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180.ピーマン食べろ

 宿を出て、寄り道せずに真っ直ぐ闘技場へと向かうライゼル達。

 街と一体化した、巨大な円形の建造物――闘技場へと足を運ぶ。

 中へ入ると、シミ一つ無い白い壁に、横へ横へと広がっていく広大な空間。

 天井には魔力によって動く巨大な照明が等間隔で並んでおり、室内でありながらも晴天の下に居るかのように明るい。


「ようこそ! 世界最大の闘技場、ラドキアアリーナへ! 本日はどのような御用件ですか?」


 入り口から見てすぐ正面にある、円形のインフォメーションカウンター。

 その中で手すきだった一人が、ライゼル達を見付けて笑顔を浮かべながら応対する。


「キミをテイクアウトしたいな☆」

「それでしたら、御客様の後ろにある出口へ向けてお進み下さい」

「つれないねぇ~俺様こう見えても超強いし、見ての通り顔も良いからさぁ~。今の内に知り合っておいた方が良いと思うんだよねぇ~?」

「一昨日来やがれ」


 速攻で絡むライゼル。

 笑顔で塩対応する受付嬢。

 余りにも瞬殺過ぎて、フィーナがツッコミを入れる隙が無かった程である。

 こんなもんは日常茶飯事だとばかりに、受付嬢の笑顔には欠片もヒビが入らない。

 最低限の法律こそあるが、基本的に力こそ正義な風潮がある闘技場都市下層では、こんな風に絡まれるのも良くある話なのだろう。

 酷い言い方だが、こんな場所で受付やっている時点で皆スレているのだ。


「――闘技場というのは団体戦も出来ると聞いたのでござるが」

「ああ、団体戦御希望のお客様ですね。参加人数は何名ですか?」

「三人でござる」

「三人ですか、実に丁度良い感じの数字ですねー」

「丁度良い?」

「団体戦は別に闘技場に収まる人数なら何人でも良いんですけど、フェアな勝負をするという意味で、人数は必ず同じ組み合わせでマッチングしてるんですよ。10人とか20人とかで来られると、同じ人数で参加希望を出してる人が見付からないんですよ」


 同じ人数でというルールがある以上、どうしても数が多い組み合わせは作り辛い。

 皆が皆、派閥に属してチームを結成している訳では無いからだ。

 気の合う仲間達同士の少人数でやっている者もいれば、完全にソロで活動している者も居る。

 そして当然だが、人数が少ない方が軋轢も少なくそして結成し易い。

 多くなると途中で空中分解してしまうのだ。

 そもそもこの闘技場都市で参加する側に立っている時点で、腕に覚えのある者ばかりしか居ないのだから、気に食わない派閥に属している位なら、抜けてフリーで活動した方が良いと判断して当然である。


「――そんな感じで、団体戦として成立する2名以上で、比較的長期間チームが維持できる数が大体3名から5名位なんですよね。それよりも多いグループもいますけど、3~5人組と比べると一気に落ちます。そして同じ人数の組み合わせでないといけない以上、新たに結成する際は3~5人で区切った方がマッチングもし易くて都合が良いんですよ。そんな感じで、元々多かった3~5人組に加えて、新たに増えるのも3~5人組ばかりになっていって、結果こうなった、という訳です」

「ちなみに、2人じゃ駄目な理由は?」

「2人だとそもそも個人戦とさして変わらないし、2人での戦い見る位なら個人戦見た方が楽しいっていう観客側の意見ですね。観客側も、団体戦と銘打つならせめて3人以上じゃないと、って事ですね」

「成程、そういう事なのね」


 ただ戦う事だけが目的であらば、こんな風に大規模な都市化してまで環境を整える必要など無い。

 この闘技場都市は、その戦いによって多額の金が動いている。

 興行という側面がある以上、観客席側の意見をガン無視という訳にも行かない。

 力こそ正義の風潮が強い闘技場都市だが――いや、これもある意味ではその在り方に従っているのだろう。

 観客席の意見、それは多数の民意という声の力、という訳である。


「では、皆様の実力を計りたいので、後日改めてここにいらして頂きたいのですが、御希望の日時はございますか?」

「今日じゃ駄目なのでござるか?」

「この闘技場で一旗揚げたいっていう身の程知らずは一日に何名も来ますからねー。それに、ただの雑魚狩りを見せても観客席は盛り上がらないですからね。ある程度の実力があるかで足切りしておかないと、闘技場の試合内容が雑魚で溢れ返っちゃいますからね」

「なら一番早い日で良いぞ」

「それですと、二日後の朝7時が空いてますね」


 ライゼルの横槍で、その実力測定とやらの日付が決まる。

 生憎と来て今すぐは無理だと言われたら、どうしようもない。

 それに、ライゼルの要件はまだ先なのだから、ここで急かしても焦っても意味は無い。


「まあしゃーねえ、今すぐが無理ってんならまた後日だな」

「なら、今日は自由行動って事で良いんだよね?」

「明後日の朝だぞ、寝坊すんなよフィーナ」

「しないわよ。私が普段何時から行動してると思ってんのよ」


 普段、荷運びの仕事兼護衛として活動しているフィーナ。

 魔物という脅威を考慮すれば当然ながら、活動中は視界が確保されていた方が良い。

 必然、その活動時間というのは日の出から日没という時間帯になる。

 朝7時は、とっくに日が出ているので、そんな時間に寝てたら完全に寝坊であり、仕事にならない。


「あーフィーナちゃんは早寝早起き出来て偉いでちゅねぇ~。ピーマンは残さず食べないと大きくなれないでちゅよぉ~?」

「アンタ私より背低いじゃん」


 逃げるフィーナ。

 追うライゼル。

 闘技場の入り口を出て数秒後、捕獲されたフィーナの叫び声が闘技場内に響き渡るのであった。

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