第61話 恵みの大河 ナイラ
「と・に・か・く、イ・ヤ・よ!!よその家でなんて、絶対に嫌!!!」
リーフリットがアキュフェースの腕を払う。
「ボクも嫌かな~
あれだけ、ラファさんにデレデレして・・・
ラファさんの代わりに抱かれるなんて・・どう考えても嫌でしょう」
今日のアイシャは、辛辣だ。
「それはお前たちの誤解だ。デレデレなんてしてないぞ」
「「どの口が言うの!!!」」
「エルフと見れば、デレデレとデレデレと尻尾を振って、
・・・少しはみっともないと思わないの!!」
リーフリットは、怒りが収まらない御様子だ。
「とにかく、よその家では嫌よ。
家に帰って、反省の色が解るまで、つき合うつもりはありません」
「ここはダーリンに用意された客間じゃないよ。さあ、出た、出た」
アイシャに背中を押され、部屋から追い出される。
「じゃあ、おやすみ~♪ シィシィ」
アイシャはあかんべーをして、ドアを閉める。
女房二人に部屋を追い出される勇者は、俺だけだろうな。
こういう時、異世界ハーレム物の主人公を、羨ましく思う。
溜息を付きながら、あてがわれた客間を、トボトボ目指す。
トボトボ歩いていると、嫌な感じの気配を感じた。
(文殊、サーチとマッピングを頼めるか?)
(了)
文殊の地図を頼りに、不審者のいる部屋を目指す。
問題の場所では、二人の兵士が倒れている。
一刻の猶予も無いと判断して、ドアを蹴破る。
賊は二人、一人が短剣を振り上げ、正に寝ている王女を刺そうとしていた。
咄嗟の時、意外と声が出ない、
無意識にストレージから短剣を取り出し、気が付いたら賊に投げていた。
暗殺をしようとした賊の首に当たり、一人目を始末。
もう一人をアッサリ無効化した。
「衛兵、賊が侵入した!!! 衛兵、姫様の部屋だぁ~!!!」
咄嗟の時は、驚きが大きくて声も出なかったのに、
落ち着きを取り戻した今は、大声を上げて兵を呼ぶ。
我ながら現金なものだと思ってしまう。
「~という訳で、姫様の部屋にいたと・・・」
今俺は、取り調べを受けている。
「夜這い目的で、姫様の寝所にいた訳では無い、と。
これで、間違いありませんね」
「間違いありません。二人の女房と同伴で招かれて、
姫様に夜這いする亭主が、何処の世界に居ますか」
「いや~、うちの姫様の魅力なら、無いとは言えませんな」
何故か、ドヤ顔で、自慢げだ。
そのドヤ顔に、イラッとする。
「いやいや、綺麗な方ですけど、それだけでしょう?
これが、ラファさんみたいな、
この世の者とは思えない程の魅力ならともかく」
「・・・・・・」黙り込む尋問官たち。
「噂通りの御仁のようですし、問題ないかと」
「姫様の命を救ってくれたからな。
しかし、姫様の魅力が分からんとは・・
・・・今代の勇者は、どうかしている」
俺、思いっきり、ディスられてません?
ともかく、俺はようやく解放された。
あてがわれた客間に戻り、ペットの上で大の字になる。
少しボーとしていると、ノックがして、どうぞと声をかける。
もうすぐ夜も空けようという時間帯に、女王陛下が訪ねてきた。
「このような時間に、男の部屋に、女王陛下御自らとは・・
・・・いささか不用心だと、申し上げる」
「心配せずとも、貴公が噂通りの男なら、何も起きんよ」
ドアの外に、兵士数名の気配を感じる。
「さっきもチラッと云われて気になっていたんですが、噂って何ですか?」
おや?という顔をする女王陛下。
「知らぬは本人ばかり也、か。
当代の勇者は、エルフ好きのド変態。人族のどんな美姫にも目もくれず
『エルフ一筋、筋金入りのド変態』だと、もっぱらの噂じゃ」
異種族間の性交渉は、獣淫と同じ目で見られるのは、知ってるけどさ。
俺は思わず天を仰ぐ。
エルフ好きは当たっているが、人族の美人さんも、普通に好きだよ、俺。
「噂に、悪意を感じますね」と俺。
「そうでも無かろう。娘よりラファがいいと、言っとる時点で有罪じゃ」
「もしかして、私を揶揄いに、こんな時間に?」
「な訳なかろう。
一つ目は礼じゃ。二度も娘を救ってくれて感謝する。
二つ目は、お願いじゃ。
少しの間、娘の身辺警護を頼みたいのじゃ」
お願いの形を取っているけど、拒否権無いよね、たぶん。
どーせやる事に成るのなら、少しは抵抗しておくか。
「そもそも私どもは異国の民です。
私も国王陛下より、責任ある立場を頂いております。
国王陛下の許可なく事に当たるのは、いささか問題があると思うのですが」
これをやるのと、やらないとでは、後々問題に成った時の立場に差が出る。
「そう言うと思って、エストニア国王には、事情説明をした手紙を出した。
勇者殿を借りる事も含めての。
事後承諾には成るが、事が終われば、感謝状もだそう。
これで、貴公の立場も悪くなることは、ないと思うぞ」
「わかりました。協力させて頂きます」
やっぱり、こうなる。
「黒幕の目星は、ついているのだが、如何せん証拠がない。
既に、夫は殺され、息子2人も奴の手にかかった。
悔しいが、状況証拠だけでは、人は裁けぬ。
少しの間だけ、協力してくれ。・・・頼む」
流石にこう言われたら、断れない。
道理で先程の晩餐、全て『銀食器』だったわけだ。
銀食器は、毒に反応して色を変える。
暗殺者の警戒だけでなく、毒殺にも警戒している。
女王陛下が去って、ペットに大の字になる。
取り敢えず、メイドが起こしに来るわずかな時間、仮眠をとる事にする。
今俺は、姫様のお供で、新たに開拓された耕地を視察している。
広大な農地は、素人目にもわかる程、痩せた土地と栄養不足の質の悪い農作物だ。
プトレマイオス王国が、地球で云うエジプトに相当するのなら、ナイル河があって、ナイル河の氾濫があり、氾濫する代わりに、上流の豊かな土壌を下流域までもたらす。
古代社会の大農業国だったはずだ。
しかし異世界では、大河はあれど緩やかな流れで、氾濫して豊かな土壌を運ぶ気配すらない。
「少しお聞きしたいのですが、この河は氾濫しないのですか?」
俺は疑問をぶつける。
「昔はしましたが、今はしません。
二代前の王が、上流にダムを建設したのです」
「それでは豊かな土壌は、上流から流れて来ないでしょう」
「確かに、流れてきませんわ。
でも、そのおかげでナイラの氾濫は無くなり、耕作地も3倍の規模になり、家も立ち並ぶようになりましたわ」
耕作地が増えても、やせた土地では意味がない。
「今は肥料もありますし」と王女殿下。
「とても足りてるとはおもえませんね」
「仰る通りです。だから先日、女王イアフネスの名代として、ルクナバードを目指していました」
「高い肥料の買い付けか、ティファール王家に資金援助を願いに・・といった処か」
この前の状況を思い返すと
王家の正式な特使の船が、1隻だけとはあり得ない。
普通は、数隻の護衛艦が付くはずだ。
護衛艦にさく資金に困るほど、この国は困窮している?
「それにナイラの水量が減った為に、海水が逆流して・・塩害の被害も報告されていますの」
ネフェルティティ王女、言いにくそうに言う。
もう、詰んでるだろう、この国。
取り敢えず、元凶の上流のダムを見に行く事とする。
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