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カジノ潜入作戦

『似合ってるぜ、相棒!』

「黙りやがれ」


 デルフィンの軽口はヴァーゴの身なりに向けられたものだ。

 旅人の装束の上から金色の刺繍が施された、いかにも金持ちを顕示するためのマントを羽織っていた。

 それは同行しているグッドマンも同様で、彼もまた見た目だけ派手な真っ赤なマントをまとっている。


「いらっしゃいませ」

「初めて来た。遊べるかな?」

「もちろんでございます」


 領主の屋敷の隣に建てられた巨大な高級カジノ。

 庶民が遊ぶには華美な建物で、こちらは入場料として少なくない金を納めなければ入ることすらできない。

 逆に言えばこの場にいる客はすべて貴族や商人といった懐に余裕のある者ということになる。

 ちらと見回してみても、目に入るのは質の良い服に身を包んだ者ばかりだ。


「賭け事は初めてですか?」

「初めてだ。カードなどで遊ぶとは聞いているが……」

「そうですね、手始めにカードで遊ばれるのが良いと思います」


 従業員の男は満面の笑みでグッドマンたちをカードの区画へと案内した。

 一つのテーブルにディーラーが一人、客が四人まで座れるテーブルが用意されていた。

 近くのテーブルで歓声をあげている太った男、遠くの席で頭を抱えている白髪の男。

 天国と地獄を隣り合わせで味わえるギャンブルはそのスリルにのめり込む者も多い。


「連れは見学でもいいかな?」

「もちろんでございます」

「さて、それでは楽しませてもらおう」


 グッドマンはいかにも何も知らない成金然とした口ぶりで席に着いた。

 ヴァーゴは背後に立って見学だ。


「ルールは簡単でございます。カードに書かれた数字の合計が、目標の数字に近いほうの勝ちです」

「おお、それは単純明快だ!」

「やってみたほうがわかりやすいでしょう。最初は金貨一枚から始めるのがオススメです」


 グッドマンは言われた通り金貨を一枚テーブルに置き、配られたカードを食い入るように見入った。


「うーむ……」

「追加のカードを引くこともできますが、目標の数字をオーバーしたらその時点で負けです」

「ルールは単純だが、判断が難しいなぁ」

「最初は気楽に引いてみてはどうでしょう? 何事も経験です」

「うむ、そう言うのならもう一枚カードを引こう!」


 ディーラーの口車に乗せられ、グッドマンの前にカードが配られた。

 めくってみると、追加のカードの数字を足してグッドマンの手札は目標の数字にピタリと一致した。


「おお! 目標と同じ数字になったぞ!」

「すばらしい! おめでとうございます!」


 ディーラーは拍手をしながらカードを回収し、グッドマンに金貨二枚を払い戻した。


「お客様は幸運の女神に愛されておいでですね」

「ハッハッハ! こんな簡単に金が稼げるなんて! もっと早くカジノに来るべきだったな!」


 グッドマンは見事に調子に乗り、次は金貨二枚を賭けた。

 またしてもゲームに勝利したグッドマンは四枚の金貨を手に入れた。


「お客様は大変お強いですね。わたくしも頑張らなければ支配人に怒られてしまいます」

「そうだぞ君! 頑張らないと私がこのカジノをすっからかんにしてしまうぞ!」


 興が乗ったグッドマンはビギナーズラックで勝ち越す男としてギャンブルにのめり込んでいった。

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