万年雪の監獄 2
獄長の部屋へ向かう道中、鉢合わせた看守はすべてグッドマンが斬り捨てた。
使えるものは彼のスキル『アイテムボックス』に収納し、ヴァーゴにも剣を与えた。
「ここで俺が背中から斬り付けるとは思わないのか?」
「私を殺せば君も死ぬ。監獄を出られても外は吹雪だ。飢えと寒さには耐えられまい」
「あんたには吹雪の中を抜ける算段があるってのかい?」
「私の持ち物に防寒の魔道具がある。私専用に設定された代物だ。密着して歩けば君も寒さに凍えることはない」
「野郎と密着なんて勘弁願いてえな」
「着いたぞ」
監獄の最上階。
一番大きな両開きの扉をグッドマンが蹴破った。
破砕音に驚いて振り向いた、丸々太った巨漢は両手いっぱいに宝石を握りしめていた。
「貴様っ、騎士団の裏切り者の……!」
「天誅!」
部屋に飛び込んだ勢いのまま斬り付けたグッドマンの剣撃を、しかし巨漢の獄長は腰から抜いた剣で受け止めた。
飛び散る火花。
一見すると錆び付いているようにも見える褐色の剣。
グッドマンは目をみはった。
「魔剣か……!」
「貴様ぁ! 邪魔をするんじゃねえ!」
力任せに振り抜いた勢いで飛ばされたグッドマンはたやすく着地し、剣を構え直した。
「押されてんじゃねえか。助けが欲しいかい?」
「そのために連れてきた」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ!」
怪力で振り下ろされた剣を避ける二人。
行き場を失った一撃はそのまま地面に穴を開けた。
当たれば即死だ。
だがグッドマンは怯むことなく、王国騎士団の剣技に忠実な剣撃を打ち込んでいった。
「くっ、この裏切り野郎……!」
力では圧倒的に不利だが、グッドマンの洗練された剣技の連携に獄長は防戦一方だった。
「豚は串刺しに限るよなぁ!」
グッドマンの背中を飛び越えたヴァーゴが空中から剣を振り下ろした。
ギリギリで防ぐも、その隙を見逃すグッドマンではなかった。
最短の動作から繰り出された突きの一撃ががら空きの胴体に突き刺さる。
「ぐああああ!!」
出血しながらも横薙ぎに剣を振りまわす獄長から二人は距離を取った。
『アイテムボックス』から次の剣を取り出したグッドマンは小声でささやいた。
「ヴァーゴ、君が仕留めろ」
いっきに距離を詰めて繰り出される二度目の突き。
痛みに狂乱する獄長は胸を貫かれながらも褐色の魔剣を振り下ろした。
いや、振り下ろそうとした。
魔剣が実際に振り下ろされるよりも速く、俊足で駆けたヴァーゴの剣が巨漢の首をはねていた。
噴き上がる血しぶきから目を守りながら、
「それが君のスキル、『命取り』か」
「ああ、俺が『命取り』のヴァーゴだ!」
首を失った胴体を蹴倒し、返り血に塗れたヴァーゴはニヤリと笑った。




