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165.倒せない相手の対処法

 変態兄弟の迫力に飲まれて逃げに走ったセレナだが、ミサトとフィーナが嫌々ながらも前衛を受け持った為、何とかセレナが体勢を立て直す事が出来た。

 なので二人に前衛を任せ、近接戦闘手段に乏しい後衛らしく、砲台に徹するセレナなのだが――


「ハァ!? これも効かないとかどうなってんのマジで!?」


 殺さないようにとは、キルシュから言われていた。

 最初は手加減をしていたセレナだが、手加減した魔法攻撃では一切この二人を傷付ける事が出来なかった。

 出力を上げるが、それでも届かない。

 セレナはもう既に、一切の手加減を放棄した、当たれば間違い無く命を奪う程の破壊力を振り撒いていた。

 爆撃とでも言うべき炎や大地を打ち砕く雷の嵐によって、戦場同然の光景が広がる。

 元々草木がロクに無い荒れ地の山肌でなければ、荒野に変貌しててもおかしくない程だ。


「あ゛っづうっ!? セレナァ! 私も燃えるでしょ何してんの!?」

「当ててないわよ! ただの余波でしょ!」

「髪ちょっと焦げたんだけど!?」


 時々フィーナにも余波が飛んできてセレナに苦情が飛ぶ。

 尚、ミサトは余波程度ならば飛んで来ても見てから回避してくるので髪は焦げていない。


「ぬっふうううぅぅぅ……! 良い! 実に良いッ!」

「これ程の大魔法を喰らっても傷一つ付かないとは――! これがジョニーが生み出した衣服の力……ッ! 伝説と呼ばれるのも納得だ!」

「これならば我等も、ラドキアアリーナで存分に己の魅力を魅せられるはずだッッ!!」


 現在進行形で視覚の暴力(魅力)を振り撒いております。


「小癪な飛び道具に頼る小娘に山の魅力を叩き込んだ後、このままラドキアアリーナに凱旋と行くか兄者!」

「そうだな弟よ!」

「ひいっ!?」


 悲鳴を上げるセレナ。

 現在飛び道具――遠距離攻撃を行っているのはセレナのみである。

 つまりこの発言は、セレナに対して放たれた言葉である。

 兄(スク水)と弟(メイド服)に、ロックオンされた。


「やだあああぁぁぁ! もう帰るうううぅぅぅ!!」

「帰んな! 一番ノリノリでこの仕事請けたのセレナでしょ!?」


 ある意味死ぬより恐ろしい光景が目の前に在り続けた挙句、その恐怖(兄弟)にロックオンされたせいでとうとう逃亡に舵を切り始めるセレナ。

 本当にこの場から離れる訳ではないようだが、完全に弱気になっている。


「んぐぐぐぐぐ!」

「ほう、やるな小娘! この我を相手に真っ向から立ち向かうか!」


 メイド服を着込んだ筋肉ダルマ相手に、体格差はあれども一歩も引かず、拳と蹴りをぶつけ合うフィーナ。

 受け止めてホールドした方が時間が稼げそうだが、どうやらべったり触るのは嫌な模様。

 

「ええい、ネズミのようにちょこまかと動き回りおって!」

「――参ったでござるな。どうすれば斬れるのでござるか?」


 ミサトはフィーナと違い、スク水姿の変態と打ち合ったりはしていない。

 フィーナと比べて軽装の為、流石にあの筋肉スク水変態巨漢相手からの一撃を受ければ、ダメージは避けられない。

 だが攻撃は一切受けず、俊足を生かして全て回避し、相手をかく乱し続けていた。


 首以外の場所を隙あらば手当たり次第に斬り付けるミサト。

 首を狙わない理由は単純であり、もし狙ってそれで本当に斬れてしまったら斬首で即死だからである。

 しかしそれ以外に関しては一切加減せず、間接部位や背後に至るまで、既に十回以上は刃を当てている。

 だが出血所か、掠り傷にすらならない。

 当たらないのならば当てられるように努めるという事も出来ようが、当たってるのに斬れないというのはもう、どうしようもない。

 一応、嫌がっている素振りはあるので、目に見えないだけでダメージはあるのかもしれない。

 だがそれも一体どれ程効果があるのかも分からず、そして持続ダメージだとばかりに目に飛び込んでくる視界の暴力で、体力はともかく精神力をガリガリと削られていく。


「ミサトさん、斬れないの?」

「こんなのは流石に初めてでござるな……当たらないならば納得出来るが、当たってるのに斬れないというのは……」

「そう……なら、仕方ないか」


 大きく溜息を吐くセレナ。


「ぶっちゃけこんな汚らしいモノを見せ付けて来る変態はぶっ殺しても良いやとか考えてたけど、ミサトさんの物理でも私の魔法でも掠り傷すら付かないってなるとねえ……殺す方向性は無理だわ」


 割と呑気な口調で逡巡(しゅんじゅん)するセレナ。

 口調は呑気なのだが、何故かセレナの杖が意味深に動いている。

 その杖の先端は地面に伸びており、気付けばセレナの足元には何らかの魔法陣が書き記されていた。


 その足元から、錆色の光が迸る。


「フィーナさん」

「何よ!?」

「ごめんね☆」

「へっ?」

「我が前に平伏せ! 重力の檻! 超重圧撃グラビティプレッシャー!」


 ――大地が、揺れた。

 地面に転がる土くれが勢い良く崩壊し、その空間がまるでロードローラーで押し潰したかのように平らに均されていく!


「「ぐおおおおぉぉぉぉッ!?!?」」


 その効果圏に居た、変態兄弟は突如発生した強大な重力場に囚われ、顔面から地面へと突っ込み、両手足を重力によって縫い付けられた!

 例え鉄壁と呼べる防御力があろうとも、それは重力には無関係!

 増大した重力の前では、赤子同然に地に這いつくばるのみだ。


「おぐえええぇぇぇぇ!!?」


 あと一緒にフィーナも巻き込まれた。

 潰された蛙みたいになった。


「――あの、セレナ殿?」

「さようならフィーナさん……! 貴女の犠牲は無駄にはしないわ、代わりに私がライゼル様と添い遂げるから雲の上から見守っててね……っ!」

「勝手に殺すなあああぁぁぁッ!?」

「あ、でもこの重力場だと天国じゃなくて地獄か☆彡」

「だから死んでないっつーの!?」

「セレナ殿! フィーナ殿が巻き込まれてるのでござるが!?」

「だからごめんって言ったじゃない」

「確信犯!? 何と非道な!?」

「別にコレはフィーナさんを傷付けたりする魔法じゃないし。ただ空間内の重力を滅茶苦茶強くしてるだけだからね」

「ぐえええぇぇぇぇ」

「良く考えたら、私達はあの変態を殺す必要は無いのよ」

「そもそも生け捕りにしろという話だったでござるしな」

「捕獲って要は身動き出来なくすれば良いんでしょ? 傷付けて戦闘不能に出来なくても、こうやって地べたに這いつくばらせてやればそれで終わる話じゃない」

「ふべえええぇぇぇぇ」

「ちょっとフィーナさん黙ってて貰える?」

「これ止めろおおおぉぉぉ!」

「無理☆ じゃあミサトさん、ちょっと麓まで行って無事捕獲したって伝えて来てくれる? 多分二時間位なら維持出来ると思うから、それまでに宜しくね」

「…………フィーナ殿」

「み、ミサトちゃん……」

「もうしばしの辛抱でござる」

「ミサトちゃあああぁぁぁん!?」


 じゃあこれに代わる手段を用意出来るのか、そう考え。

 自分には無理だと判断し、そしてこれも別に殺傷性がある魔法という訳でもない為、フィーナを犠牲にする事を選択し、麓へ向けてダッシュするミサトであった。

 助けを求めるフィーナの声が木霊した。

メンゴメンゴ☆

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