。

次に来るのは不敬だの、近衛を呼べだの、なんだのとパニックに陥った。

殴られた殿下は既に泡を吹いて気絶しており、使用人が介抱している。


そして、騒ぎが収まる頃合いを見て一家揃って呼び出され殿下と対面することになった。

事情を話し合ううち、どちらも悪い、ということで両成敗という形になった。これが隣国の帝国なら既に首を刎ねられても文句は言えない。







「懐かしいですね、今もってなんと恥ずべき事を繰り返していたのか、と。」


「あの時に比べれば今は素敵ですよ、いかにも貴公子って感じで。」



ワイン片手に、語り合う。

窓からは大きな満月、スーパームーンが輝いていた。



●●●




「よぉう、アーノルド!元気かぁ?」


ワインを片手にいろんな肴に舌鼓をうっていたアーノルドは声がかかった方に向き直り、そして戦慄した。


これでもかと乗せられた”肉”料理の数々。見ただけで胃もたれを起こしそうになるのを堪え目の前の人物に声をかけた。


「将軍アイアノス殿、貴方という人は………。今日の主役は彼らですよ、あなたはこの国の将軍なんですから・・。」

「ガハハ、細けえことは気にすんな、老けるぜ?」


さらっと失礼なことを抜かしたこの男は”リーレイド・オヒュカス・アイアノス”といい、シェートリンド王国の軍事統括を任されている男である。軍事に貢献したアーノルドとは昔からの腐れ縁だったりする。


 「しかしまあ俺たちが15年前に保護した赤ん坊があんなに綺麗になるとはなあ・・、時間はあっという間だ。なあ?」


「そうだな、だが俺にとってあの子は我が娘同然だ。半端な奴に嫁にやらんよ。」

「親バカだな、お前も。まあ、気持ちは分かるがな。」



子に恵まれなかったアーノルドにとってエストレアは大切な存在だった。あの日、15年前に領内視察にアイアノスと一緒に行った際、見ず知らずの瀕死の深手を負った女性とその従者から女子の赤ん坊を託されたのだ。「娘を頼みます。」と。

その後、領内の医者に見せたが、既に手遅れで、従者の方も既に事切れていた。


当初は素性がどうのこうのと騒ぎがあったが当主権限を使い強引に認めさせたのだ。

(素性とか関係ないからな、大切な家族だから・・。)

それに、嫁にください、と言われてもやるつもりはない、いった奴はいっそこの手で……



これがアーノルドのいまも変わらぬ決意であった。




 アーノルドとアイアノスが話しているところに近づく人物がいた。絢爛な服を着た王冠を抱いた初老をむかえた男が歩いて来る。


即座に臣下の礼をとるふたりに制止をかける。


「よい、今日はめでたい日なのだ。そんなに畏まることはないぞ?」


「いえ、そういうわけにはなりません。アグラエィン陛下。」


「それで・・、陛下は何用に?」


畏まることはないと早速質問するアイアノス。いろいろとすごいと思うアーノルドがいた。

いや、それはないか。しかし、自分はまだ頭を低くしておくことにする。


「なに、知己の元に行くのは当たり前であろう?腹を割って話せるのは貴卿らだけだからな。」


「宰相殿がいらっしゃるでしょうに。陛下は相変わらずですな。」

「あれはダメだ、余のやること全部頭ごなしに否定して来る。少しは話を聞いてくれても良かろうに。」


いや、商会ギルドの力を削ぐために王都に自由に取引できるように自由商会を設置して税の減免を通して新興商工業者を育成し経済の活性化を図った。


やることは間違ってはいないが、商会の反感を買うことになり経済が傾く。

結果として、自由取引の可能な場所を商会の中で特別な扱いである冒険者ギルド本部のある城塞都市シェアトに設置することになる。


(シェアトは儲かる、と思う。しかし、欠点が多すぎる。陛下ももう少し、詰めてから話せばと申したこともあったが………変なところで頑固だからな。)


エストレアが聞けば、楽市楽座をイメージしたことだろう。それに酷似しているのだ。しかし、この政策は“商人を呼び込み、活性化を促す”ことであって、商会の力を均一するものではない。


「まあまあ、陛下も今夜は呑んでストレスを発散しましょう。ところで、殿下は?それに王妃様や姫殿下はどこに?」


思考を切り替え、アーノルドはアグラエィン王にワインを注ぎながら聞いてみた。


「ジェラルドはあれだ。貴卿の娘のところだ。あのヤンチャでバカ息子はあの日にぶん殴られて目を覚ましたように王族としての役割を全うしようと生き急いでおるわ。どうだ、ジェラルドと婚約してみんか?」


「ははは、陛下も悪い方だ。うちの娘を知っておりましょう。多分、男として見ておりませんぞ?」

「違いないな。まだ、王子として頭が硬すぎる。聞いたところでは帝国の第三皇子が虎視眈々と狙っているらしいぞ?」


アグラエィン王は即位した時から支えてくれた真の友人らと楽しく語り合うのだった。

中身しっかり詰まっているかな………。不安だ。

読者の皆様も何かありましたら指摘、感想等いただけたら嬉しいです。


※誤字確認したので、描き直ししました

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― 新着の感想 ―
拝読いたしました! 王族や貴族たちの礼儀や人間関係の描写が丁寧で、格式ある宮廷の雰囲気がよく伝わってきます。特に幼少期の殿下の逸話やアーノルドの家族思いな一面が温かく、登場人物それぞれの個性が生き生き…
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