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決行

「どうした!?」


 話し合いの途中で遠くから叫び声や怒鳴り声が聞こえてきた。

 ラガスは思わずソファから立ち上がり、護衛らしき黒服の男の一人に様子を見に行くよう指示した。

 そのとき、部屋の扉が開いてドクヘビの手下らしき男が飛び込んできた。


「ラガスの旦那! フィーリッヒの屋敷が襲われてます!」

「なんだと!?」


 慌てる手下に対し、ラガスは腕を組んで考え込んだ。


「おいおい、まさか俺の話がナシになるってんじゃねえだろうな?」

「今はそれどころじゃ……クソッ! 襲ってきたのは何者だ? 手下どもを集めて対処に当たらせろ!」

「クーデター軍を名乗ってますが、ほとんどこの街の市民です!」

「市民だと?」

「やつら傭兵も雇って殺す気で来てます! こっちも殺す気で行かないと──」

「バカ野郎! 市民を殺したとあっちゃ今後カジノに遊びにくる客がいなくなるだろうが!」

「で、ですが……」


 親指の爪を噛み、イライラを隠せないでいるラガス。

 護衛の手下たちも落ち着かない様子で武器に手を掛けていた。

 そのとき、部屋の直上からドゴォン、と轟音とともに衝撃が部屋を揺らした。


「クソッ、今度はいったいなんだ……!」


 立っていることもできず、その場にうずくまったラガスは悪態をついた。

 事前に打ち合わせた通り、ゴランの援護射撃がカジノの上階を吹き飛ばしたのだろう。

 護衛たちも壁や床に手をつき、未知の襲撃に平常心を失っていた。

 ヴァーゴは立ち上がってグッドマンに視線を送った。

 グッドマンは無言でうなずいた。


「ラガス、さっきの話はやっぱりナシだ」


 魔剣デルフィンを取り出したヴァーゴは体を低く沈め、部屋に入ってきた手下にバネのように飛びかかった。


「え?」


 それが男の最後の言葉だった。

 頭の鼻から上が消し飛び、鮮血を噴き出しながら前のめりに倒れた。


「な……!」

「悪いが、誰も逃がしゃあしねえよ」


 部屋の扉を閉めたヴァーゴはデルフィンを軽く振り抜き、デルフィンに付着した血を払った。

 ラガスは口を大きく開いて唖然としていたがすぐに正気を取り戻し、護衛の部下に大声で命令を下した。


「お前ら! はやくこいつを殺せ!」

「おせえよ」


 武器を手にヴァーゴに襲い掛かろうとした黒服や粗野な格好の手下たち。

 だが殺すと判断したのはヴァーゴのほうが圧倒的に早かった。

 判断してからのヴァーゴの動きは常人が目で追えるものではなかった。


「『半年』」


 一言つぶやいたヴァーゴの筋肉で盛り上がった脚はすでに石床を蹴っていた。

 瞬きする時間もなく、先頭の黒服の懐に入り込んで股下から頭蓋骨までを強引に斬りちぎった。

 肉片が落ちる間もなく、背後のドクヘビの手下の首、胴体、腰を横に三度、切り裂き、続く手下のわき腹から肩までを力任せに斬り刻んだ。

 三人分の肉片と内臓が石床に散らばり、血の海が広がった。


「なに、が……」

「おせえおせえ」


 続く手下を頭から股下まで叩き斬り、その次の手下も縦横に切り裂いてバラバラにした。


「ひぃ!」


 ラガスの悲鳴があがった次の瞬間には手下どもは肉の塊と化していた。

 ヴァーゴの圧倒的な力とスピードでラガスを護衛する者はすべて物言わぬ骸となり果てた。

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