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工業都市ダンカラン

 ノズの村を出た二人は南西の都市へ向かった。

 グッドマンいわく、魔法の施錠がされた箱を開けるために魔導具師の力を借りるという。


「あてはあんのか?」

「旧友がいる。ダンカランは機工と職人の街だ。魔導具に関して頼るならあの街の他にない」

「旧友ったって、あんたは長年投獄されてたんだぜ? そんなやつの言葉を信じてくれんのかよ?」

「やつは対価さえ支払えば動いてくれる闇技師だ」

「おいおい、一番信用できないやつじゃねえか」

「逆だ。闇技師は裏世界のやり方を心得て生活している。金で動くというだけで裏世界のルールの厳しさには表の連中より敏感なのさ」

「そんなもんかねえ」


 ヴァーゴには縁のない世界だが、それ以上に品行方正に見えるグッドマンが裏世界の者と関わりがあることのほうが気になったらしい。

 魔剣デルフィンがそれを指摘した。


『元騎士団の騎士様が闇技師なんかと繋がりがあるなんて信じらんねえな』

「私も関わりたくて関わったわけじゃない。だが、この世の中は清廉潔白な人間ばかりじゃないことは十二分に学んだ。裏世界の連中にも顔を通しておくことで逆に表の治安を維持できるということも学んだ」

「クソ真面目なくせに本末転倒みたいなことをしてやがるな」

「少なくとも庶民が安全に暮らせるようにするには汚いことにも手を染める必要があるということさ」

『騎士様の言葉とは思えねえや』


 その点はヴァーゴも同感だった。

 だが、グッドマンの芯の通った正義感に一点の曇りもないのもまた事実。

 正義のために悪に手を染めるという矛盾すら受け入れているのだろう。


「見えてきた」


 グッドマンが見つめる先には大きな煙突が何本も立ち並び、黒い煙を吐き出している大きな街がどっしりと構えていた。




 街に入ると一見して特殊な街だとすぐにわかった。

 食べものを売る露店も多いが、それ以上に目立つのは鉄鋼を加工した工業製品を売買している露天商だ。

 中には一日の時間を測ることのできる時計を売っている店まである。

 他の街では中々見られない、ダンカラン特有の光景にヴァーゴは新鮮な心地になった。


「んで、どう動くんだ?」

「ついてきてくれ」


 グッドマンは表の大通りから路地に入り、入り組んだ路地をぐるぐると迷子のように移動しながら薄暗い構えの店の前で足を止めた。

 看板こそ掛かっているが、なんの店かはよくわからない。

 ここが件の闇技師の店か。


「ヴァーゴ、交渉は私がする。余計な口は挟まないでくれ」

「わーってるよ」


 古びた木製の扉を開けると、チリンチリンと鈴が鳴った。

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