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第12話 皇帝への報告3



「と、いう訳でして……」


宰相の報告に皇帝は頭を抱えて俯いた。


「……で、その後どうした」


「余りにも追加犯罪者がわんさか集まっていたので纏めて輸送する為に宮廷魔法士を派遣して移動魔法で……」


「そっちじゃないんだよ……」


「ああ、証言者でしたら事件性も被害も無いようでしたのでそっとしておく事にしました。その格好を人に見せつけることに目覚めてしまったら立派な猥褻罪の罪人ですが、彼が本当の意味で解放できる世の中にはまだ遠いので幸い……」


「そっちでもないわ! 君、分かっていて話逸らしてるよね??」


皇帝と目を合わせず明後日の方向を見つめる宰相。その態度からもう答えは出ているようなものだった。


「……また居なくなったのか……」


「……事件が解決したからなのか変質者を暴き出したから興味が違う方に行ったのか計りかねますが、騎士団が到着した時には破れた上着とズボンが残されていたそうです」


「……それは残っていては不味いのでは……?」


「まぁ、良くはありませんね」


「はぁ……もう、何処で何をして……いや、どんな格好で居るんだよ彼は……」


彼が一体何処で、どんな格好で何をしているのか……皇帝には何一つ分からなかった。


月から零れ落ちた雫のように美しい容姿、その目の奥で何を思い誰を見ているのか……一切分からない。

月は追いかけても追いかけても触ることは出来ないが、逃げても逃げても追いかけて来るのだ。黒い雲の隙間から、人の本質をただ静かに見つめている……


「……いや、そんな崇高な話ではないか。はぁ……もう…………」


今もまた何処かで微笑んでいるであろう月光の騎士を思い、皇帝は胃がキリキリと締め付けられた。


皇帝の胃痛も虚しく、報告書が減り彼が帰って来ることはなかったのだが……。

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