オオカミ退治と 2
男に斬りつけられたグッドマンはまるでその動きを予想していたかのように身をかがめて下から斬り上げた。
「がはっ……!」
胸から血しぶきをあげて崩れ落ちる男の後ろからナイフの男が肉薄し、
「死ねえ!」
最速で突き出されたナイフの側面にコブシ大の石が当たった。
攻撃がそれてしまった男の腹を横に引き裂いたグッドマンは、
「助かる」
「とろくせえんだよ」
石を放ったヴァーゴはスキル『命取り』を発動させた。
一瞬、沈み込んだ体がその場から消え、もっとも近い男の首を背後から斬り飛ばした。
噴き上がる血しぶきの下を疾風のごとく駆け、ヴァーゴに気付いてもいない男の腹を八つ裂きにし、臓物をぶちまけた。
刹那、立ち止まって蓄えられた脚力で最後の一人の頭上に目にもとまらぬ速度で飛び上がり、力任せに頭蓋をかち割った。
オオカミだけでなく、男たちの血で真っ赤に染まった大地を見下ろしながらヴァーゴは剣を腰にもどした。
「まどろっこしい真似しやがって」
「万が一にも山賊でなかったら斬り捨てるわけにはいくまい」
「てめえの甘さには反吐が出るぜ」
『そう言ってやるなよ、相棒!』
ヴァーゴの腰もとから擁護の声があがった。
『善人を斬るのは趣味じゃねえんだろ?』
「当然だ」
「いまさら騎士道を語ってんじゃねえ」
「騎士道以前の問題だ」
監獄にいた頃からこのような善悪のやり取りではいつも平行線の二人だった。
自分の邪魔をするやつは問答無用で殺すべきと主張するヴァーゴ。
悪党でなければ極力、殺生すべきではないと主張するグッドマン。
反りの合わない男たちが手を組んでいるのは利害が一致しているからに過ぎない。
「全身から悪意をふりまいている輩が善人なわけねえだろうが」
「少しでも情報を得ようとしただけだ。服装や持ち物から得られる情報は限られる」
「失敗しちゃ世話ねえよ」
「そう言うな、ヴァーゴ。どうやら当たりだったようだぞ」
グッドマンは死体のズボンを膝上まで引っ張り上げた。
ふくらはぎにはドクロに絡みつくヘビの刺青が刻まれていた。
「ドクヘビ……!」
「こいつらの目的はおそらく洞窟の中にあるのだろう」
『相棒、ドクヘビって何だ?』
「クズどもの集団だ」
「正しくは犯罪組織だ。元は山賊の集団に過ぎなかったが、規模が大きくなるに連れて汚れ仕事を請け負う組織として活動するようになった」
『へぇー! そいつらが相棒の復讐相手ってわけかい?』
「顔に横一文字の傷を持つ男、そいつさえ殺せればいい」
「そう簡単な話ではないはずだ。私を罠にハメた商工都市ベールトルードの領主の周囲にもドクヘビは食い込んでいた」
「ケッ!」
『つまり二人は知識と情報、戦力のために手を組んでるっつーわけだな』
魔剣デルフィンが綺麗に二人の関係をまとめてくれた。
ヴァーゴの両親を惨殺した山賊集団ドクヘビはいまや大きく成長していた。
『命取り』のスキルひとつで壊滅できるほど簡単な話ではなくなっていた。




