8-19 役者は揃う
男の出現は混迷する状況を更に加速させた。
涼しげな相貌は他者を威圧するような凄みは無く、着流しを引っかけた痩せた体躯は枯れ木に布を巻いたかのように寂しげだ。だというのに、放たれている威圧感は凄まじく、高位冒険者の集団《神聖騎士団》ですら呼吸をするのを忘れてしまった。
臓腑を押しつぶすほどの威圧感を前に、皆身動きが取れなかった。
ゲオルギウスは、例えるなら人間に敵意を持った獣だ。人を見るなり、無意識に敵意と殺意を振りまく。一方で石舞台に現れた男は、重厚ながらも敵意や殺意を一切含まない、純粋な威圧感だけを放つ。その超常的なあり方は、例えるなら自然の驚異。台風や洪水のような、人間に対して害を為すが、害を為そうとする欲求が存在しない。善でも悪でも無い、中道を貫くような透明な威圧感を放つ。
悪意が人の形をして成したのがゲオルギウスなら、眼前の男は脅威が人の形をしているとマクスウェルは思った。
「な、何者だ。あの、男は」
それだけを呟くのに、多大なエネルギーを消費した。胸元を押さえ、意識を男から逸らせずにいると、背後に控えていたリザが口を開いた。
「あの方は……そんな、まさか。でも、やっぱり」
「何か知っておるのか、エリザベート殿?」
振り返ると秀麗な顔を青ざめ、理解不能とばかりに頭を振るリザ。彼女は数秒考え込んだ後、口にするのも恐ろしいとばかりに開いた。
「あの方はエルフの『守護者』サファ殿です」
告げられた名前に、マクスウェルの手から長杖がこぼれ落ちた。戦闘中だというのに、愛用の武器を取り落とす失態は、普段の彼なら絶対にしない。それだけ、平常では居られなかったという事だ。
「な!? では、まさか。あの御仁が『七帝』の一角なのか」
「マクスウェル様!? なぜ、その名称をご存知で」
世界崩壊に関する単語に反応したリザだが、マクスウェルはそれに答える事もできず正面を向いた。
『守護者』サファ。
その名は、悪名として広く世界に知れ渡っていた。
かつて、千年前に起きたエルフの国崩壊。それに単を発した、一族の大移動によって、世界中で混乱が起きた。エルフは魔力の満ちた場所でなければ、その寿命や成長は望めず、それだけに無神時代の始まりによって魔力不足に陥っていた世界は、彼らにとって暮らしにくい不毛の土地だった。
流浪の末、辿り着いた場所には、大抵先住民が存在しており、エルフたちが暮らすだけの土地は余っていなかった。
サファは一族を守る為に、先住民を殺し、土地を奪った。その土地と、エルフという種族を求めてきた外敵をも殺し、種族を守る男はいつしか、エルフの『守護者』と忌み嫌われるようになった。
エルフの大移動は百年ほどで収束し、冒険王との旅を終えた後のサファはあまり表舞台に現れるような事はなく、エルフの寿命からしても死亡したか、あるいは引退しただろうと噂されたころに彼の名は再び轟くことになった。
人類の暗黒期。三つの戦役が始まったのだ。
六百年の沈黙を打ち破り、人類の側に立ったエルフの『守護者』は、当時の姿をそのまま保ち、技量は更に磨きが掛かっていたという。
ローランが最強の冒険者で、ゲオルギウスが六将軍最強なら、この男は剣士最強と呼ばれていた。
そんな伝説の存在が、何故この地に、この時を見計らったかのように降り立ったのか。それはマクスウェルの智謀を持ってしても読み切れなかった。
同じ疑問を抱いたエトネは、それを直接口に出して尋ねた。
「サファ……さま、だよね? なんで、ここにいるの」
萌黄色の瞳を丸くして、口を半開きにして自分を見上げる存在に、サファは鼻を鳴らした。
「ふん。何故も何もない。貴様が俺を呼んだのだ。貴様に与えた―――っと。話の邪魔だ、脇に下がっていろ」
サファは刀を納刀したまま、レイの一撃を簡単に防ぐと、くるりと回って蹴りを側頭部に叩き込む。レイの体は糸で引っ張られたかのように、観客席へと吸い寄せられ突き刺さった。
「これで良しと。貴様に与えた宝石が、俺をこの地へと誘ったに過ぎん」
「ほうせき、エルフのおまもりだね。……あれ? くだけてるや」
鎖を引くと、先端の台座に嵌っていた緑色の宝石が砕けていた。まるで内部から正面に向けて何かが飛び出したかのような不思議な砕け方をしていた。加えて、エトネの衣服や鎧が、前面部分だけ裂けていた。
「その宝石は、エルフの秘術で作られた合成宝石だ。専門の鑑定士ですら欺く完成度に加えて、宝石の内部には魔法陣が仕込まれている。……持ち主であるエルフが助けを求めた時、俺を呼ぶようにな」
「そんなに、すごいの、どうしてエトネにくれたの。それに、エトネはハーフだよ」
「雑種だとしても、エルフの血が混じっていれば反応する。……これを貴様にやったのは里長、ブーリンの意思だ」
「おじいちゃんの」
祖父の名前が出て、エトネは驚いた。サファは頷くと、
「その宝石は、本来ならエスニアに渡されるはずの宝石だった。あのはねっかえり娘め、駆け落ちなんぞしよって。父親の行為を無下にして、挨拶もせずに隠れ里を出てしまい、渡せずにいたのだ。だからこそ、それは貴様が持つに相応しい。壊したからといって、責任を負う必要ないぞ」
諭すような口調のサファに、エトネは嬉しそうに砕けた宝石を撫でた。里長としての責任から冷たい態度を取っていた祖父だが、娘の身を案じて餞別を渡そうとした思いやりや、それを渡せずに持ち続けていた優しさを感じ取っていた。
すると、サファは納刀した状態で、エトネの襟を鞘の先端に引っかけ持ち上げた。
「ぐへぇ」
カエルが潰れたような声がエトネの口から漏れたが、サファは気にすることなく、日本刀を肩で担いだ。刹那の間を置かずに、エトネが居た場所を踏み潰すように黒い塊が激突し、石舞台を転がった。
もし、サファがエトネを拾っていなかったら、押しつぶされたカエルのようになっていたかもしれない。
「は、は、はっははは! こいつは不味いな! たった一人に、これだけ追い詰められたのは、記憶にないぞ。ジグムントとやり合った時でさえ、ここまででは無かったな!」
腹の底から笑ったかのように哄笑を上げる男は全身が傷だらけだった。悪魔的な意匠だった鎧は、上半身が形も残らずに砕け、下半身に辛うじてしがみ付いている有様。肩にある二つの口の内、右肩の口はえぐり取られたのかどこにも存在しておらず、脇腹の裂傷からは青い血がとめどなく溢れていた。
茨のように絡み合った黒い長髪から金色の双眸を覗かせた男、ゲオルギウスは顔を上げた際に石舞台にてエトネを旗のように担ぐサファを見て停止した。
「ふむ。息災そうだな、六将軍ゲオルギウス」
「……この状態を見て、よくぞ息災だと口に出来るな、『守護者』」
「おかしな事を言う。頭と首が繋がって、心臓が鼓動していれば、それは十分息災と言えよう。特に、フィーニスから死に難い力を与えられた貴様ならば、尚のことそうだろう。普通の人は、心臓は三つも持たないだろ」
「その言葉、そっくり返すぞ。寿命を斬って不死身の領域に片足を入れた人外」
両者の視線が激しくぶつかり合い、間の空気が闘気によって歪む。傍に居たエトネが思わず吐きそうになるのも仕方ない。遠目で見ているマクスウェルたちでさえ、吐き気を催すほど、異常な空間が形成されつつあった。
「それで? 貴様がそこまで追い詰められるのは珍しい。一体、何処の何奴だ」
「見れば分かる。それ、もうじき来るぞ」
ゲオルギウスが顎で示すと、サファはそちらを振り向いた。
石舞台を取り囲む観客席の中で一際破壊が激しい箇所を背に一歩、また一歩と踏み出す人影。それは今にも崩れ落ちそうな程弱々しいというのに、放たれる威圧感は、ゲオルギウスとサファに匹敵する。
白銀の鎧はどこかへと消え去り、体の至る所で内出血の痣が咲き、大剣を引きずる腕に力は無い。満身創痍の姿は、ゲオルギウスをも上回っていた。だが、驚くべき事に青年の傷の大半は、己の力に振り回された結果だ。
ゲオルギウスが付けた傷など、概念殺しの槍が突き刺さったままの右胸ぐらいだろう。
魔人が手を伸ばすと、槍が一人で動き出した。男の足が一瞬止まり、身震いしたかと思うと、槍が抜けゲオルギウスの手に戻った。塞がっていた穴からは血があふれ出すも、ローランは再び歩み出す。
見る者の正気を揺さぶる光景だというのに、サファは首を傾げて、
「見ない顔だな。何者なのだ、あの男は」
と、ゲオルギウスに尋ねていた。愛用の槍が戻ったゲオルギウスは立ち上がるなり宙を一閃した。槍に付着したローランの赤い血が軌跡を描くように石舞台に吹きつけられた。
「今代の『聖騎士』。名をローランと言う」
それだけでサファは意味が通じた。
「合点がいった。成程、六百年の怨讐が、繋がれてきた呪いが辿り着いたのか。恐ろしきは人の憎悪か。しかし、驚くに値はしない。千年前、我らの国を滅ぼしたのも、間違いなく人の憎悪だからな」
一瞬、萌黄色の瞳に寂寥感が浮かぶと、それを振り払うようにサファは頭を振った。
「それで、何故貴様がここに居るのだ、サファよ。南方大陸に、貴様らエルフの隠れ里は無かったはずだ」
「然り。俺も望んでこの地に……待て。今貴様は何と言った? ここは南方大陸なのか」
「知らなかったのか。ならば、これは失言だな」
「……逆に問うぞ、ゲオルギウス。貴様のような存在が、この地で何をしている。何を企んでいる。場合によっては、貴様を殺してでも―――むぅ、またか」
純粋な威圧感に毒々しい殺意の色が混じる中、サファは唐突にため息を吐くと、鞘の先で担いでいたエトネを放り投げた。まるで洗濯物を投げるかのような気軽さで、少女は弧を描いた。慌てて、リザが受け止め得るのと同時に、衝撃音が響いた。
見れば、石舞台に四人目の影が登場していた。
それは黒い鎧と兜に覆われたレイなのだが、先程といささか様子が違った。
「なんだか、大きくなっていないかしら」
シアラの呟きに全員が同意した。レイの姿が、先よりも一回りも二回りも膨らんでいたのだ。
どうやら、筋肉のようにレイを包む鎧は、水の膜を参考に重ねる事を試したようだ。そのせいで着ぶくれしたように、首から下が膨らんでいた。
しかし、効果はあったようだ。マクスウェルの目から見ても、レイの一撃が、先程まで比べても、何倍も重く、激しくなっている。いくら《神聖騎士団》の高位冒険者といえど、直撃を浴びれば危険な領域だ。
それなのに。
「なんだ、童。貴様に用は無いというのに、そんなに俺と戯れたいのか」
両手で龍刀を握るレイと対称的に、サファは日本刀を鞘から出さず、そのまま受け止めていた。
押し切るどころか、逆にレイが押されている。刃の峰がレイの兜へと迫ると、鎧の表面が波紋を描く。
「不味い! サファ殿、鎧自体が攻撃の発射台であるぞ!」
マクスウェルの警告は間に合わなかった。
波紋が浮かぶや否や、そこからサファを貫く槍が頭を覗かせ―――即座に両断された。
目撃した全員が呆気にとられる中、僅かに波紋を見せた日本刀が鞘に納められた。神速の居合いが、槍の穂先が現れた瞬間に切り落としたのだ。あまりの出鱈目ぶりに、マクスウェルでさえ開いた口が塞がらない。
「やることなす事、フィーニスの二番煎じ。文字通り影真似なんだよ、貴様は。そんなので、俺を相手取ろうなど、思い上がりも甚だしいぞ」
言葉と共に斬撃がレイの体を襲う。何重もの層となっていた鎧は一撃で粉砕され、その下の鎧も加護が砕けた。
レイが後ろへと吹き飛ぶ直前、手負いのゲオルギウスが動いた。日本刀が納刀される寸前を狙い、奇襲を仕掛けたのだ。同時に、ローランが砕けた足首を更に損傷させて石舞台を蹴る。
彼の瞳に映るのはゲオルギウスただ一人。その間に立つサファに意識は向かず、彼を巻き込む形で大剣が弧を描く。ゲオルギウスの槍は的確に、サファの腕を狙い放たれた。
左右から迫る、滅殺の一撃を前にして、サファは静かにため息を吐いた。日本刀を収めたまま、柄頭でローランの大剣を弾き、鞘尻でゲオルギウスの槍をいなしてみせた。
両者とも、必殺の気合で放った一撃だけに、態勢が流れてしまう。サファはそこを狙いすましたように、日本刀を脇に構え、居合いを放った。
一陣の突風が吹くと、ローランとゲオルギウスの体に斬撃が走る。ゲオルギウスはわき腹から足までを切られ、石舞台を転がり、ローランは肩口から脇腹までを浅く斬られるも、石舞台に両足で立っていた。もっとも立てていただけで、すぐに反撃に移れるような余裕は無かった。
僅か数呼吸の間で、レイとローランとゲオルギウスの三匹の怪物が負傷した。
いくらローランとゲオルギウスが重傷で、レイが四人の中で最も弱いとしても、それでも三人を同時に相手取れることなど不可能に近い。
そんな不可能を男は堂々と行ったのだ。
サファは着流しを止める帯に日本刀を差し込むと、ゲオルギウスとローランに見向きもせず、レイの元へと近づいた。闇の鎧が修復されるも、体は起き上がれずに横たわっていると、サファがレイの喉を掴んで持ち上げた。
枯れた細木のような腕のどこに力があるのか。レイを片手で持ち上げた男は絶対零度の如き視線を少年に向けていた。鎧の表面が波紋を浮かべ槍やら剣やらを放とうとするも、全て頭を出した瞬間に切り伏せられてしまう。
「落胆したぞ、童。何処でフィーニスから聖印を与えられたのか知らんが、奴の思惑通りに魔人と成り果て、更には人心を喪失するとは。獣を放てば人の世に迷惑を掛けるだけだ。ならば、いっそ、この手で散らすのも仕方あるまい」
途端、男の冷徹な殺気が刃となってレイを貫く。サファがレイを殺そうとするのは明白だが、しかし、それを止める声が出なかった。マクスウェルはどうするべきなのか。判断を下せないまま―――。
「―――待ってください!」
少女の叫びがサファの動きを止めた。首を掴みつつ、逆手で抜いた日本刀が首に添えられている。あと僅かでも遅れれば、レイの頭と胴は二つに分かれていたに違いない。
サファを止めたのはレティだ。
「待ってください! ご主人さまはまだ魔人になっていません!」
「そうよ! 『守護者』にしては判断が性急すぎるんじゃないかしら」
レティに続いてシアラが挑発的な眼差しでサファを睨んだ。
「主様はまだ魔人に至っていない。その証拠に、兜に隠れた右目はまだ黒いままよ!」
話を聞いていたサファは、それが真実かどうか確かめるために日本刀で兜を縦に両断した。二つに別れた兜から現れた素顔は、確かに金色黒色の瞳だ。
すると、レイの首から伝うように闇が侵食してきたことに気が付き、サファはレイを放り投げた。石舞台を転がり止まった少年を闇は逃すまいと覆った。
「私達の声があれば、レイ様を引き戻す事が出来るのです。ですが、あの闇がそれを邪魔して、声が届きません」
「……それを俺に話して、どうするつもりなんだ、貴様ら」
サファが面倒だと言わんばかりに振り返ると、幼いエトネの双眸とぶつかった。少女は真剣な瞳で、切実に訴えた。
「おにいちゃんを、たすけてくさだい!」
「断る」
それはかつて、少年がサファに剣を教わりたいと願い出た時を彷彿とさせるやり取りだった。サファはそのまま、
「童を救う理由が俺には無い。利も益も無い事に、なぜ俺が手を貸さねばならないのだ」
と、告げた。すると、それを待っていたとばかりにシアラはニヤリと笑う。
嫌らしい笑みにサファは眉の間に皺を作る。
「なんだ、その笑い方は」
「サファ、アンタはエトネの呼びかけに応じて、この地に来たんでしょ」
「……まあ、確かにそうなるな」
サファにしては珍しく歯切れの悪い返し方に、シアラは突破口だとばかりに突撃した。
「なら、エトネの想いに、気持ちに応える必要があるんじゃなくて。だってアンタはエルフの『守護者』。エルフのために、剣を振るって来たんでしょ。いま、おちびが望んでいるのが何か、分からないとは言わせないわよ!」
指を突きつけ、堂々と告げる姿はどこか彼女の母親を想起させる。サファは脳裏に過る不快な女の影を打ち消し、胸の内を揺蕩う感情を吐息と共に吐き出した。そして視線をエトネに向けた。
「エスニアの娘、エトネ。貴様に問う。……何を求めて、俺を呼んだのだ。何を望む。俺はただの刃だ。お前の望みを叶える一振りの刃だと思え」
「……おにいちゃんを、レイおにいちゃんをたすけてください」
切実な、そして純粋な想いをサファは受け止め、頷いた。
「承知した。確認するが、フィーニスの闇を剝がせば、後は貴様らに任せればいいのだな」
サファの言葉にリザ達に喜色が浮かんだ。
「は、はい!」
「ならば話は早い。あの闇を削れば、それで済む」
そう言って踏み出そうとした背後で、槍がすれる音がした。首だけを後ろに向ければ、そこに居たのは青い血を流すゲオルギウスの姿だった。傷口が粟立ち塞がりつつあるが、内臓までは再生してはおらず、怜悧な相貌に死相が浮かぶ。
「小僧は陛下の恩寵を受けたのだ。例え、納得がいかずとも、家臣ならば主の判断を尊重し、これを守るのが責務。故に、易々とやらせはせん」
槍を構える姿は満身創痍だというのに、闘気だけは鋭く漲っていた。
しかし、熱い波動を前にしてもサファは揺らがない。
「ゲオルギウス。貴様の相手は俺でなかろう。ほれ、其処で待っているぞ」
指差す方に金色の瞳が向かうと、それが弓なりに歪んだ。
「ああ、確かにそうだ。忘れていたぞ、『聖騎士』ローラン。生きているか、貴様」
返答は血しぶきだった。口から大量の血しぶきを吐き出したローランは、大剣を両手で掴み持ち上げて見せた。
彼もまた満身創痍だというのに、気迫だけは猛々しく、他の三人に引けを取らないでいた。
そして、鎧と兜を再構築したレイが音もなく姿を現した。手にしたのは二振りの龍刀だ。むろん、左手に握る方が黒炎で生み出した、龍刀影打ちならぬ、龍刀闇打ち。
何時しか四者は、円を作るように向かい合っていた。各々が発揮する殺意や闘気が入り混じり、ぶつかり、空間がねじ曲がりそうなほどの威圧感となっていた。
怪物と怪物と怪物と怪物が揃い、神前決闘の終幕が始まろうとしていた。
読んでくださって、ありがとうございます。




