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剥がれていく。
剥がされていく。
それは決して見せてはならない己の性をむき出しにしていく。
ああ、なぜそんなに厚顔なのだろう。
ああ、なぜそんなに不感なのだろう。
ああ、なぜそんなに道化ていられるのだろう。
人面を喰む虫たちよ。
人がましい声で囃し立てるな。
人がましい仕種で煽り立てるな。
うるさいわめくな囀ずるな。
だまれだまれだまれ。
それ以上、耳障りな雑音で、繕った皮を剥ぎ取っていくな。
剥がれていく。
剥がされていく。
暗く淀んで腐り始めた肉の下に隠れた己の性が産声をあげてしまう。
深みに落ちて、眠ったはずの、見てはならない己の性が笑いだしてしまう。
ああ、なぜそんなに不遜なのだろう。
ああ、なぜそんなに傲慢なのだろう。
ああ、なぜそんなに畜生なのだろう。
人面を喰む虫よ。
眠っていろ。さすれば全て淀みゆくまま、腐りゆくまま、なにもかも過ぎ去り風化していくのだろうか
ら。
鮮やかに穢れた世界から目をそらし、耳を塞ぎ、口を閉ざしてしまえばいい。
虫に身を委ねなければ己は人のままでいられるのだから。
けれど。
餌を与えられぬ虫は腹を空かせて獲物を求めるものだろうと囁く声がある。
なにより、それでは報われぬ者が報われぬままだと。それでよいのかと問い質す声がある。
至極、道理で、筋があり、なにより、それを最も欲しているのは己ではあるまいか。
ああ、うるさい。
頭の中でカサカサと音がする。
逃れられないそれは内なる我が己の声音。
ああ、喰われていく。
人であった己から、害なす蟲そのものの己へと。