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航海と魚料理

 陸地に停泊している船というよりも、浜に乗り上げている船と言った方が正しいだろうか。船着き場であろう桟橋がプラットホーム状に作られており、そこにホバークラフトが横づけにされていた。

 地球ではゴムでできているホバークラフトの底の部分は、動物の皮でできているようだ。もしかすると、サンキースーの皮の有効利用かも知れない。


 メグミには国の間を航行する船として大きいのか小さいのか判断できないが、長さは30mくらい、横幅は20mくらいあり、学校のプールに浮かべると少しはみ出す程度の大きさである。


 教会間を移動する客が多い航路なのか、イヲキから預かった通行証を見せると、船員らしい人が乗る場所を案内してくれた。


『こちらから乗ってください。ゲンズォさんの部屋は船倉の右の奥、メグミさんの部屋はデッキ船室の一番前です』


 何か、部長がすごい名前になっている。部長は自分の名前らしいのを呼ばれたのは判ったろうが、場所は理解できていないはずなので船倉までメグミが連れて行く。


 桟橋からはデッキに進むことができ、デッキ前方にはいくつか固定されたベンチがある。デッキ中央には中がいくつかに分かれた船室があって、さらにそのほぼ中央に船倉というのだろうか、下に降りて行く階段がある。


 下に降りると左右に分かれていくつか部屋があるようだ。一番手前の大きな部屋は食堂になっていて、厨房とテーブルが設置されているのが見える。


 メグミは部長を船倉右奥の部屋に連れて行くと、備えられていたシーツを渡し、自分はデッキの船室に入った。船室にはベッドが4つ備え付けられており、4人部屋のようだ。


 チラッと見た船倉の部屋よりも狭いが、向こうは10人くらい人がいたからこちらの方がだいぶ待遇が良い。送致者と同行者の違いだろうか。

 もしかすると、同行するメグミのためにイヲキが良い部屋を指定してくれたのかもしれない。いずれにしろ、部長と同室でなくて良かった。


 部屋で荷物の確認をしていると扉が開き、船員と思しき人が入って来た。


『ケイジョーまで同室させていただきます、宜しくお願いしまっす』

『船員さんですか、あとの二人は』

『この航海中はこの部屋を利用するのは我々だけでっす。そちら側のベッドは上下ともご自由にお使いいただいて結構でっす。

航海中夜に出歩くかと思いますが、ご勘弁を』


 4人部屋をゆったりと使えるらしい。夜中に出歩くのは魔晶石の点検補充のためらしく、この船員さんは魔術使いとしての乗船だそうだ。



「フシュオウルルルルルルボーォォォォ」


 昼過ぎ、出航の時刻。ホバークラフトは空気が抜けるような音と共に浮き上がり、ブクブクボコボコと空気の泡を吹き出しながら沖に向かって進み始めた。


「うーん、圧縮空気の魔晶石とか言っていたが、要するに魔術で動いてるわけね」


 船の速さは体感で原付バイクよりも速い。船が大きいことを考えると実際にはもっと速いのかもしれない。


 デッキ船室がすべて4人部屋だとすると、船室の数からデッキ船室の収容人員は約30名、船倉の収容定員はざっと50名、合計で80名と言ったところか。

 今回は全員で40名弱が乗船しているようだ。船員っぽい人はそのうち20名ほど、約半数が乗客と言うことになる。


 船員、乗客とも、ものの見事に男ばかりである。おばさんが何人か混ざっているが、部長がナンパする危険は全くないと思って良いだろう。


 夕刻、日が沈み空に明るさが乏しくなってきた頃、船はスピードを落とした。船員が数名、デッキ前方のベンチ周辺で釣りを始め、ほどなく次々と魚を釣り上げている。


 サバやカツオのようなものが多いが、ウナギかアナゴの様な魚もかかっているのが見える。釣り上げた魚は船倉の、おそらく厨房に運ばれていく。

 ふと海面を見ると、背鰭を海面に出した軽やかに泳ぐ影が周りに見えた。形からするとイルカなのだろうか。釣りをしている船員がイワシの様な小さい獲物を何匹か海面に放り投げてやっている。


 イルカがその魚を海面スレスレでうまくキャッチしているのが見える。


「食事ができました」


 船員がデッキや船室にいる乗客の間を声をかけて回っている。


 食事は当然、魚料理である。

 焼き魚、煮魚、魚の唐揚げ風、焼うどん。ご丁寧に、焼うどんの具にも魚が入っている。

 メグミは魚料理がは嫌いではないし、味付けも悪くないがさすがにうんざりである。

 これがおそらく明日以降も続くのだ。

 しかもサラダ風に生野菜がついているが、明日以降は生野菜は付かなくなるらしい。


 船は暗くなってきたためかスピードを落として航行中で、揺れもほとんどない。


 部長を探してみるが、食堂に見当たらない。ナンパして船室にシケこんでいる心配はないし、間違って転落していても問題ないが、メグミは念のため食後に船倉を見に行ってみた。どうやら船酔いでのびていたようだ。


 地球の船と比べても揺れの小さいこのホバークラフトで?


 ウケンからナンデまでおとなしかったのはもしかすると乗り物酔いか?


 残念ながら3日ほどで到着してしまうらしいが、1ヶ月も航海が続けばどんどん衰弱して行ってくれるのではないだろうか。メグミは航海がもっと長引かないものかと思った。


 夜は、航行すると危険であるため錨泊することになるらしく、海上で停船してしまった。


 航行(はし)っていないと安定しないのか、波に揺られて航行中とは異なり揺れが大きい。


 メグミも船酔いしたようだ。


 部長はおそらくさらに体調を崩しているだろうが、こんな揺れが続いたら自分の身が持たない。メグミは航海が長引けば良いなどと思ったことを後悔した。


 翌朝、明るくなって航行(はし)り出すと、揺れなくなってメグミは何とか体調が戻ったようだ。


 デッキで潮風に吹かれながら船員が朝食用の魚を釣るのを見ていると、フラフラの部長がデッキにやって来た。

 デッキ縁の手すりにもたれかかって海面を見ている。


 足元には巻き上げた(アンカー)とロープが巻かれており、作業中の船員が迷惑そうにしているが、全く気にしていないようだ。


(足引っ掻けて海に落ちてくんないかな)


 メグミは、積極的に()りには行かないが、事故ってくれる分には大助かりなのだ。

 そんなことを考えて部長を見つめ、落っこちろぉぉぉ、と念を送っていると、願いが通じたのか船が急制動(ブレーキ)をかけた。


 部長は手すりに掴まって「ぐえっ」と言っているが、落っこちていない。


「ふおおおおぉぉっ」


 一方のメグミはデッキで吹っ飛んだ。部長の様子をのんびり観察している余裕などない。


 メグミがようやく何事かと起き上がると、船員たちが前方を指差しながら騒いでいる。


 そちらを見ると、ホバークラフトの2倍はありそうな大きな木造の船が浮かんでいた。

乗っているのは……眼帯をして海賊帽子(バッカニアハット)を被り、上半身裸の上にベストを着た……、


どう見ても海賊だった。

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