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カジノ荒らし 2

「ルールは通常のカードと同様です」

「で、何を賭けるんだい?」

「おお、そうでしたね。やはり賭け金がなければ盛り上がりに欠けますか。それでしたら賭け金の最低額を金貨百枚からとしましょう」

「ひゃ、ひゃくまい!?」


 ギャラリーと化したグッドマンがわざとらしく驚いてみせた。

 テーブルに着いているヴァーゴはレトルの表情を読み取った。

 そこにはすでに穏やかな副支配人の顔はなかった。

 純粋に勝負を楽しむ、などという気配すら微塵もない。

 イカサマで巻き上げたカジノの売上金を奪い返しつつ、とことんまで喰らいつくそうという獰猛な肉食獣のような欲求がにじみ出ていた。

 ヴァーゴにとってはいい迷惑だった。

 イカサマをしたのではなく、イカサマを見破って大勝ちをしただけなのだから。


「構わないぜ。最初は百枚からいくか」

「よろしいでしょう」


 ディーラーを兼ねるレトルは慣れた手さばきでカードを配った。

 ヴァーゴは配られたカードを最小限の仕草で確認する。

 手札は悪くない。

 テーブルに置いた手の人差し指をあげてカードを一枚引く。

 レトルも一枚引く。

 いざ、オープン。


「初戦はわたくしの勝ちのようですね」

「ケッ、ついてねえぜ」


 カードを指ではじいて悪態をついた。


「まだまだ、勝負はこれからですよ」


 不遜な笑顔でレトルの一方的なゲームが始まった。




 初戦から数えてレトルが十六連勝したところでヴァーゴが声を掛けた。


「あんた、ずいぶん上手いな」

「ええ、これでも幸運の星の下に生まれたと自負しております」

「いいや運じゃねえよ。あんたのカードさばきは筋金入りのそれだ」


 ギャンブルにおいて十六回連続で勝利するということはもちろん起こりうる。

 確率とは偏るものであり、その偏りを読んで楽しむのがギャンブルだ。

 だが、レトルの場合は違った。


「このカジノではイカサマはしてるのかい?」

「まさかまさか、そのようなことは一切しておりませんよ」

「それはつまり、あんたもしてねえってことでいいんだな?」

「もちろんでございます」


 ヴァーゴの噛み付くような視線に対し、レトルは顔に貼り付けた笑みで堂々と受け流した。

 ヴァーゴは鼻を鳴らし、


「ま、犯罪もバレなきゃ犯罪にならねえからな」

「……どういう意味でしょう?」

「証拠がなけりゃ、イカサマしても問題ねえってことだよ」


 レトルは貼り付けていた笑顔から無表情に変わり、


「心外なことをおっしゃいますね。まるでわたくしがイカサマをしているかのような口ぶりだ」

「ああ、してるね。間違いねえ。あんたは確実に、堂々とイカサマをしてやがる」

「証拠でもあるのですか?」

「そんなもんはねえ。俺の勘がそう言ってる」

「くっ……ハハハハハハハ!」


 よほどおかしかったのか、大声で笑うレトルは目尻に涙まで浮かべていた。


「そんなでたらめな言いがかりを付けられたのは初めてですよ!」

「まあ、そうだろうな」


 笑いころげるレトルに、しかしヴァーゴは余裕たっぷりの傲慢な笑みを浮かべて言った。


「それなら俺にディーラーをやらせな」

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