伝説の剣を取りに行っただけなのに ~この異世界クレーンゲーム、取得率何%ですか?~
たまたま表示されたクレーンゲーム動画を見て、これを異世界ファンタジーの話にしたら…
と思い、1本書いてみました。
第7作目。
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ロイは伝説の武具を求める若き冒険者だった。
ある日、彼は「紅蓮の剣」という伝説の武器の噂を耳にする。
「あんた、その剣の在処を知ってるか?」
ロイは酒場の隅で酒を飲んでいた古株の冒険者に尋ねた。
冒険者はニヤリと笑う。
「知ってるぜ」
「本当か!」
「金貨一枚な」
「情報に金を取るのか!?」
「嫌ならいい」
ロイは渋々金貨を渡した。
冒険者は受け取ると即座に懐へしまう。
「迷いの森の奥にある白亜の泉だ。泉の中央の小島に刺さってる」
「本当だな!?」
「ああ。ただし……」
冒険者はどこか遠い目をした。
「あそこには、たちの悪いヤツがいる」
「魔物か?」
「行けば判るさ…」
意味深な言葉を残し、冒険者は酒を飲み始めた。
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翌日。
ロイは迷いの森の奥にある白亜の泉へ辿り着いた。
美しい泉だった。
だが周囲には大量のイビルフラワーが咲き乱れていた。
「これか、アイツが言っていたヤツは!?」
バシィ!!
ツタが飛ぶ。
ロイは剣で切り払った。
さらに飛ぶ。
切る。
飛ぶ。
切る。
飛ぶ。
「多すぎるだろ!!」
数十分後。
激戦の末、泉の周囲のイビルフラワーは全て切り倒した。
ロイは肩で息をする。
「これで終わりか……」
すると泉が淡く光り始めた。
水面から女性が姿を現す。
黄金の髪に神秘的な衣。
泉の女神だった。
「ありがとうございます、勇敢な冒険者様」
「お、おお」
「あなたのおかげで魔物が一掃されました」
女神は優雅に微笑む。
「何かお礼をしたいのですが…」
ロイの目が輝いた。
「ならばあれを!」
泉に浮かぶ小島の中央。
世界樹の根元。
そこには10本もの剣が刺さっていた。
その中でも特に目立つ真紅の剣。
紅蓮の剣である。
「なるほど」
女神はうなずく。
だが次の瞬間女神は困ったような顔をした。
「残念ながらあの小島は聖域なのです」
「え?」
「外からは誰も入れません」
「え?」
「私であっても入れません」
「ええええ!?」
ロイは膝をついた。
ここまで来てそれはない。
しかし女神は手を打った。
「あっ」
「何かあるのか!?」
「あそこには友達のドライアードが住んでいます」
若木の世界樹の枝に絡みつく蔓がモゾモゾ動いた。
緑色の小さな妖精が顔を出す。
「キュルル?」
「彼女に取ってもらいましょう」
「おお!」
希望が戻った。
しかし女神は申し訳なさそうに言う。
「ただしひとつ問題が」
「何だ?」
「魔物のせいで、私の力が弱っていて彼女との念話が使えません」
「……」
「泉にお布施と私への祈りを捧げていただければ少し力が回復します」
「……」
「ほんの金貨一枚ほど」
ロイはここまで来たのだから、それぐらいはと、
金貨を泉へ投げ込む。
チャポン。
そして祈った。
女神が光り輝く。
「さあロイ様!ドライアードに指示を!」
「よし!」
ロイは叫ぶ。
「赤い剣!赤い剣を取ってくれ!」
ドライアードが蔓を下に向かって伸ばした。
シュルルルル。
持ち上げたのは端にあった緑色のブロンズソードだった。
ドライアードは得意げだった。
「違ううううう!!」
女神が言う。
「あの子は色の認識が少々弱くて…できれば方向で指示を出してあげれば…」
次の瞬間、女神の光が消えた。
「すみません、祈りで得た力が消えてしまいました」
二回目。
金貨投入。
チャポン。
再び祈りを。
女神再起動。
ピカァァァ!
「お待たせしました!」
再挑戦。
「右!」
スー。
「右!」
スー。
「ストップ!」
ピタ。
「ちょっと左!」
スー。
「行き過ぎ!」
「戻れ!」
「行き過ぎ!」
「なんで毎回オーバーするんだ!」
文句を言っていると、また女神の輝きが消えた。
スン。
「あっ」
三回目。
蔓が剣を掴んだ。
ガシッ。
紅蓮の剣だ。
今度こそ。
今度こそ!
ゆっくり持ち上がる。
「よし!」
「よし!」
ロイも女神も盛り上がる。
ドライアードも盛り上がる。
「キュルルルル!」
その結果、
ドライアードが喜びのあまり蔓を振った。
ブンッ。
ポロッ。
剣落下…。女神消灯…。
その後も。
「右!」
「行き過ぎ!」
「戻れ!」
「戻り過ぎ!」
「ストップ!」
「掴め!」
「木の根を掴んだ!」
「剣!」
「木!」
「剣!!」
「木!!」
一時間後。
二時間後。
三時間後。
泉の中には大量の金貨が沈んでいた。
ロイの顔は悲壮感が増し虚ろになっていた。
女神の顔は泉の底チラ見して頬が緩んでいた。
(すごい……)
(今日は儲かる……)
(泉の祠の改装工事できますね……)
そしてついにロイが気付く。
「なあ」
「はい?」
「お前」
「はい」
「わざと長引かせてないか?」
女神の顔が引きつった。
「そそそそんな」
「目が泳いでるぞ」
「気のせいです」
「めちゃくちゃ泳いでる」
「クロールですか?」
「自分で言うな」
その時。
女神が突然後ろを指差した。
「ロイ様」
「何だ?」
「後ろ」
振り返る。
そこには。
切り倒されたはずのイビルフラワーが。
モコッ。
モコモコッ。
ニョキニョキニョキ。
増えていた。
「復活してるうううう!?」
女神は冷静だった。
「日差しがあると数時間で再生しますので」
「先に言え!!」
イビルフラワーの大群が迫る。
ロイは青ざめた。
スリムになった財布。
体力も限界。
剣は取れない。
魔物は復活。
どう考えても分が悪い。
「撤退だああああ!!」
ロイは全力で逃げ出した。
それを見て、
ドライアードと女神が笑顔で手を振る。
「またのお越しをー♪」
その晩。
町の酒場。
ロイはぐったりしていた。
財布の中身は銅貨数枚。
そこへ例の冒険者がやってきた。
「どうだった?」
ロイは死んだ魚のような目で答える。
「……魔物がいた」
「ほう」
「金を取られた」
「ほう」
「何度も取られた」
「ほう」
「剣は取れなかった」
「なるほど」
冒険者は肩をすくめる。
「だから言っただろ?」
「何をだ」
ニヤリと笑う。
「たちの悪いヤツがいるってな」
ロイはテーブルに突っ伏した。
「今度会ったら絶対泣かす……」
一方その頃。
白亜の泉では。
女神が金貨の山を数えていた。
「一枚、二枚、三枚……」
ドライアードが首を傾げる。
「キュル?」
女神は満面の笑みを浮かべた。
「次回は、祈り三回に一回は無料にしてあげようかしら!♪」
その背後で紅蓮の剣は、相変わらず小島に刺さったままだった。
誰にも抜かれることなく。
いつまでも。
永遠に。
たぶん次の被害者が来るまで。
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クレーンゲームを題材にするには景品とそれを入れる大きなショーケースがいる。
箱を何にすべきかが問題でした。
結果、何人も入れない聖域(結界)という設定に落ち着きました。




