【練習】 短編小説
星新一風ショートショート「夢装置」
この時代には「夢装置」なるものがある。この夢装置は人を睡眠に導入し、人が深層意識で望む夢を見せる機械である。そうすることで、人は目覚めよく活動できる。夢の中でストレス解消を可能とする夢のような装置なのである。
「やったぞ!完成、完成じゃー!」
若山田博士は快哉を叫んだ。彼は自費で研究機関「日本夢創造組合」立ち上げ、所長も務めている。なにより、前述の夢装置を開発・実用化する研究の一番の功労者でもあるのだ。
「これで、夢依存に苦しむ人々を救うことができるぞ。名付けてドリームインドリーム1号じゃ。」
夢装置によって、ストレス社会からの脱却に成功した日本だったが、数年前世界中を騒がす大事件を起こしていた。それが「同時多発昏睡事件」である。夢装置によって、夢の中こそが理想郷であると認識した脳が人を眠りから覚めない状態を作りだすという夢依存と呼ばれる症状を引き起こしてしまったのだ。よりストレスに悩まされていたのだろう、内閣閣僚、トップレベルの芸能人、財界の大物たちがほぼ同時期(2月第2週の出来事でドリームウィークと呼ばれている。)に昏睡した事件が「同時多発昏睡事件」である。日本中が阿鼻叫喚の地獄絵図に陥り、世界中を混乱に巻き込んだのだ。海外では夢装置はほぼ実用化されていなかったが、夢装置の影響で日本押されまくっていたためやむなく使用した海外の幾人かの大物が少なからず夢依存に陥っていたことが後になってわかっている。この事件は世界を第4次世界大戦・特大恐慌に突入させた人類史上最大の危機として知られている。
若山田博士は全ての元凶として責任を問われていたが、その頭脳ゆえに、夢依存解決のために半ば奴隷といて研究を続けさせられていた。
「金田くん、金田くん。いないのかね。」
若山田博士は大声を上げた。
「はい。なんでしょうか博士」
ドアから日本夢創造組合の副所長である金田博士があらわれた。
「実はな、夢の中の夢計画がうまくいったんじゃ。」
「本当ですか!?」
「ああ、とうとうより深層の意識を操ることに成功したのじゃ!」
「これで、これで、・・・やっと世界復興の第一歩に踏み出せますね。」
「ああ、これで星神内閣の人々と、エリクソン博士を夢依存から救うことができる。」
「はい、日本は星神内閣に、世界の放射能汚染はエリクソン博士に任せることができます。」
「ああ、あとはこの改良型夢装置ドリームインドリーム1号を使えば、人間の活動効率は3倍になるだろう。早く世界復興することを祈るよ。」
「でも、大丈夫なんでしょうか?神の創りたもうた脳を人間が操ることはやはり禁忌なのではないのでしょうか?また、あの事件のようなことが起こ」
「だーいじょうぶじゃ!今度こそ!この理論に間違いはない!うまくいく!うまくいくんじゃよ!」
このドリームインドリーム1号の仕組みはいたって簡単である。夢依存に陥った状態になった脳をさらに弄り、夢の中で夢依存にすることによって夢依存から救うのだ。ただし、夢の中で夢依存になっているとはいえ実生活に多少の障害はのこってしまう。しかし、夢依存に陥る前の人ならドリームインドリーム1号は真価を発揮する。夢依存になりそうになったとき、夢の中の夢(第2層の夢)で夢を見せることによって、夢依存の恐れなしに夢装置を使い続けることができるのだ。しかも、夢の階層を深くすることによって夢の中での夢依存をも防ぐことができるのだ。現在は第3層の夢までしかいけないが、開発を進めれば、人間が20歳から80歳まで使い続けたときの目安である第6層の夢まではいけるだろうと研究員たちは確信を持っていた
若山田博士は牢獄の中で微笑んでいた。世界ニュースで全人類文明化完了のニュースを見ていたのだ。ドリームインドリーム1号によって格段に活動効率の上がった人類は、1000年は不可能といわれていた放射能除染と、世界格差の是正をたった10年で成功させていたのだ。
「よかった、よかった。」
もう、80代になり髪のない頭を撫でていた若山田博士は喜んでいた。研究者時代は研究一辺倒でその研究の影響力をあまり意識しておらず、有能でないものは屑のように思っていた博士も10年の囚人生活で丸くなっていたのだ。
「博士、お時間です。」
「はは、もう博士号は剥奪されているよ。」
「いえ、それでも博士は博士ですよ。我々、学のない看守や囚人に教育を施してくれた恩は死ぬまで忘れませんよ。」
「はははっ。それを聴いて安心した。私も首を吊るのに不安はなくなったよ。」
「博士・・・・・・・。」
そして、若山田博士は82年の人生を終えた。
金田博士は若山田博士の死に顔を見つめている。
「若山田先生はどんな夢を見ていたんでしょうね。」
秘書の岡部女史はそう言いながら頬を濡らしていた。
「博士の死と同時に夢装置改が完成するとは何の因果なんだろうね。博士の研究ノートがなければ、この夢装置改は完成しなかった。」
「若山田先生は夢依存になるとわかっていて夢装置を使い続けていたんですよね。」
「ああ、夢依存に陥ったら、自らの体にして欲しい人体実験をメモに残してまでね。」
「でも、先生の死に顔は穏やかです。こんな顔、私には向けてくれなかった・・・・・・。」
「ぼくも見たことがないな・・・・・・・・。」
そうつぶやいた二人は静かに泣き続けた。
結局、夢装置は使用禁止になり、裏社会で密かに使い続けられているのみになった。夢装置改は夢依存の治療には用いられたが、その真価である夢依存のおそれのない夢装置の継続的な使用はされることはなかった。裏社会で流通している装置も、プロトタイプでしかなく、若山田博士の研究の結晶である夢装置改は人知れず忘れ去られていった。
みんなの作品を読んで、創作者に憧れたので書くことにしました。
後悔としてはもっと厨二くさいネーミングをつけたかったです。ドリームウィークとかひねりなさ過ぎ。2月第2週をドリームウィークにしたのはもてない男たちのためにバレンタインを潰したかったからです。