魔導具師ゴラン
薄暗い店内には奇怪な形をした工業製品が棚に並んでいた。
奥にカウンターがあるが店員がいない。
グッドマンはカウンターに腕を置いて、奥へ向かって声をかけた。
「今日の雨は良くないな。製品が錆びちまう。手入れをするならオイルが必要だ」
それは何かの合言葉のようだった。
すこしすると店の奥から小太りな老齢のドワーフが姿を現した。
「なんじゃ、誰かと思えば……生きておったのかい」
「ひさしぶりだな、ゴラン」
「とっくにくたばったと思っておったぞ」
「どれだけやつれようと目的を果たすまで死にきれないさ」
どうやらゴランというドワーフがグッドマンのいう旧友らしい。
グッドマンは『アイテムボックス』から鉄の箱を取り出した。
「魔法で施錠されている。魔導具師の君なら何とかできるのではないかと思ってな」
「魔導具師は魔法使いじゃないんだぞ」
「魔力を持たない私からしたら似たようなものさ」
「へっ、高く買われたもんだ」
ゴランは汚れたオーバーオールから片目用の拡大鏡を取り出した。
グッドマンから受け取った鉄の箱に焦点を合わせると、器具は部分ごとに自動的に伸び縮みし、うっすらと青みがかった輪がレンズの前に浮かんだ。
どうやら鑑定に用いる魔導具のようだ。
「どうだ?」
「ふむ、魔法自体は大したもんじゃないな。よくあるやつだ」
「なら頼めるか?」
「裏ルートで解錠の魔法が使える魔法使いに依頼するんだ。安くはないぞ?」
「幸い、金には困っていないんだ」
グッドマンは『アイテムボックス』から宝石の山を取り出した。
監獄の獄長の部屋でついでに奪ってきたものだ。
「おいおい、ギルド強盗でもしたのかい」
「ははは、まさか! 綺麗なものではないが金は金だ」
「あんたも世渡りが上手くなったもんだ」
「そうでなければ生き残れなかったからな」
ゴランは宝石の山から二つほどを鑑定して依頼料として受け取った。
グッドマンは依頼料とは別に、宝石を使いやすいように金貨に両替してくれるよう頼んだ。
ゴランは嫌そうな顔をしたが渋々、承諾した。
裏の世界では違法な取引でもルールさえ守れば道理を引っ込めて無理を通すことができる。
多額の財産を宝石として所有するのは金持ちくらいだ。
旅人を装っているグッドマンにとって宝石より金貨のほうが扱いやすいわけだ。
「どれくらい掛かる?」
「早くて一週間だな」
「ではその頃にまた顔を出そう」
グッドマンは頼んだ、と会釈して踵を返した。
ゴランはヴァーゴをちらと見ただけで二人を見送った。
不必要な詮索はしない。
それもまた裏の世界のルールだ。




