商工都市ベールトルード
四人はそれぞれの鍛錬を積みながら南下し、グッドマンの仇敵が巣くう街、ベールトルードに着いた。
ヴァーゴとゴランは門番に通行料を支払い、大きな城門をくぐった。
「私は顔が割れているからな。ミーアの案内で金を掴ませている門番を使って裏から街へ入る」
ヴァーゴらと別のルートで街へ入っているはずのグッドマンとは宿で落ち合うことになっている。
「へえ、大層な街じゃねえか」
「わしも初めて来たが、中々ににぎわっているようだな」
通りを眺めながら歩く二人は街の活気に驚いていた。
退廃的な空気がただよう歓楽都市エクサリドと比べると、この商工都市ベールトルードは陽気な活気に満ちていた。
商売が盛んな街だけあり、露天商や行きかう人々も明るい表情をしている。
ヴァーゴは露店で瑞々しい果実を購入し、かぶりついた。
「とても裏があるようには見えねえな」
「光の強いところには濃い闇ができる。表がにぎやかな分、裏はもっと闇深いのだろうさ」
「そういうもんかね」
二人はベールトルードの街並みに感想を述べ、待ち合わせの宿へ向かった。
そこは場末の宿だった。
にぎやかな大通りから外れた場所で、正体を隠したいグッドマンが宿泊するにはうってつけだった。
「待たせてすまなかった」
部屋に入ってきたグッドマンは目深にかぶっていたフードを脱いだ。
すでに部屋には三人が揃っている。
念には念を入れてヴァーゴはゴランと、ミーア、グッドマンは単独で行動することにしていた。
グッドマンは険しい表情でテーブルに手をついた。
「いよいよ私の復讐が始まる。皆の助けを心強く思っている」
「おいおい、まだ復讐が成功すると決まったわけじゃねえんだ。気の抜けたこと言ってんじゃねえ」
「そうだな。だが、ここからが正念場だ。事を始める前に感謝を伝えておきたかった」
「気負ってるとこ悪いが一つだけ言っておく。この街に着いてから感じていた『予兆』だ」
ヴァーゴの『予兆』という単語に三人は無言で続きを催促した。
「この中の誰かが死ぬ。最低でも大怪我を負う。危険、というより警戒の『予兆』を感じた」
グッドマンからヴァーゴのスキル『予兆』について話を聞いていたゴランは眉一つ動かさず、ミーアはごくりとツバを飲み込んだ。
「脅かすつもりはねえし、必ずしも『予兆』が当たるとは限らねえ。だが──」
「覚悟していたことだ。むしろ私は刺し違えてでも怨敵を殺す。その『予兆』が確かなら死ぬのは私だ」
「死を覚悟するのは必要だが、命を粗末にするのは違うぞ、ウィリアム」
「ああ、それも分かっているつもりだ」
「あー、あたしは諜報活動がメインだからたぶん大丈夫、きっと大丈夫だにゃ~」
ミーアだけは自分に言い聞かせるように乾いた笑いをあげた。
それ以外の三人は、この旅に命を懸けている。
誰が死ぬとしても、それを受け入れる覚悟は決まっていた。




