作戦準備
一行がベールトルードに着いてから一週間。
ミーアによる諜報活動が終わり、情報が揃った。
「さて、復讐についての計画だが、今回は長丁場になる」
「真っ先に向かって殺すんじゃねえのか?」
「この街はドクヘビの支配下にあると言っても過言ではない。手下だけでも軽く千人は超えるだろう。復讐は確実に行う。そのために必要なら回り道もする」
「確認だが、ウィリアムの仇は領主のヒューネルではなく、ドクヘビ幹部のエミストでいいんだな?」
「ああ、問題ない。やつは武闘派の幹部だ。邪魔の入らない状況で確実に仕留める」
「待てよ。ミーアの報告だと領主も悪徳なんだろ? その野郎も絡んでるんじゃねえのか?」
「ヒューネルはずる賢いが馬鹿ではない。監査役として王都から派遣された王国騎士に直接、手を出すような愚かな真似は絶対にしない。よって私への仕打ちはエミストの独断だ。腐っても領主としての地位を捨てるはずがないからな」
「王国騎士に手を出すということは、ひいては王家に反逆するも同義だからの。ウィリアムの見立てで間違いないだろう」
政治的な関係とやり取りはヴァーゴにとって埒外だ。
二人の言葉を信じるしかない。
「で、長丁場ってのは何するんだ? 観光でもして待っていればいいのか?」
「残念だがヴァーゴ、君にそんな暇はない」
「ああ?」
「はい! これ大商人からの推薦状にゃ!」
「おいグッドマン、どういうことだ?」
「顔を知られている私は表立って動けない。年齢や性別を考えるとゴランやミーアも適さない。ヴァーゴ、今回も君に動いてもらう」
「人遣いの荒い野郎だ」
「この街には領主とドクヘビの息のかかったターンウッド商会と、その商売敵である、実力だけでのし上がったマーカス商会がある。君にはその推薦状でマーカス商会に潜ってもらう」
「俺が商人って柄かよ」
「引退した冒険者が商人になっても不自然ではないさ。それに君の役割はこの街の商会に顔を売ることだ」
グッドマンは推薦状を指さした。
「君はこのマーカス商会で働いてくれればいい。タイミングを見計らってミーアが用意したものを君がターンウッド商会に持っていく。そこからコネを作る」
「ったく! 気のなげえ話だぜ」
「君が不真面目な商人だと知れればターンウッドの連中は君を利用しようとするはずだ。両商会を行き来するうちに使える人材だと分かれば、上との繋がりもできてくる」
「チッ、めんどくせえ」
「これは君にしかできないことなんだ。頼む」
「わーってるっつーの。やりゃあいいんだろうが」
「君にはつくづく世話になるな」
「やめろ。ケツがむずがゆくなるぜ」
大まかな作戦は決まった。
グッドマンの復讐計画に向け、ヴァーゴは畑違いの商人へと転向することとなった。




