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第68話 ようこそ地獄のBOOTCAMPへ

 ひと月に一度行われる恒例のファルムス王国騎士団と領内の神官団との合同演習。

 今日は第1日目だ。

 一日の演習を終え、そろそろ夕食の準備をしようかという時間帯。

 20名ほどの男女が、ボロボロの状態で帰還した。

 ガーネット率いる海軍選抜部隊だ。

 打倒フランツを掲げ、アキュフェースの用意した特別メニューをこなしている。

 食事はおろか休憩もトイレの時間さえも無い過酷なものだ。

 へばっても強制的に回復魔法で体力を戻される。

 強制的に魔物狩り、レベルアップ酔いでもお構いなしに、回復魔法で強制的に癒される。

 頭の芯がくらくらしてても関係なく魔物狩りが続行される。

 体より精神の方が悲鳴を上げてる状態だ。

 打倒フランツ、この目標が無ければ、当の昔に心は折れている。


「生きてるかい、ガーネット」サマンサが声をかける。


「なんとか、まだ頭の芯がくらくらする。サマンサこそ大丈夫?」


「確かにくらくらするが、吐くほど酷いもんじゃない」


 今回参加した海軍選抜組は、大なり小なりこんな感じだ。

 用意された天幕にたどり着くと、靴を脱ぐのも忘れて寝台の上に倒れ込む。

 もう何もしたくない、食事さえ面倒に感じる。

 実際、眠りに落ちるのにそう時間は掛からなかった。



              **********



 2日目は、基本職がスキルマスターに成った者を神殿に連れて行って転職させる。

 ガーネット、サマンサも含めた殆どの海兵が、これに該当する。


 フェリペ、フランシスコ、パンザの3人は基本職をカンストして、レベルも50台に居るので、これから試練の塔に挑んでもらう。

 試練の塔は基本職が条件を満たしていて、LV40あれば受けられる。

 しかし、確実に突破するためにはLV50はいる。


 勿論、全員転移魔法による送り迎えだ。


 ガーネットたちに、俺たちが戻ってくる間、選抜に漏れた海兵たちと一緒にシスアの森外縁部での魔物狩りを指示した。


 俺は3人を連れて試練の塔へ。

 午前中いっぱい掛かったが、3人とも試練の塔を突破した。

 フランシスコがバトルマスター、パンザが魔法戦士、最も意外な選択をしたのがフェリペだ。

 フェリペは賢者を選択した。

 魔法職最強のジョブではあるが、スキル習得が最も遅い欠点がある。

 打倒フランツを掲げるなら、当然戦士職と思っていたから。


「フェリペ、何で賢者を選んだか、聞かせてくれないか?」


 俺は疑問をフェリペにぶつける。


「大した理由はありません。アイツとるまでにあと2~3回の試練の塔突破は必要でしょう。相手はまかりなりにも限界突破者です。最初に面倒なものを済ませて、後で戦士職を極めた方が良いと思っただけです。それに賢者のスキルも呪文も、ガーネットを守るのに有益だと思ったからなんですが」


 フェリペの答えに、なるほどと得心する。


「さすがシスコン、病み方が半端ねえな」


 フランシスコがフェリペを揶揄う。


「うるせえぞ、脳筋」


 フェリペがフランシスコに返す。


「とにかく帰ったら昨日の続きだ。シスアの森の奥へ行くぞ」


「今日ぐらい休ませて欲しかったぜ」


 俺の言葉にフランシスコが反応して、フェリペに根性無しと揶揄われる。

 俺たちは転移魔法でシスアの森に戻った。



              **********



 シスアの森に戻ってみるとガーネットの周りに、アルメニア騎士の人垣ができていた。

 何事かと思い、ガーネットの元へ行く。


「ガーネット指令、俺たち応援してます。あの腐れ頭に正義の鉄槌を与えてください」


「俺たちも負けない様に頑張ります。

 誰が一番先に、あの馬鹿の頭をカチ割れるか、競争ですね」


「俺たちだって、あの腐れ頭に言いたい事は山ほどあるんです。

 結婚を決めてた彼女を寝取られた恨み、絶対に返します」


「ガーネット指令、あなたが私たちの上司だったら良かったのに」


「まったくだ、ホントあの腐れ頭と交代して欲しいぜ。

 ホント海軍連中が羨ましいぜ」


 フランツ直属の騎士たちの応援コメントが鳴り止まない。

 フランツ、おまえ、どれだけ人望が無いんだよ。


 俺は、パンパンと手を叩く。


「お前ら油を売ってないで、訓練に戻れ」


 騎士たちへの解散を告げる。


「さて、軽く食事をしてから、第2ラウンドといくか」


 保存食の簡単な食事を済ませると、転移魔法で昨日の場所まで転移した。


 昨日同様、魔のレベリングが開始された。


 それが無事終了すると、フランシスコがガックリと膝を落とす。


「こんなのがあと三日も続くのかよ。正気の沙汰じゃねえぜ」


 二日目も無事終わり、フランシスコも弱音を吐いた。


「情けねえ、昨日よりずっと楽だろう」


 珍しくパンザが応じる。

 確かに、時間は半分、今日はレベルアップ酔いもなかった。


「折れるのは勝手だが、俺の邪魔はしないでくれよ。

 俺は奴にオトシマエをつけさせる、それだけが目標だからな」


 フェリペが自分に言い聞かせるように言う。


「誰が折れるか!すまん、らしくない事を言った」


 珍しくフランシスコが詫びた。

 フランシスコが愚痴りたくなるのも分かるほど。みんなボロボロの状態だ。

 レベルアップ酔いがなかったフェリペたちと違い、レベルアップ酔いの洗礼をまともに受けたガーネットとサマンサは特に酷い状態だった。


「ガーネット、大丈夫か?」


 そう言うとフェリペはガーネットに肩を貸す。


「ったく、これだからシスコンは・・サマンサ捕まれ、俺で良ければ肩を貸すぜ」


「ありがとうよ、気持ちだけって言いたいが、悪いが頼むよ」


 二日目もこんな調子で、キャンプ地に戻った。


 海軍選抜組は、死ぬ思いで五日間の魔のロードを乗り切った。


 グランバニアに戻り、ほっとしたのもつかの間。

 更なる特別メニューが、ガーネット達を待っていた。



                **********



 次の朝からの訓練メニューは、まず簡易太極拳、その後砂浜のランニング。

 砂浜の波打ち際のランニング、やると分かるが結構キツイ。

 その後20秒ダッシュ、20秒歩く、また20秒ダッシュ、そして20秒歩く。

 これを砂浜で何度も繰り返す。

 ここまでが準備運動。


 海軍本部の室内練武場にマットを敷く。

 マットは学校の体育の授業の時に使うマットだ。

 本当は畳が良かったが、井草イグサがないので諦めた。


 何を始めたかと云えば、柔道だ。

 モンクのスキルは立ち技打撃系のモノばかりなので、投げ技、関節技を身に付けた方が良いと判断した。

 まずは受け身から。

 受け身を莫迦にしてはいけない。受け身がしっかりとれないと、投げられた時硬い地面だとしたら大怪我になる。

 実際この世界で投げ技は、まず見ない。

 そこそこのレベルの戦士でも、当然、受け身もまともに取れない。

 投げるな・危険!!の有様だ。

 ここからは三大公のおちびさんも参加させた。


 投げ技、関節技、ひとつひとつ丁寧に教えてゆく。

 見学していたネフェルティティ王女が興味を示し、護身術になるから良いやと思い参加を許可した。ラファさんは完全に巻き込まれたクチだ。

 柔道で1時間ほど汗を流す。


 休憩の後、剣道で使う竹刀と防具をつけさせて、剣術の訓練。

 竹刀は佳竹が手に入った時、造っておいたものだ。

 竹刀は三六(3尺6寸)、中学生の使うサイズだが、海兵の使うカトラスも騎士の使うブロードソードに比べて短めだ。

 標準的な刀身の長さは、人間の腕と同じ長さが標準だ。

 そしてこの長さが、最も扱いやすいサイズとなる。

 これより長いとロングソード、短いとショートソードだ。

 カトラスはどちらかと云うとショートソードのカテゴリーに入る。


 防具は、面、胴、垂の3点セットだ。

 海兵たちにはフェンシングセットの方が良かったかなと思ったが、最後の訓練を考えると、こちらの方が安全だと思えるのだ。


 海兵たちは防具の恩恵で、遠慮なく突きまくる。

 寸止めしなくて良いから遠慮がない。


 それを横目で見ながら、三大公と姫さんたちに日本の剣道を教えた。

 三大公には西大陸の剣も教えているから、選択肢は多い方が良いと思い、参考程度の感覚で教えている。


「面じゃ~」ラメセスはトトメスに面を入れる。


「くぅ~ラメセスのくせに生意気だぁ~」トトメスは吠え、今度は胴を決める。


 セティは我関せずで、姫さまとチャンバラを楽しんでいる。

 楽しそうで何より。

 姫様たちが剣道を楽しんだ後、俺はいよいよ、本日のメインイベント?を開始した。


 流石に最後の訓練は、姫様たちには遠慮してもらった。


「これが本日最後の訓練だ。

 要は何でもありの対人戦だ。

 ただし、金的、目潰し、魔法の使用は禁止する。

 それ以外は何でもありだ。

 殴る、蹴る、投げる、関節技を決める、当然竹刀を使うのだから、竹刀で突くのもアリだ。

 ただし、殴る時は拳ではなく掌底を使え、これは絶対だ。

 理解したら稽古を始めろ、以上だ」


 海兵たちは、何でもアリの稽古を始める。

 何故、拳で殴るのを禁止したかと云えば、拳の保護のためだ。

 元プロボクサーがチンピラとの喧嘩で、拳を複雑骨折することがある。

 元プロとはいえ、100キロ前後の衝撃が拳に掛かるのだ。

 元プロとはいえ、拳の強度は一般人と変わらない。

 グローブで保護されてない状態では、拳もひとたまりもない。

 拳で殴って良いのは、普段から拳を凶器のように鍛え上げた空手家だけだ。


 その点、掌底なら掌の根元は固いし、少々の衝撃では壊れない。

 安全を考えての事だ。


 それでも何でもアリだから、稽古は激しいものになる。

 生傷が絶えないなんて、普通の事だ。

 これは俺のオリジナルでは無い。

 流派の名前は忘れたが、初めて防具と竹刀を使って現代の剣道の元となった流派が、確か何でもアリのスタイルだったはずだ。


 練武場の隅でへばっている者には、回復魔法で傷を癒し、体力を回復させて稽古に送り出す。

 優しい上司に感謝しろよ。


 稽古の終了を告げると、みんな仰向けになり、肩で息をしている。

 俺は回復魔法を掛けて回った。


 フランツにはご愁傷様だが、打倒フランツの道は始まったばかりだ。

 頑張れみんな、悲願達成を信じているぞ。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

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あなたの人生に幸あれと、願いを込めて。

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