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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

真夏の休み時間

作者: 新京極鈴蘭

夏ってなんでこんなに暑いのだろう。

日差しは馬鹿みたいに眩しくて、空気は重くジメジメしていて。気温は狂っているかの如く30℃越えは当たり前だ。


「あっつーい…」


クラスのムードメーカーで、中学の時からの友人である文絵(ふみえ)が教室の机に突っ伏している。私は黙ってそれを見つめる。


「暑いよね、ほんとに。日に焼けそう」

「夏なんか無くなっちゃえばいいのに…」


文絵は気だるそうに呟く。私も全くもって同感である。


「…でさ、裕也(ゆうや)くんってば、観覧車のてっぺんで私にキスしてさ…」

「マジで!?いいなあ、あたしも早く彼氏ほしいな!」


教室のど真ん中で、クラスの女子達が恋バナをしている。この暑い中、よくもそんな元気にはしゃいでいられるな、と思う。


「帰りにアイス買ってもいーい?」


文絵は不意に顔をあげて私に問いかけた。

相変わらず、大きくて綺麗な目をしていると思った。


「いいよ」


答えた私に文絵はニコッと笑った。クラスのムードメーカーが、なんで地味で目立たない私なんかと仲良くしてるんだろうと疑問に思う。中学の時から、可愛くてちょっと派手で、流行の最先端を突っ走ってるような、そんな彼女はクラスの女子から人気があり、さらに言うと男にもモテた。

一方で私は、無口で地味で三つ編み眼鏡で、いつも本を読んでいて、おしゃれにも興味がない。顔も可愛いとは言い難い。それなのに、文絵は私にいつも笑顔を向けてくれる。


「ねえ、文絵はどうして私なんかと一緒にいるの?」

「どうしてって、決まってんじゃん。沙耶(さや)といると安心するし、何よりも面白いからだよ」


面白い?私が?


「私って、面白いかな…」

「うん、だっていっつもミント味のキャンディ食べてるし、飲み物は必ずぶどうジュースだし!なんのこだわりってなるじゃん!」

「え、そこ?…それはただ単に好きだから、だよ」


文絵の面白いの基準はよく分からない。でも、私と一緒にいて安心するのならまあいいか。


「もう一つ、聞いてもいいかな」

「んー?」

「文絵って、好きな人いるの?」

「おしえなーい!」


文絵は再び机に突っ伏した。照れてるのだろう、と個人的に解釈しておく。


「なーんだ、教えてくれないのか」


私は少し安心したような、がっかりしたような、訳の分からない感情に襲われる。

簡潔に言うと、私は文絵が好きなんだと思う。

友達としてではなく、恋愛対象として。

少し前から、文絵といるとドキドキするようになった。

文絵に笑顔を向けられると訳もなく嬉しかった。


だけど…


「女の子が女の子を好きになるなんて、おかしいよね」


自分の感情を押し殺した。好きになってはいけない、好きになってはいけない…

それでも、好きになってしまった。

クラスの友人と仲良く話す文絵に、嫌気が差すこともあった。

私だけを見てほしい。私だけを愛してほしい。


「文絵…」

「んー?」

「あのさ…」


勇気を出せ、今言わないと後悔しそうで。


「私は、文絵が好きだよ」

「マジで?嬉しい!私も沙耶のこと好きー!」


違う、友達としてじゃない。恋愛対象として。


「多分、文絵の好きと、私の好きは、違うと思う。

「…?」


文絵は不思議そうな顔で私を見つめる。


「でも、言ったら拗れるかもしれない。もう、仲良しでいられなくなるかもしれない」

「……」


文絵はしばらく黙っていたが、口を開いた。


「言ってよ」

「…!」

「友達でしょ?私たち。中学ん時から、ずっと一緒にいるんだから、隠し事はなし!」


文絵はそう言って私の頬をつついた。いや、貴方も十分隠し事してるじゃないか。好きな人教えてくれないし…


「…私さ…文絵のこと、好きなんだよね…友達としてじゃなく、恋人になってほしいの好き…」

「え…?」

「もしかしたら、もう友達じゃなくなるかもしれない。それでも、この気持ちを伝えないと、苦しくて、辛くて…」

「沙耶…」

「ごめん、聞かなかったことにして」


私は顔をそらす。文絵の顔が見れない。どんな表情をしているのか、見るのが怖い。


「…そうだね、友達じゃなくなるね」

「!!」


ああ、やっぱりそうか。嫌われてしまった。大好きな人に、友達じゃなくなると言われた。でも、仕方ない。気持ちは伝えた。後悔はしていない。


「だって、私も沙耶のこと好きだもん。恋愛対象として好きだもん」

「…え?文絵?」

「だから、両想いだから、友達じゃなくて、恋人になるよねって」


文絵はそう言って私の鼻に人差し指を乗せた。


「大好きです。中島沙耶さん」


文絵は言い終えてまた机に突っ伏した。今度こそ照れている。顔を隠しているとは言えど、耳が真っ赤だ。


「うぅ、うわあああっ!」


何故か知らないけど、私は泣いてしまった。大好きな人に、大好きと言えたから、大好きな人に、大好きと言われたから。


「ちょっ、泣かないでよ沙耶!」

「だってえ…」


文絵はハンカチを取り出して私の頬を拭う。


「恋人か…」


私は涙を拭いながら呟く。


「これから、よろしくね?」

「…うん」


文絵と私は再び笑い合った。


新京極鈴蘭です。

アイスが大好きです。

これからもよろしくお願いします。

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