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ノズの村

 監獄からもっとも近い北部の村、ノズの村に到着した。

 寒冷な気候から畑作より動物の毛を使った織物などの手芸品を主な生業としている村だった。


「すまない、私たちは旅をしているのだがこの村や近辺で変わったことや困りごとはないか?」


 村の入り口付近の村人にグッドマンが声を掛けた。


「なんだあんたら、ならず者か?」

「いや、私たちは剣の修行の旅をしている。モンスターや山賊などを退治して路銀を稼いでいるのだ」

「ふぅん……」


 老年に差し掛かった男はうさんくさいものを見る目でヴァーゴとグッドマンの頭から足先までをじろじろと見た。

 ならず者とは一般に冒険者のことを指す。

 定職に就かず、その日暮らしで命知らずな生き方を選ぶもののことを蔑視する者も多い。

 それこそグッドマンのように正式な騎士や兵士として職に就ければ別だが、落ちぶれた者は野盗に身をやつす者も多いため、世間一般に良い印象を持たれることはない。


「まああんたはまともみたいだから村長に話を通してやるわ」

「かたじけない」

「ついてきな」


 二人は男の後について村へ足を踏み入れた。

 すれ違う村人たちからは奇異な目で見られた。

 このような寒村ではよそ者というだけで警戒されるのが普通だ。

 髪型を整え、礼儀正しく村人たちへ頭を下げるグッドマンのおかげで事なきを得ているに過ぎない。


「チッ……、イラつく連中だぜ。見世物じゃねえんだぞ」

「言ったはずだ、ヴァーゴ。人をもっとも効率よく動かすのは暴力でも恐怖でもない、信用だ」


 監獄内で幾度となく交わされた会話でグッドマンは礼儀作法の重要性を説いていた。

 そして信用を勝ち取るためには忍耐が必要だ、と。

 実際に看守の信用を得たグッドマンのおかげで脱獄できたヴァーゴは腹立たしげに地面を蹴った。


「ちょっと待っていろ」


 男はある家の前で止まり、中へ入っていった。

 すぐに戻ってくると二人に中へ入る許可を与えた。

 グッドマンが礼儀正しくノックをしてから入ると、杖をついた老人が待っていた。


「私はこの村の長をしております。あなたたちが旅の方ですか?」

「立ち入る許可をいただき感謝します。私はウィリアム・ゴートマン。こちらはヴァーゴ。ともに剣の修行のため旅をしております」

「ふむ、あなたのように丁寧な言葉遣いの方はめずらしいですな」

「ならず者と一緒にされては困りますからね。依頼を受けて路銀を稼ぐにも礼儀は大切です」

「ごもっともですな」


 村長の男は二人にイスへ座るようすすめた。

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