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合コン

 軍隊には、予備役と言うものがある。


 実際に従軍していると給金は払わなければならないし、食料も必要となる。


 そのため、一般人として、ここでは奴隷街で普通に暮らしながらいざというときに備えるのである。これだと軍として給金が発生せず、しかも一定数の兵士をいつでも確保することができる。


 奴隷街自体が移動と行動を制限された奴隷の集団であるから、街全体が予備役のようなものであるが、その中には兵役に就いたことのある訓練と業務が理解できている者と、兵役に就いたことのない者がいる。


 奴隷は生活するにあたって労役に就く必要があるのだが、ごくまれに兵役を拒否する者が出る。その場合には所属変更の形で奴隷街の所属から軍の所属に変更し、兵役だけを業務に変更することになる。しかし、そうしなければならないほどの事態はここのところ起ってないし、住人側もわかっているので普通は奴隷街所属のまま徴兵されていく。


 問題は、一般民として暮らしているので訓練がなく、戦闘能力が維持しにくいことだろう。


 そもそも、徴集のしやすさや給料の安さから奴隷街出身の兵士は結構多かったから、現在の奴隷街は予備役兵士だらけになっている。そのため、兵役経験者に2節気に一度の訓練参加が義務付けられた。


 訓練内容は基本的には国境警備時と同じ体力づくりである。


 ローテーションで回っていくので、何回かに一度大砲発射訓練もある。


 部長も兵役経験者なので、訓練に参加するのだが、60をとっくに越えた爺さんが軍隊式体力作りについて行けるわけもなく、毎回ヘロヘロになっている。


 部長はずっとメグミと一緒になることはなかったのだが、新型の多人数を運搬できる自走車が導入されたとかで隊の人数が変更され、同じ訓練隊になった。


 もう歳なんだからちょっと無理すれば心臓麻痺でも起こすんじゃないかな。

 メグミはそんなことを考えながら部長の観察をしているが、元から訓練に熱心ではない部長が体調を壊すほど熱心に訓練するはずがない。


「何とか死亡フラグ的な行動をとらないかな」


 訓練中は自己主張をせず、目だった能力や自己犠牲精神の無い部長が立てられる死亡フラグは非常に少ない。


 部長が立てられるフラグと言えば危険な場所でボーっとしている一般人くらいのものだが、要領だけはいい部長はぽつんと一人になったり目立つことはしない。


 などとメグミが悪だくみをしていると、隊長から指示が飛んだ。


「メグミ、次のメニューだ。区画14へ行け」

「へ? 14ですか」

「そうだ、跡が詰まっているからサッサと移動しろ」

「えーっと、済みません。さっきから腹具合がおかしいんで、ちょっと先に用を足してきていいですか」

「仕方がない、わかった、ここは俺に任せておけ」

「はい、宜しくお願いします。気を付けてくださいね」


 メグミは「うわぁ」と思いつつ念のため声をかけておく。

 このあと、倒れてくるはずのない物が倒れてきたりしたようだが、隊長は無事だったようだ。



 もう一つ、徴集の効率を上げるためにはフラフラと移動してもらっては困る。


 ある日、メグミは一通の「お知らせ」を受け取った。


「集団お見合いパーティーのお知らせ

独身兵士のために、出会いの機会を増やす目的でパーティを行います

日時は……」


「官製の合コンかよ!」


 メグミにとっては迷惑以外の何物でもない。


 奴隷街は閉じたコミュニティであるからほぼその心配はないはずだが、軍の上層部に家庭を持つと落ち着くという幻想を持っていた者でもいたのか、メグミにとって困ったことに結婚が奨励された。迷惑なことに、独身予備役はお見合い強制参加である。


 もしかすると浮気神夫婦(やつら)の嫌がらせかも知れない。


 メグミは、強制参加ということで日時を指定され、会場へと向かった。


 会場は訓練場になっている河川敷の一角にある体育館を併設した運動施設内の会議室である。


 受付を済ませて待合室で待機していると、まとめて呼ばれてメンバーの釣り書き一覧を渡された。釣り書きと言っても大した役職があるわけでもないから名前と年齢、出身地くらいのものだが、字を読めない者はお呼びでないらしい。


 メグミが会場に入ると、他の男性メンバーが露骨に嫌な顔をした。1対1ならともかく、集団では他の男と比較される訳で、そんな中に顔のいい奴が混ざっていたら厄介極まりない。


 予想通り、歓談タイムが始まると女たちはメグミに群がった。やれ趣味がどうとか、好きな食べ物がどうとかに始まって、釣り書きにアンビー出身と書いてあったためアンビーがどんなところかということをずっと話す羽目になった。


 話すことなど、温泉があってオオバチやサンキースーが跋扈していることぐらいしか話せないが、女たちは興味深そうに聞いていた。


 結果、女性の参加者が他の男に目もくれず全員メグミを選び、選ばれたメグミはお断りすることになった。1回では相手が決まらなかった者を集めた2回目でも同じことが起こったため、他の男性兵士から苦情が出たらしく、メグミには3回目の案内は来なかった。こうしてメグミは、なんとか難を逃れた。


 奴隷街入りする者の男女比はそれほど大きな偏りはないが、その後の経過によって男の比率が高くなっていくのである。戦死者がもっと出ていればそうでもなかったろうが、幸い戦死者はそれほど出ていない。


 同じ案内は、部長の元にも届けられた。


 部長も高齢とはいえ独身の予備役である。死別者であればともかく、部長はこちらでは結婚した記録がない。


 お見合いパーティーへのお誘いが来たのだ、部長は舞い上がってしまった。


 目的が居所の定まらない若者の結婚奨励なので、それを理解している独身高齢者のほとんどは当然見合いを辞退し、それが認められたのだが、部長は平然と参加希望を返し、顰蹙を買いながらもそのまま見合いに臨んだのである。


 結果は言わずもがな、まず釣り書きの段階で年齢が異様に高い上、部長はアンビーの国名を知らないので申告できず、出身地不明とか怪しすぎる。

 女性の中には菓子屋の常連もいたのだが、このような場では性格が浮き彫りになるようで、それぞれの男が真剣にアピールをかます中で部長が良い男に見える状況というのは決して発生しない。


 一口に奴隷街の独身と言っても様々だが、それなりの人数はいる。だが、2回目、3回目と進んで独身女性がどんどん減っていっても、部長の相手が決まることはなかった。

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