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光明

 数ヶ月が経ち、ヴァーゴはミーアが仕入れた情報を度々ターンウッド商会に持ち込んでいた。


「ほぉ、今度は陶器の取引か。こいつも買収して俺たちが流通させるか。しかし、お前もよくこんなに有益な情報を持ってこられるもんだな」

「マーカス商会のお偉いさんも裏切り者には警戒してる。だが、冒険者は生きるか死ぬかの生活をしてきたんだ。いかにずる賢く生き抜くかに関して、商人ごときに遅れは取らねえぜ」

「へっへっへ、血も涙もねえ野郎だぜ」

「商売だって生きるか死ぬかが懸かってるんだろう? 俺に言わせりゃ、こんなのはまだまだ序の口だ」


 ターンウッド商会の会長デミスはグラスのワインをぐいぐい飲んだ。

 グラスを空にし、ヴァーゴの顔をじっと見つめた。


「ヴァルゴ、ターンウッド商会のことはどれだけ知ってる?」

「マーカス商会の商売敵、あくどいことも平気でやる」

「それだけか?」

「これは俺の勘だが、あんたらの裏には何かがいる気がするぜ。聞いた話だが、この商工都市ベールトルードには王都から王国騎士が監査役で派遣されてるんだろ?」

「よく知ってるじゃねえか」

「そいつが目を光らせていながらあくどい商売ができる、っつーことは王国騎士を黙らせることができる手段があるはずだ。武力によるものか権力によるものかは知らねえがな」

「お前は頭も回るな。いいねぇ、ますます気に入ったぜ」

「で、それがどうかしたのか?」

「お前の働きが上の人にも認められてきてな、一度お前の顔を見ておきたいと言われたんだ」

「へぇ、俺も高く買われたもんだ」


 ヴァーゴは直感的に領主ヒューネルのことだと理解した。

 ドクヘビ幹部のエミストは武闘派とのことだから余程のことがないかぎり金儲けの話には直接、首を突っ込んでこないだろう。

 数ヶ月にもおよぶ潜入工作がいよいよ実を結ぶ時がきた。


「来週、その方がお見えになる。簡単な面通しだからあまり気負うなよ。それと決して気分を害するようなことはするんじゃねえぞ」

「わかったよ」


 ヴァーゴは席を立ち、デミスの屋敷を後にした。




 宿にもどり、グッドマンたちに事の次第を説明した。


「いよいよか。ヴァーゴ、もう少しだけ辛抱してくれ」

「わーってるよ。いきなり斬り付けたりはしねえ」

「領主のヒューネルは用心深い男だ。顔合わせはまだゴールではない。奴の信用を勝ち取り、奴と直接、交流が持てるようになってからが本番だ」

「はぁ……。こんなかったるい作戦になるとは思ってもみなかったぜ。いっそこのままマーカス商会でまっとうに働いてみっかな」

「ほっほっほ。小僧も面白い冗談が言えるようになったの」とゴランが笑う。

「それは困る。私の復讐が終わるまで付き合ってもらうぞ、ヴァーゴ」

「冗談に決まってんだろうが。俺が商人なんつー柄かよ」

「にゃっはっは~! その悪人顔で商人は無理があるにゃ~」


 グッドマンの長い時間をかけた復讐計画に光明が見えたことで、みんなの軽口も弾んだ。

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