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201.擦れ違いと不和

 戦いは、セレナ達の優勝で終わった。

 そう、優勝したのは間違いない。

 だが、観客達の反応は冷ややかであった。

 何しろ、キャロル達の作戦が成り、さあここから一体どう逆転するのか、それともこのまま押し切られるのかと、観客達の熱が最高潮に高まっていた。

 そんなタイミングで、こんな終わり方である。

 盤面ごとひっくり返す力技――と、言えば闘技場的には聞こえが良いが。

 仲間の命を切り捨てるやり口は、高まっていた観客の熱を冷ますのには十分過ぎた。

 優勝したにも関わらず、向けられたのは勝者への歓声ではなく、侮蔑を込めた罵声が多数であった。

 しかし、僅かではあるが歓声も混じっていた。

 勝利には違いない事と、その勝ち方が所謂、悪役(ヒール)と呼ばれるようなやり方だった為、それを好む層にウケたのだろう。


 優勝インタビューは、優勝者であるセレナ達にも触れられたが、どちらかと言えばキャロルに対するインタビューの方がメインであった。


「――成る程! ドラグノフ様が解説した以外にも、そのような目論見があったのですね!」

「魔法によって生成した水には、術者の魔力が宿っているのは周知の事実です。なら当然、魔法によって降らせる雨にも術者である私の魔力が宿っている。なら、その魔力によって魔力探知を妨害する事だって可能な筈です。それに気付いたからこそ、この手段という訳です」

「へー。あたいは魔力なんて全然分からねぇからアレだけど、あの雨にはそういう理由もあったって訳か」

「色々策を弄してみましたけど……残念ですが、負けてしまいましたけどね。破れかぶれに対しての対策は無かったので、そうなる前に終わらせたかったんですけど、あっちの仕掛けが早すぎたのと、まさかここまで強力な魔法を使えるとは思わなかった、それが私たちの敗因ですね」


 テクニカルなやり方で、常に相手を翻弄し続けたチームトリリオントリオ。

 その立役者であるキャロルには、健闘を称え、観客席から沢山の拍手と声援が送られた。

 そんな、自分達に向けられたモノではない歓声を背に受けながら、フィーナ達は舞台を後にする。

 優勝者への賞金は、後日各々の口座に振り込まれる。

 表彰式も終わった以上、もう用事は無い。


「――セレナ殿。流石に味方を背中から撃つのは擁護出来ないでござるよ」

「……なんか、痛いとか感じる暇も無く、気付いたら終わってたけどね」


 帰り道の最中、先程のセレナの行動は流石に容認出来ず、苦言を呈すミサト。


「何よ。勝ったんだから問題無いでしょ」

「いや、問題有るでしょ! 闘技場内なら死んでも蘇るって言っても、仲間を殺すなんて――」

「私は、負ける訳には行かないの。確実に勝てる手を取るのが一体何が悪い訳?」

「悪いでしょ! 仲間を攻撃するなんて問題有るし悪いに決まってるじゃない!?」


 ミサトとフィーナからの追求を、馬耳東風と聞き流し続けるセレナ。

 一旦闘技場を後にすると、出入り口にてライゼルが待ち構えていた。


「あ、ライゼル。何か知らない内に優勝してたよ」

「ライゼル様~! どうですか!? バッチリ優勝しましたよー☆ 私、デキる女ですよねぇ~♪ 惚れ直しましたか? 惚れ直しちゃいましたよね!?」


 ミサトとフィーナを無視し、何時ものテンションでライゼルと相対するセレナ。

 しかし、ライゼルの表情はやや硬い。


「セレナ、お前は――」


 そこまで口にして、何かに気づいたような反応をするライゼル。

 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、舌打ちしつつ、背を向けて何処かへと去ってしまった。


「……何だったの?」

「何だったんでござるか?」


 セレナの行動を咎めるのであらば、まだ理解出来るのだが。

 何も言わずに去った為、ライゼルの真意は不明のままであった。



―――――――――――――――――――――――



 闘技場では謎の術式が働いており、ここでの死は仮初の死でしかない。

 だから、仲間を囮にして、敵を一掃するというやり口は、褒められたモノかどうかは置いておいて、効率的かつ有効な戦法ではあるのだろう。

 だが、闘技場以外ではこんな真似は出来ない。

 勝利の為に、仲間や身内すら切り捨てる。

 それは、勝利以外の全てを捨て去る修羅の道。



 ――セレナ、お前はそれを実戦でもやる気かよ?



 そう言おうとして……気付いてしまった。


 強さを求め、強さの為に他の全てを切り捨てる。

 それは、正に今、自分がやっている事に他ならないじゃないか。

 そんな俺が、どうしてセレナの所業を糾弾出来ると言うんだ。

 そういうのは、ブーメランって言うんだよ。

 だが、今のセレナの在り方は、間違いなくフィーナを危険に晒す。


 そもそも、何でセレナはあんなに俺の側に固執するのか。

 子供の頃に俺が助けたとは言うが、これ程執着する程か?

 そう、まるで執着だ。

 そこに居なければならない、それ以外に選択肢は無く、許されないかのような立ち振る舞い。

 ……それに気付いた所で、俺にそれを言及する資格は無い。



 まあ、結局何だろうと変わらない。

 問題があろうが、何だろうが。



 俺が誰よりも強ければ、それで良いんだよ――!

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