尋問
部屋にはラガスのみが取り残されていた。
一瞬で血の海と化した光景に、ラガスは完全に腰を抜かしていた。
「さあて、尋問の時間だ」
「私がやる」
控えていたグッドマンは剣を抜き、ラガスの眼前に突きつけた。
「答えろ。顔に横一文字の傷を持つやつはどこにいる?」
「き、きず? し、知らねえよ!?」
グッドマンは軽く剣を振り下ろし、ラガスの耳を斬り落とした。
「ぐあああああ!」
「嘘をつくのはやめろ」
「ほ、ほんとに知らねえ!」
「傷持ちの男はドクヘビがまだ山賊集団だったころからの古株だ。幹部にでもなっていれば何か情報を知っているはずだ」
「ほんとに知らねえんだよ! 幹部っつったって、俺は新参で他のやつらと大して面識もねえ!」
「名前も知らないのか?」
「知らねえ! ただ、昔からの古参なら幹部にはなってるだろうし、幹部ならどこかの街の支配に関わってるはずだ! ……そうだ! 商工都市ベールトルードにいる幹部、エミストなら古株だから知っているはずだ!」
「エミスト……」
グッドマンは無感情にその名前をつぶやいた。
今度はヴァーゴが剣をつきつけ、
「他にドクヘビについて役に立つことを教えろ」
「ほんとになんも知らねえよぉ! 俺はこの街で金を稼いでベールトルードに資金を流すのが仕事だ!」
「街に出回っている麻薬については?」
「ま、麻薬? ベールトルードから送られてくる安酒を売れとは言われてるが、麻薬なんてもらってねえぞ!」
ヴァーゴはグッドマンと顔を見合わせた。
どうやらこのラガスという男は本当に何も知らないらしい。
ドクヘビの活動資金を稼いで組織の上層部に流すためだけの、いわば使い捨ての駒。
グッドマンはため息をついて、
「そうか。これ以上は何も知らないのだな」
「そうだよ! だから、命だけはたすけ──」
すべて言い切る前にグッドマンはラガスの首をはねた。
血を払ったグッドマンにヴァーゴがたずねた。
「エミストっつーのがてめえの仇か?」
「忘れたくても忘れられん名前だ」
「麻薬入りの酒を流したのもそいつか。筋金入りのクズ野郎だな」
「そういうやつだ」
二人は扉を開けて部屋を出た。
そこには日頃と変わらぬ陽気な表情の女獣人が立っていた。
「おっ、終わったかにゃ?」
「てめえ、いたのならなぜ加勢しなかった?」
「にゃんにゃん、あたしの仕事はあくまで諜報活動にゃ! 部屋の前を見張ってただけでも感謝してほしいくらいにゃ!」
「ミーア、後は君の案内で資金を奪取し、この街から逃走する」
「了解にゃ!」
「…………」
ミーアとグッドマンが駆けだそうとし、突っ立ったままのヴァーゴが告げた。
「わりぃ、先に行っててくれ」
「やり残しでもあるのか?」
「個人的なことだ。すぐに追いつく」
「わかった。追っ手が来ても困る。急いでくれ」
「わーってるよ」
今度こそミーアとグッドマンは風のように颯爽と駆けてヴァーゴの前から去った。
残されたヴァーゴは面倒くさそうにつぶやいた。
「ケッ、しょうがねえ」
遅れてヴァーゴも駆け出した。




