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第64話 カーメスの反乱

 一難去ってまた一難。

 王宮は、喧騒に包まれていた。

 王弟カーメスが一万の軍を上げ、王都に侵攻しているのだ。


「陛下、集められる兵はどの位ですか?」


「何とか三千・・という処か。

 今から諸侯にげきを飛ばしても間に合わん」


 常備軍は金食い虫だ。

 万年金欠の王朝に常備軍を養える余裕など、あるわけない。


 ただ俺個人の意見は、常備軍は必要だと思う

 最低限、こいつとったら只では済まないと、思って貰えるだけの軍備は必要だ。

 そうでないと、話し合うなんて気は起さないし、恫喝すれば済むと足元を見られるだけだ。

 俺個人は、常備軍は給料ドロボーと云われるくらいが、丁度良いと思う。

 軍隊の輝く時は、戦争か災害の救助活動だ。

 国が不幸な時にしか、輝けない。

 野党議員や財務官僚辺りから、予算を圧迫するとか

 給料ドロボーと云われている時は、平和な時しかあり得ないと思うから。

 だからって年間予算が、NHKの方が海上自衛隊より多いってのは・・

 ・・・どうかと思うけど。



「のう、アルメニア侯、ひとつ頼まれてはくれんか?」


「勅命でしょうか、陛下?」


「異邦の者に勅は出せん。友人としての頼みじゃ」


 見当はつくけど。


「どの様な御用でしょうか?」


 予想していた答えを待つ。


「兵三千を率いて、敵の足止めをしてはくれないか?」


「陛下は、如何なさるおつもりですか?」


「王都の民の避難誘導かの、ダメもとで諸侯にげきを飛ばす。

 落ち延びるのは、その後じゃ」


 絶体絶命の負け戦、日本人のメンタルを刺激するのは、なぜだろう?


「陛下、倒してしまっても別に構わないのでしょう」


 気が付けば有名な死亡フラグを、本家並みに格好つけて言っていた。

 

 中央大陸には教団の影響がない。

 転職システムも西側だけだ。

 同じ神を奉じても、別組織の教団が担当している。


 つまり、俺とリーフリット、アイシャにハクが居れば、

 一万くらいの軍隊に遅れは取らないと思う。

 全員限界突破者だし。





 ナイラ河の東岸、俺たちの兵は、陣地の柵を築き柵の前には『拒馬槍』を配置した。

 拒馬槍って何? という方へ。

 一言で言えば、騎兵避けの槍の柵。

 普通、槍の保管は真直ぐ立てるが、拒馬槍は三角錐型の土台の上に、斜め上になるように槍を、ズラッと並べて設置する。


 イメージし辛いのなら、工事現場で部外者が入らない様に、通せんぼしている黄色と黒のストライプの金属製の障害物。

 あれに槍を斜めに立てかけてるイメージで。

 実物は馬が突っ込んでくる事を想定しているので、もっと大きくて重い仕様ですが。


 斜め上に置かれた槍に、騎兵が突っ込めば只では済まない。

 自然と速度を下げ、避けるようになる。


 流石に兵士の使う槍を馬避けだけの為に使うのは、流石に勿体無い。

 予算の無い貧乏国家としては、白木の槍で代用する。

 心理的効果はこれで充分。




「なんだあの貧相な砦は、あれで我が軍を迎え撃とうとは、笑わせる」


 敵騎兵の部隊長は嘲笑を始める。

 圧倒的な戦力差に、気をよくした敵はドット笑う。


「今夜は王都で祝杯ですなぁ、陛下」


 すでに勝った気になりおべっかを使う部下たち。


「ここまで余の大儀に付き合ってくれた事、嬉しく思う。

 皆の苦労も今日で終わりだ。

 あの忌々しい女狐より正統なる玉座を奪い返し、この国を生まれ変わらせる」


 オーという歓声が軍全体を包み、士気を上げる。




「敵さん盛り上がってるなぁ~ じゃあ、行ってくる。

 勝った気になるのは仕方ないけどね。

 兵士長あとは手筈通りにお願いします」


「心得ております。勇者殿、御武運を」


「そちらこそ、神のご加護を」


 そう言って馬に跨り、手には青龍偃月刀せいりゅうえんげつとうを持ち、単騎で敵の前に躍り出る。

 青龍偃月刀せいりゅうえんげつとう、言わずと知れた三国志演義きっての豪傑、関羽の得物だ。

 三国志演義で、わくわくする場面の一つは、豪傑たちの一騎打ちだ。

 得物はミスリル製の青龍偃月刀。これで馬が赤兎馬だったら、文句は無いのに。

 三国志演義の中では、関羽、孔明は、俺のオシ、まあ、趙雲も好きだけど。

 ミーハーだと笑えば笑え。

 わくわく気分の俺は、関羽気取りで敵と向かい合う。


「我はエストニア王国、侯爵、アキュフェース・フォン・ワント・ツー・アルメニア。

 プトレマイオス王国に、義を以って助太刀する者なり。

 賊徒の軍に勇者あれば、我が一騎打ちに応じよ。

 我が首取って、誉れとすると良い」


 俺は、ノリノリで一騎打ちの口上を述べる。


 味方の陣中では、

「ノリノリねぇ~♪」「調子に乗り過ぎ」と

 リーフリットとアイシャに云われているのを、知る由もない。



 二メートルはありそうな筋肉ダルマが、単騎で進み出る。

 

 言い忘れていたけど、敵も味方も軽装騎兵と軽装歩兵だ。

 この炎天下で金属鎧なんて着たら、金属鎧で目玉焼きが焼けるし、異常な暑さのために、マジで死ぬと思う。


「我はイーガスの一子、イーガイ。

 その首貰い受け、我が誉れの礎となるが良い」


 そういうと、馬を疾駆させて長柄の戦槌バトルハンマーを振りかざす。

 よくアニメや漫画で、巨大なバトルハンマーを振り回すシーンがあるが、あれは現実的に無理。

 実際はもっともっと小さく、形は登山用のピッケルに似ている。

 ハンマー部分の反対側は先が尖っていて、鎧や兜に穴をあけ出血させる仕様。

 ハンマー部分に当たれば、鉄兜をしても頭蓋骨陥没、プレートメイルの上からでも複雑骨折は免れない。

 人を殺す、その一点において、洗練された武器と云える。


「遅いな」

 

 そう呟いて青龍偃月刀を一閃する。

 敵の胴は、上下二つに斬り裂かれ絶命する。

 余りの力の差に、敵味方ともシーンとする。


 今の俺は異世界の関羽。当然の結果だ。


 我に返った前衛将軍らしき漢が、声を張り上げる。


「誰か、こ奴を打ち取り、名を上げる勇者はいないかぁー!!」


「ならばその役、我ら兄弟にお任せください」


 ニ騎の騎兵が進み出る。


「我らサームート兄弟、二国流槍術でお相手致す。

 二国流マスターの妙技、その身で味わえ!!!」


 そういうとアキュフェースの周りを、二騎の騎馬兵が時計回りに旋回し始める。

 隙をついて放たれる突き。


(う~ん、鋭いちゃ鋭いんだけど・・うちの中堅処の方がよっぽど強いよね。

 ・・・そろそろ終わらすかな・・文殊、検索は終わっている?)


(是、すでに座標のチェックも完了しています)


「上出来だ」


 俺は声に出してそういうと、アッサリ二人の兄弟の首を跳ねた。


 前衛将軍らしき漢がいきり立っているが、茶番を終え本命の仕事をすることにする。





「転移」


 俺はカーメス王弟の馬まで転移して

「ハロー」と言って、首筋に当て身を喰らわせ、王弟を肩に担いで自分の馬まで転移する。


 一瞬、何が起こったのか分からず、茫然とする賊軍。

 指揮官の一人が、我に返り大声を張り上げる。


「陛下が奪われたぞぉ!!何としても、取り返せ!!!」

 

 賊軍、弾かれたように、一斉に動き出す。


 敵としたら溜った者では無いだろう。

 普通、陣の奥にいる大将をどうやって引きずり出すか、どうやって大将首までたどり着くか、あらゆる頭脳と戦術を駆使した、戦場での駆け引きが繰り広げられるはずだ。

 それなのに、魔法一つで総大将が攫われたのだ。

 敵からしたら『冗談ではない』だろう。


 俺は砦の左翼方向に馬を進める。

 目の色を変えて追う賊軍騎馬兵。

 俺は砦手前で馬を止め、敵の到着を待つ。

 武器はストレージに収納して、丸腰だ。


「馬鹿ぁめ、そのまま逃げられると思ったかぁ~」


 追いつかれる寸前、転移で砦の中に転移する。

 勢いよく追って来た騎兵たちは、仕掛けた落とし穴に多数転落する。


「取り敢えず、コレ拘束して貰える?

 自害しない様に猿ぐつわもお願いします」と指示を出す。


「そろそろ宜しいですか?」と兵士長。


「じゃあ、ハクたちに合図を」


「では、こちらも始めます」と兵士長は指示を出す。




 突進してくる騎兵にクロスボウを斉射する。

 馬や騎兵に当たり次々と倒れてゆく。

 威力はあっても連射出来ないはずのクロスボウの矢は、途切れる事が無い。


 種を明かせば、信長の三段撃ちのクロスボウ版だ。

 一列目が射手、二列目がクロスボウの受け渡し、三列目が矢をつがえる。


 クロスボウは手では弓を引けない、銃型の先端のアブミに足を掛け、足、腰、背筋の力で、弓を引き矢をつがえる。

 プレートメイルを貫通させる程威力があるのに、連射が効かない。


 その解決策が、信長の三段撃ちなのだ。

 信長の三段撃ちは、後の世の創作という説もあるそうだが、ハマれば強いのも事実だ。


 兵士長の合図で、隠されていた砦の真の姿を現す。


 上から見ればL字型の砦であることが分かる。

 L字の短い方が王弟と俺が居る場所で、騎兵の攻撃目標だ。

 L字の長い方は、ハクとリーフリットたちが居て、その存在を人避けの決壊と幻術で隠していた。


 賊軍の騎馬兵は、二方向からの矢の雨を受けている。

 やみ雲に突っ込んでも壊滅するだけだ。

 しかし、突撃を辞めようとしない。


「普通、敵の大将首を取ればいくさって終わるよね」


「殿下は生きていますし、反乱は一族郎党皆殺しですから、彼らにあとがありません」


「でも、まともな指揮官なら一旦軍を引いて立て直すよね」


「あんな馬鹿げた方法で総大将を攫われたら、引くに引けないでしょうね」


 兵士長の言葉に考え込む。


 戦争は相手を皆殺しにする事じゃない。

 どうやって、心を折るかだ。

 このまま続けたら味方の犠牲も増えてゆく。


 カーメス王弟が、目を覚まして何かを喚いている。

 俺はそれ処では無い。

 俺は少し考えて、最もやりたくない手を選択した。


 飛翔魔法を使い上空に飛翔。

 味方に被害が出ない様に、文殊と共に正確な位置取りをする。

 ストレージから、ダムの堤防を取り出す。


 高さ100メートル、長さ3~4キロ、厚さ30メートルの巨大な石の塊だ。


 これを、敵騎兵めがけて落とす。

 例えるなら、巨大なハエ叩きだ。

 プチッって音か聞こえた気がした。


 この日、一万の反乱軍は事実上壊滅した。


 この様子を見ていたカーメス王弟殿下は、涙にぬれ鼻水をたらし血走った目で潰された味方を凝視した。


(こんな事あって良いわけない。何かの間違いだ。許されるはずがない。

 こんなこんな馬鹿げたやり方で。

 こんな終わり方、あってはならないんだぁ~!!!)  

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

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